北野誠のズバリ

動物の値段を知って、動物園の危機を知ろう

話題の本の著者などにインタビューするコーナー「ズバリこの人に聞きたい」。7/22のテーマは「動物の値段」です。
『動物の値段』『動物の値段 満員御礼』(いずれも角川文庫)の著者、白輪剛史(しらわつよし)さんに、電話でお話を伺います。

動物の輸入会社「レップジャパン」の代表で、体感型動物園「iZoo(イズー)」の園長でもある白輪さん。
動物園や水族館で見る動物たちは、白輪さんのような動物輸入卸商(おろししょう)から輸入されたものも多いといいます。

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この動物、おいくら万円?


まずその、動物輸入卸商とはどんな仕事なのか、白輪さんに尋ねました。

「動物は世界各国にいるので、それを世界各地から探し出してきて、日本に輸入します。そして動物園や水族館やペットショップに販売する仕事です」

では例えば、なじみの深いライオンはいくらなんでしょう?

「ライオンは国内で繁殖がうまくできていて、輸入せずに調達ができますから、小さいもので45~50万円くらいですかね。輸入だと100万円超えてしまいます」

では、どんな動物が高いのでしょう?

「最近ではサイの値段が上がってまして。3500万円とか」

サイは現存する5種類とも絶滅の危機に瀕してますからね。

「種類によって絶滅危機の度合いが違うんですが、比較的に数が多いシロサイが3500万円くらいです。あとはホッキョクグマが高いですね。今6000万円しますから」

なんとお高い。それもやはり絶滅の危機だからですか?

「そうですね。まあ、数はある程度安定しているんですけど、輸出してくれる原産国がほぼないんです。需要と供給のバランスが崩れているんで、値段が上がってしまうんです」

ちなみに、ホッキョクグマの生息国は、カナダ・アメリカ・ノルウェー・ロシア・デンマークです。

だって、コスパがイマイチ


いま名古屋の東山動植物園では、イケメンゴリラのシャバーニのように、ゴリラがすごく人気ですが、このゴリラはどういう状況ですか?

「ゴリラは絶滅危惧種の中でも極めて緊急度の高い『近絶滅種』なので、商業取引は全面禁止です。なので、繁殖目的とか共同保護計画のためとか、国際的に保護する意味でゴリラを連れてくるしかありません。それでも無料では来ませんから。ゴリラを保護するための基金にお金を払うだとか、原産地に対して資金を提供しなきゃいけないんです」

そういう保護のために資金を捻出しながらも、飼育にもお金を使っていかなければならないと。二重に費用が必要なわけですね。

あと、東山動植物園といえばコアラ。コアラは都市間の友好親善のために来るので、コアラ自体は無料なことが多いのだそうです。しかし…。

「高いんですよね、エサのユーカリが。1頭当たりエサ代だけで年間1200万~1500万円かかるんです」

しかも彼らは、限られた食べ物であるユーカリの中でも、さらに好き嫌いがあって、食べない種類のユーカリも多いのだとか。まったく、贅沢なものです。
そのくせ費用対効果はあまりありません。今どき、コアラがいるからって大勢の来客が見込まれるわけでもありません。

パーソナリティーの北野誠いわく「大阪の天王寺動物園もコアラでだいぶエライことになったって言ってたなあ。何頭か飼ったらエサ代だけで5000万円くらい要るんですよ」

「それなら他の動物を入れた方がいい、という考えにもなる」と白輪さん。

コアラのマーチならぬ、コスパがイマイチですね。

動物園にも高齢化社会の波が


ところで、日本の動物園の動物は、高齢化が進んでるらしいですね。

「そうなんです。動物園ができた頃に導入した動物は、ことごとくお年寄りになってきてしまってます」

日本で一番古い動物園は、1882年開園の東京・上野動物園。さすがに130年以上も経てば、当時の動物は残ってはいないでしょうが、戦時中に殺処分を行なったり閉鎖したりした動物園も多いため、戦後に入ってきた動物が大多数でしょう。

それ以降に入ってきた動物が、外的も無い、エサも豊富な恵まれた環境で長生きする。
その間に若い動物は補充する必要はない。
しかし自由に動物が買えない時代になっていく。
寿命が近くなった頃には入手困難になっている。
動物がどんどん減っていく。

そんな危惧がされているというのです。動物園そのものが絶滅危惧種になりかねません。

ヒトは協力する生き物


さらにいま脅威的なのが中国などのアジア各国。動物園の建設ラッシュで、動物の取り合いになってしまうのだそうです。
まるで昭和30~40年代の日本みたいな、高度経済成長期に差し掛かっていた時のような、各国の状況なのだとか。

特に中国はお金をバンバン出すから、相場が狂ってますます日本にとって苦しくなるといいます。

こうして考えてみると、日本の動物園は危機的状況なのでは?

「そうなんです。が、日本がまだその危機感がわかってない、現実味を理解していない部分もあって。近いうちに大変なことになると思います」

動物園との仕事に関わって30年くらいだという白輪さんならではの、リアルな警告。
日本の動物園どうしで連携を取り、「この動物園ではこの動物を重点的に繁殖させよう」というように、役割を分散させるべきだと。
「全ての動物園に大体の動物が少数いる」というやり方は、時代遅れだと指摘します。

ぜひとも協力し合って、日本の動物園がズーッと続いていってほしいものです。ZOOだけに。
(岡戸孝宏)
北野誠のズバリ
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2017年07月22日10時29分~抜粋

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