北野誠のズバリ

認知症患者への正しい対応とは?怒ったら悪循環?

『北野誠のズバリサタデー』では「ズバリこの人に聞きたい」と題し、パーソナリティの北野誠が毎回話題の本の著者などにインタビューしています。

6/2のテーマは「認知症患者への対応法について」。
電話ゲストは、『認知症の取扱説明書』(SBクリエイティブ刊)の著者で、医師・医学博士の平松類さんです。

徘徊・暴力・被害妄想など、認知症が原因で起こる症状はたくさんあります。ただ著書によると、認知症でも対応の仕方によって症状を良くしたり、進行を遅らせたりすることができるそうです。

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ヒソヒソ話は聞こえてる

まず、認知症についておさらいしましょう。
「後天的な脳の病気により、正常に発達した知的機能が低下し、日常生活に支障が出ている状態」が、認知症の大まかな定義です。

65歳以上が7人に1人だとも言われており、認知症患者はどんどん増える一方だといいます。
ただ、認知症と診断されても、必ずしも症状がずっと続くわけではなく、調子が良い日も悪い日もあるということです。

認知症でよくある困った行動と言えば、「暴力を振るう」「暴言を吐く」「尿漏れ・便漏れ」「徘徊」「被害妄想」「昼夜が逆転してしまう」などなど。
「記憶力が衰える」という本人が困ることよりも、周囲の人たちが困ってしまう症状の方が問題になります。

そうやって暴言を吐かれたりすると、周囲の人は「こんなに世話してあげてるのに」と思い、つい怒ってしまうものです。しかしそれは悪循環だと平松さんは言います。

「向こうにしてみれば、何らかの理由があって暴言を吐いていることがあるので、自分の暴言に反応して怒っているという記憶が無いと『この人は怒っている人だ』という記憶しか残らず、怒り返してもっとヒートアップしてしまいますね」

例えば、認知症の人をお風呂に入れる場合。耳が遠いからと、世話をする人は「さあ服を脱いで!お風呂に入りましょうね!」と大声で話しかけながら服を脱がします。すると患者は怒り出す。世話係は意味もわからず、怒り返して泥沼に陥ります。

実はこれ、「耳が遠い」ということに対して間違った認識があるのです。高齢者は、高音が聞き取りにくくなるので、正面から低い声でささやくように話すべきなのです。大きな声で言うのは逆効果なんですね。

大声で言われても聞こえない認知症の人は、いきなり服を脱がされたように感じ、お風呂に入りたくないと思うだろうし、「この人は変な人だ」と思うでしょう。怒るのも当然です。

低い声でヒソヒソと悪口を言うと、なぜか当人に聞こえてしまうことってありませんか?あれは、高齢者にとってよく聞こえるからなのです。

徘徊への対処法

さて、困った行動で一番大きいものの中では、徘徊が挙げられます。これに対して、周囲の人がやってはいけないことは何でしょうか。

平松さん「ムリヤリ家に連れて行こうとすると、認知症の方には『突然誰かに手を掴まれて、さらわれた』ようなイメージになってしまうので、きちんと話をして、ご本人が帰りたくなる状況を作るとか。徘徊の原因をちゃんと探ってあげることが大切ですね」

例えば、家に帰ろうとして徘徊している人もいます。しかしその家というのは小学生の頃に住んでいた家で、実際にはもう無いというケースもあるんだとか。
過去の記憶の方が、認知症の人や高齢者の人には残りやすいそうで、現在住んでいる家や今日食べたご飯などの最近の記憶は消えてしまいがちだということです。

人間の記憶は、15~25歳の頃の記憶が一番鮮明なんだそうで、徘徊した時に「何でそんなところに行くの?」と責めても、本人は記憶のままに行動しただけなので、無意味なのです。むしろ「よく怒る人」というイメージが残るだけなのです。

激しい被害妄想への対処法

もうひとつ、被害妄想もかなり困る症状ですが、これはどうしたら良いのでしょうか。

特に多いのは“物盗られ妄想”で、「財布を盗まれた」という思い込みが病院などでよく起きるそうです。
一番疑われてしまうのが、哀しいかな身近の親しい家族だといいます。

それは何故か?
家族が服を着させたり食事を渡したりなど、お世話をする時は認知症の人にはあまり感情がありません。
ところが、お茶をこぼして「何でこぼしたの!?」と感情的になった時、認知症の人には怒られたという記憶だけがしっかり残って、お世話をしてもらった記憶はないため、「よく怒る人」というイメージになります。

よく怒る人が近くにいる。あるはずの財布がなくなった。よく怒る人がやったに違いない、と疑うのは当然なのです。

じゃあどうすれば良いのでしょうか。

平松さん「近々の記憶はあまりないので、昔から同じ場所にお財布を置いておくとか。できれば、財布を置く場所を色分けしておくと、高齢の方はとてもわかりやすいです」

例えば、机に置くとしても、テープなどで赤い四角の枠を作り、そこにいつも置いてある形にすると忘れにくくなるんだそう。

怒っても悪循環なので、他人行儀なくらい優しく接してあげるのが結局は良い、ということでした。
(岡戸孝宏)
北野誠のズバリ
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2018年06月02日10時26分~抜粋

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