北野誠のズバリ

音楽教室から著作権使用料を徴収開始。音楽は発展するのか?

4月7日放送『北野誠のズバリサタデー』では、「JASRACが音楽教室に著作権使用料を徴収開始」という話題を取り上げました。

文化庁長官の裁定に基づき、日本音楽著作権協会(JASRAC)は4月1日から、一部の音楽教室を対象として著作権使用料の徴収を開始しました。

一方、この方針に反対する音楽教室の団体は、JASRACに徴収権限が無いことを確認するため、昨年、東京地方裁判所に提訴しました。

著作権使用料の徴収は最終的に生徒の負担となることで、音楽人口の減少も懸念されています。

この問題について、著作権に詳しい弁護士で日本大学芸術学部客員教授、福井健策先生に北野誠が話を伺いました。

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学校には著作権使用料が徴収されない

昔から音楽教室はありますが、なぜ今急に、著作権使用料を徴収するようになったのでしょうか。

福井先生は、「CDが売れなくなってきていることでJASRACの収入が減っていく中、JASRACが徴収の範囲を拡大しようとしていることが背景にある」と解説しました。

北野はここで、「小学校や中学校などの授業では、JASRACは徴収してないですよね」と尋ねましたが、音楽教室とどこが違うのでしょうか。

JASRACは、「授業の中で先生や生徒が演奏することも公の演奏なので、本来は著作権使用料が発生する」と解釈しています。ただし、著作権法の38条に、非営利の目的や団体が演奏する場合は例外と規定されているため、学校での演奏は対象外というわけです。

音楽教室は生徒から授業料を集めて運営しているから、営利目的という解釈のようです。

一方で音楽教室側は、曲の練習や指導は限られた場所での演奏であり、公の場所ではないから著作権が発生しないのではないかと主張しています。

また、練習段階で使用料が発生するということは、見方を変えれば、権利者が許可しなければ練習ができないという解釈もできてしまい、音楽文化の広がりにとってマイナスではないかとも主張しています。

アーティストからも反対の声が

北野は「例えば、協会に『私は著作権を持ってるけど、(音楽教室に徴収するのは)嫌やわ』って言ってる作曲者などはいるんですか?」と尋ねました。

福井先生は、「一番有名なのは宇多田ヒカルさんが2017年2月、ツイッターで『もし学校の授業で私の曲を使いたいっていう先生や生徒がいたら、著作権料なんか気にしないで無料で使って欲しいな』とつぶやきました。

『学校』と書かれていたので真意はハッキリしませんが、JASRACの動きに対する違和感ではないかと見る向きもありました」と解説し、他にも『残酷な天使のテーゼ』などの作詞者・及川眠子さんなどもJASRACの方針に異論を述べています。

JASRACと一部の音楽協会が裁判で争っている最中にもかかわらず、4月から徴収が開始されたのは、文化庁長官が徴収を認めたからなのですが、なぜ認めたのでしょうか。

元々は音楽教室側が「現在、徴収権限についてJASRACと裁判で争っているので、結果が確定するまでは、徴収を認めないという裁定をして欲しい」と申し立てたことが発端とのことです。

それに対し文化庁側は、「自分たちは徴収権限があるかないかを判断する立場にない。JASRACが徴収する場合に『これぐらいの金額で良いんじゃないか』と検討する場であって、徴収するかどうかはJASRACが決めること」という立場です。

音楽の発展と権利者保護の両立は?

一番の問題は、やはり演奏の練習がしづらくなることで、福井先生は「ゲーム音楽は協会で権利を管理している率が低く、練習する際にいちいちゲームメーカーに連絡を取るのかと」と、その一例を挙げました。

すでにゲーム会社が倒産していて権利が移っていない場合は、許可が取れないということも考えられますね。

また、「使用料を払わないようにするために、著作権が切れたクラシックばかり演奏することは、音楽教育にとって果たしていいことなのか」と、問題点を指摘します。

著作権使用料の本来の徴収目的は権利者に行き渡ることですが、一部のアーティストからも「本当に行き渡っているのか」という疑念が持たれ、分配方法の不透明さが指摘されています。

福井先生は最後に「白黒つけなくても良いことがあるのではないか。長年音楽教室に対して権利を行使してこなかったという事実がある」とし、折衷案として、「JASRACはあえて裁判を取り下げ、音楽協会の団体は若手クリエイター育成のために資金を拠出するなどの工夫が図れないか」とまとめられました。
(岡本)

北野誠のズバリ
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2018年04月07日09時42分~抜粋

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