2017年9月19日(火)

すぐ使えるメンタルトレーニング。怒りのすすめ

石塚元章 ニュースマン!! / ライフ・ヘルスケア

シンクロナイズドスイミングオリンピック銅メダリストの田中ウルヴェ京さんが、9/16の『石塚元章 ニュースマン!!』に出演しました。

トップアスリートならではの経験からメンタルの鍛え方を語ります。
聞き手はCBC論説室の石塚元章解説委員です。

シンクロナイズドスイミングの世界

「シンクロナイズドスイミング・デュエットの小谷・田中組の田中の方です。フランス人と結婚したので、真ん中にウルヴェって入ります」

ソウル五輪で小谷実可子選手とペアを組み銅メダル獲得した田中さん。
シンクロの世界の苦労を伺うと…。

「一番大変なのは、息をこらえること。息が苦しいスポーツはあるでしょうけど、息を本当に止めて苦しいは、おかしいですよね」

息を止めつつ音楽に合わせ、ダンス同様に全身を激しく動かすわけですから、その苦しさは並大抵のことではありません。
さらにパートナーと動きを合わせなければなりません。

「心理的な意味でも、人に(動作)合わせることにはいいことがあるみたいです。人にしっかり合わせて、そして10点満点に近い点が、同調性とか完遂度で出た時は、それは嬉しいですよね」

なぜシンクロからメンタルトレーニングへ?

「大学4年の時に、ソウルオリンピックでメダルを獲った後、ちゃんと生計を立てるには、勉強しなきゃいけないと思って。20代の10年間は、代表コーチをしながら、アメリカでスポーツ心理学の大学院に行って、メンタルトレーニングの資格を取りました」

今でこそスポーツにおいてメンタルトレーニングは欠かせないものとなっていますが、資格を取得した頃は大変だったと語る田中さん。

「2000年ぐらいの時って、メンタル=怪しいみたいな言われ方をして、科学的根拠を元に大学院で勉強してきたにも関わらず、理解してもらうのが難しかったです」

メンタルトレーニングの役割と重要性

「何をするにも”心技体”って言いますよね。どれもトレーニングでスキルを培うんですが、日本では心のトレーニング方法が、まだまだ表に出てきません」

心のトレーニング方法は、大きく2つあるといいます。

「一つは”やる気”とか”自信”という曖昧なものをしっかりを整えるトレーニング。もう一つは”緊張”や”リラックス”という脳の情報処理能力を高めるトレーニングです。
両方とも、ちゃんと科学的根拠のあるトレーニングによって培うことができるっていうのが、メンタルトレーニングの世界です」

ちょうど新刊が出たとこです

『99%の人がしていないたった1%のメンタルのコツ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)という著作が、9月14日に発売されたばかり。

岐阜市出身のビジネスコンサルタント・河野英太郎さんとの共著です。河野さんのビジネス実践値と、田中さんの学術的な理論を合わせた本だそうです。
もう少し内容を伺うと、

「まだ日本では『メンタルやられちゃって会社辞めた』と表現するように、メンタル=良くない、悪い、弱い、というイメージがあるようです。
普通に生活ができて、そこそこやる気もある方に対して、あなたならではの、やる気って何ですか?あなたの人生をどんな風に作っていきたいですか?といった時の考え方のコツが書いてある、と言ったらいいでしょうか」

部下を怒れない誤魔化し

その中で、私たちでもすぐにできることはあるのでしょうか?

「わざと怒りに気づく。ちゃんと怒る自分を知っておく。例えば『部下を怒っちゃいけない』と言う方がいらっしゃるんですけど、怒っちゃいけないと言いながら顔に出てるでしょ?ってこと、ありますよね」

その上司本人が怒るのには、真っ当な理由があるという田中さん。

「怒るという感情を、ご本人が気づかないことにしようと誤魔化すことは、自己否定に繋がりますから、ますます怒ることになります。自分を出せないって、すごくきついことなんです」

怒りのコントロールができなくなると、怒りに任せて殴ってしまうこともあり得ます。

「殴るのがダメだから、怒らないようにしよう、と皆さん思うんですけど、怒りと行動は別。二つに分けて下さい。殴るのが悪いんであって、怒ることは悪いわけじゃありません。なぜなら、怒る理由があるからです」

怒る理由を心の中で言う

「なので、そういう時は『俺、いま怒ってるな』って思っていただきたいです。例えば、怒る理由は?っていうと、部下がこうでこうでこうだから、とか。自分の心の中で、ちゃんと怒って欲しいんです」

これを”感情の言語化”というのだそうです。

「言葉にするという脳の動き方が、実は冷静な判断につながります。じゃあ、ちゃんと部下には伝えようだったり、一回しっかりコミュニケーションを取ろうだったり、結果的に健全な対処行動を作ると言われています」

トップアスリートは怒る

“感情の言語化”をはじめ、怒りというのはスポーツに必須の感情という田中さん。

「怒らなきゃダメです。怒って殴るのがダメなだけです。なぜならば、トップアスリートは怒りがなければ、試合には勝てません。
真っ当な怒りは”闘争本能”と言ったりします。それが出来ないと”闘争”がビビる方の”逃走”になってしまいます。ビビったらダメです」

なるほど。”逃走本能”ではそもそも勝てるはずもありません。

「相手に怒るんじゃなくて、自分の能力に怒れ、っていう言い方をします。『お前、こんなところでたじろいでる場合じゃないぞ』みたいな」

武田鉄矢主演の映画『刑事物語』で犯人を追い詰める山場のシーンで、武田鉄矢扮する片山刑事が同僚に言うセリフで「相手を憎めば、力は二倍にも三倍にもなる」というのがありました。あれも闘争本能に火をつける、ということですね。

「本当は何をしたくて、今、怒るってるんだ?と考えた時、実は、怒りって愛情の裏返しだったりします。例えばチームワークを良くしたいとか、すごく温かい感情が裏にあることが多いんです」

やる気のない自分に気づく

さらに「やる気のない自分に気づく」という、逆説的な方法を語る田中さん。

「私も時々、『京さん、母親もやってるのに活動的ですね。どうやってやる気の維持もするんですか?』なんて言われました。やる気なんて維持しようと思ったら、やる気なくしますと」

では、やる気がない時は、どうしたらいいんでしょう?

「すでにやる気がないのに『こんな自分じゃダメ!』なんて頑張ったら、もっと疲れるじゃないですか。『今日の仕事って、そんなにやる気が必要だったかな?そんなに必要ですか?京』みたいに、自分に語りかけて下さい」

例えばビジネスシーンであれば、出勤して「今日はメールの整理だけだ。打ち合わせだけだ。逆にやる気、ないほうがいいかもしれない」と自分に語り掛けるのも手だそうです。

「自問自答ですよね。やる気がない時は、なくていいかどうかのチェックをしてください。心の中で」

逆にやる気が出る不思議

「”やる気がないことを認めた”という自己肯定が、逆にやる気を上げたりします。どうでもよくなるって、とても大事なパフォーマンス力です」

身体的な効果として、筋肉がリラックスするんだそうです。

また、6月からIOC(国際オリンピック委員会)のマーケティング委員も務める田中さん。
こどもたちにはぜひ生でオリンピックを見てもらい、「人間が本気になる状態」を体験してほしいと語りました。
(尾関)

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