北野誠のズバリ

片岡愛之助×北野誠対談 名古屋公演は設定も名古屋!?

パーソナリティー北野誠が、話題の人にインタビューするコーナー「ズバリこの人に聞きたい」。
9/2のテーマは「歌舞伎の舞台裏について」。ゲストは、歌舞役者の片岡愛之助さんです。

10月には名古屋での歌舞伎公演にも出演予定。また、今年出版した初めての自叙伝『愛之助日和』でも話題となっています。

その片岡さんに北野は、放送前日インタビューを行ない、自叙伝でも明かした、歌舞伎の舞台裏についてたっぷり伺いました。

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稽古の期間がたったの5日間


片岡さんの自叙伝をすでに読んだという北野。
歌舞伎は通常、1ヶ月で25日間興行という形が多いのですが、自叙伝によると、翌月の公演までの5日間くらいしか稽古時間がないそうです。そのタイトなスケジュールに北野はビックリしたといいます。

「そうなんです。その月の公演が終わった後の4、5日間で、翌月の公演の稽古をやるんですが、繰り返ししてチェックとかはしないんですよ。通し稽古したら終わりなんです。厳密に言えば稽古は4回、ヘタしたら3回だけなんですよ」(片岡さん)

自叙伝を読むまで北野は、せめて10日間くらいは時間を取って、みんなで合わせるのかなと思っていたのだとか。
それが、こんな短期間で合わせるということは、全員がその演目をちゃんと理解したまま稽古に臨んでいるのだなと、感服する北野。

片岡さんがさらに細かく説明してくれました。

「同じ出し物でも、家によってやり方が違うんですよ。セリフも若干変わってくるし、上手・下手(かみて・しもて)も変わってきますので、最初の稽古ではその点の打ち合わせですね。『あ、そうですか。○○さんはこっちにそう来られるんですか。じゃあ僕はこっちでいいですか』みたいに合わせていきながらの稽古なんです」

裏方もプロの集団


2年前、『鯉つかみ』という演目では6役もの早替りをした片岡さん。最終公演が地元の大阪だということで、12役の早替りに増やしたとか。

「12役ともなると、舞台裏は戦争でしょう」と北野は尋ねます。

それに対し片岡さんはこう解説します。

「そうですね。F1のピットインみたいに裏方の人たちが待ち構えてるんです。そこに僕が走っていってただ立ってるだけで、それぞれの係の人がババババッと脱がして付け替えて、ハイ!みたいな」

その間、わずか5秒くらいだとか。

6役だけでも大変なのに、わざわざ12役に増やしたことに、
片岡さん「アホでしょ?」
北野「アホやなあ」
と笑う2人。

しかし、それができるのがプロの集団なのだなと、北野は再び感服します。

「そうなんです。だから実は裏方さんのみなさんがすごいんです。ひとつ手順が狂うとみんなが『ああっ!』となる。そのロスタイムが命取りになるんです」と片岡さん。

走り回る体力も必要だし、精密さも必要。二日酔いや体調を崩すなどとてもできません。
華やかな舞台の裏では、ピリピリした戦いが繰り広げられているのでした。

真の歌舞伎役者・愛之助誕生!


片岡さんは、5歳の頃から子役として活動。歌舞伎の舞台にも出演し、やがてその演技力を見出され片岡一門の部屋子(へやご)になりました。部屋子とは、幹部俳優の楽屋に預けられ、役者としての英才教育を受ける立場のことです。

一般家庭の生まれではあるものの、小さい頃から歌舞伎の環境で育ってきたため、片岡さんにとってはそこの世界観が常識でした。
師匠の草履を揃えることも普通だし、師匠の岡持ち(必要な化粧道具や小物などを入れる、携帯用の箱)を持つことも普通。師匠は永遠に師匠。

「舞台で“シンの役(主役)”を務めるのは血のつながった方々がやるもので、僕らには見合った役割がある」と、知らない間に刷り込まれていたので、主役をやりたいという考えは片岡さんに微塵も起きなかったそうです。
「自分が頂いた役でさえ難しいのに、あんなのできないな」という見方だったとか。

そんな、責任のある立場にない若い片岡少年(当時の名は片岡千代丸)は、客の入りを見ても「わぁー、今日は少ないなあ」「今日は入ってるなあ」と、他人事のように笑っていたのでした。

ところが、年数が過ぎ、養子として正式に片岡一門に入り、主役を任されるようになると、考え方がガラッと変わります。

自叙伝には「歌舞伎役者としての自覚というのは、お客さんが入るかどうか意識することで気付く」と書かれていますが、片岡さんはこの時気付いてしまったのです。

「誰が僕を見に来てくださるんだろう?」

そう意識した瞬間、ゾッとしたという片岡さん。
お客さんを呼ばなきゃいけない、お客さんを楽しませなきゃいけないという、歌舞伎役者としての責任感が生まれたのでした。歌舞伎はエンターテイメントなのです。

名古屋公演が特別版に!


最後に、今年10/1~10/25まで日本特殊陶業市民会館にて公演予定の『錦秋名古屋 顔見世』について、見どころを片岡さんにお聞きしました。

まず、昼の部の演目『蜘蛛絲梓弦(くものいとあずさのゆみはり)』では、片岡さんが五変化(5役早替り)するそうです。

「何でそんなに早替りが好きなんやろ」とツッコむ北野。
これは、初めて歌舞伎を観る人でも退屈しないような、派手な舞踊劇だそう。

「歌舞伎は難しいと思われがちやけど、テンポが良く外連(ケレン)が面白い演目は、初心者でも楽しめますよね」と納得する北野。
ちなみに外連とは、大道具や小道具などを使い、観客を驚かせるような演出のこと。早替りや宙乗りなどがその例です。

もうひとつの見どころは、夜の部の演目『春重四海波(はるをかさねてしかいなみ)』。これはなんと、松竹新喜劇を歌舞伎に書き直したものなのだそうです。
笑いあり涙ありで、言葉もわかりやすく、こちらも初心者にピッタリだとか。

しかも今回は、設定を名古屋に変えるという、名古屋公演特別バージョンだというのです。

こういう新しいことにどんどんチャレンジし、観客に門戸を開き、歌舞伎に興味を抱いてもらおうと努力する片岡愛之助さん。
これからもその歌舞伎役者&エンターテイナー魂を見せ続けてほしいですね。
(岡戸孝宏)
北野誠のズバリ
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2017年09月02日10時23分~抜粋

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