2017年9月11日(月)

肉を焼くと硬くなるのはなぜ?料理を科学的に考えてみよう!

多田しげおの気分爽快!! / ライフ・ヘルスケア

毎週金曜日の8時台は、あるひとつのテーマに沿った特集企画をお送りしています。

9/8のテーマは「料理を科学する」。
焼く、煮る、蒸す…。いろんな調理法がありますが、その時食材はどうなっているのか?などなど、科学の面から考えてみましょう。

スタジオには、名古屋工業大学名誉教授の齋藤勝裕(さいとうかつひろ)先生にお越し頂きました。

肉を「焼く」と何が起きるか

「料理はまさに科学。料理を作るのは科学実験をしているのと同じ。台所は科学実験室のようなもの」と語る齋藤先生。

さて、最初の質問です。肉を焼くとなぜ硬くなるのでしょう?その科学的理由を伺いました。

「まずは肉そのものから説明しましょう。肉というのはタンパク質です。実はタンパク質には様々な種類がありまして。人間の体には少なくとも10万種類のタンパク質があると言われてるんです。大部分は“筋肉”としてのタンパク質ですけど」

焼き肉などに使われる肉も、動物の筋肉です。肉を食べる=タンパク質の塊を食べるということになります。

そしてここからが重要なのですが、筋肉の中で一番多いタンパク質は「コラーゲン」。
そう、女性に人気のあのコラーゲンです。

そのため非常に貴重な成分に思われがちですけれども、実は人間の持つタンパク質の3分の1がコラーゲンだと言われています。我々はコラーゲンを元からたくさん備えているのです。

動物の肉も同様なので、肉を食べればイヤでもコラーゲンをたっぷり摂取できてしまうのでした。

そのコラーゲンがどんな形で筋肉に含まれているかといいますと。まず、コラーゲンでできた袋があります。その袋の中には他のタンパク質が入っています。それが寄せ集まって筋肉ができているという構造になっています。

これに熱を加えると、コラーゲンの袋が収縮してきます。その結果、肉が硬くなるという訳です。

肉を「煮る」と何が起きるか

加熱方法には、火から直接熱が伝わる「輻射(ふくしゃ)」、水や油や空気を温めて熱を伝える「対流」、フライパンなどの調理器具を通して熱が伝わる「伝導」の3種類があります。

焼き肉は輻射での調理法なので、まず表面のコラーゲンが収縮して硬くなります。内部は変わらないので柔らかいまま。いわゆるレアです。
それが加熱されていくと徐々に内部まで硬くなっていきます。いわゆるウェルダンです。

ちなみに、コラーゲンは50~60°Cくらいで収縮して硬くなるそうです。

ところが、肉をじっくり煮込むと、硬くならずに柔らかくなりますよね。
実は、焼くと煮るとでは科学的に違った反応になるのです。

煮るというのは、水などの液体の中で加熱する、対流での調理法。
そうすると、まず50°Cくらいになって一旦肉が硬くなります。しかし、70~75°Cまで上がるとコラーゲンが水に溶け出すんですね。

つまり、肉が硬くなる要因が外へ出ていってしまうので、肉は柔らかくなる。しかもコラーゲンが溶け入った液体(煮汁)は、プルプルしてマッタリしたものになるのです。

ただ、ダラダラと長く煮込むと、肉からはコラーゲンもうまみも無くなっていって、パサパサした感じになってしまいます。
そこを、調理法を工夫しておいしくするのが、シェフの腕の見せ所。ここまでいくと科学的分野ではなく料理の技術的分野のお話になりますね。

ちなみに肉だけでなく、煮魚も同様にコラーゲンが煮汁に溶け出します。そこから生まれた料理が、煮こごりです。

肉を「蒸す」と何が起きるか

では、「蒸す」という調理法は、科学の目で見るとどうなのでしょう?

これは、水蒸気の対流で加熱される方法。
熱い蒸気でそのまま肉を温めるばかりではありません。
肉に水蒸気が付くと、その水蒸気が冷やされて水に戻ります。その際、熱を放射して更に肉を温めるのです。

暑い日に打ち水をすると涼しくなりますよね。
あれは、水が蒸発して気体になる時周りの熱を奪うからです。蒸発熱または気化熱という現象です。
その逆で、気体から液体に戻る時は放熱現象(凝縮熱)が起こるのです。

うまみ成分が外に出ていかないし、全体をムラなく加熱できる「蒸す」という調理法は、科学的に見ても面白いものだと言えましょう。

ちなみに、水蒸気は普通は温度が100°Cですが、更に加熱すれば200°Cにも300C°にもなります。その“過熱水蒸気”を利用したのがスチームオーブンです。

強力粉・中力粉・薄力粉の違い

話は変わりまして。小麦粉は大きく分けると強力粉、中力粉、薄力粉の3種類があります。これは科学的にどう違うのでしょう?

「これはもうハッキリしてます。小麦粉の主成分はデンプンですが、その他に『グルテン』というタンパク質が入っています。これの量によって分けられています。その量も、小麦の品種によって違います」

つまり、グルテンを多く含む小麦から作られたのが強力粉。少ない小麦からは薄力粉ができます。両方を混ぜれば中力粉になるという訳です。
割合としては、強力粉にはグルテンが約15%、薄力粉には約5%含まれています。

人工的に強力粉を薄力粉に変えたい場合は、グルテンを取り除けばいいということです。

小麦粉を水の中に入れ、ちょっと揉んでいると、グルテンが水に溶けていくので、我々素人でもできる作業です。

それをやり続けると、グルテンをほとんど含んでいないデンプンが残ります。それが「片栗粉」です。
一方、取り出したグルテンを利用して「麩」ができます。;

グルテンには、小麦粉を粘っこくする働きがあるので、強力粉はパンや中華麺などもっちりしたものを作るのに最適です。ピザ生地なんかは、空中で振り回してもちぎれないほどの強さですよね。

対して薄力粉は繊細な仕上がりになるので、天ぷら・フライや、スポンジケーキ・クッキーなどのお菓子作りに合っています。

酸性食品・アルカリ性食品の決め方

最後に、酸性食品・アルカリ性食品の科学的定義について。昔よく言われた「酸っぱいものは酸性。だから梅干しやレモンは酸性食品」というのは間違いです。

その食品を燃やして、後に残ったものが酸性かアルカリ性かで決まるのだそう。

例えば、木を燃やしてみます。
木の主な成分はセルロース。セルロースは炭素と水素と酸素からできています。燃やせば酸化して炭素は二酸化炭素に、水素と酸素は水になって消え、何も残らないハズ。なのに、灰が残りますよね。

その灰の正体は、ミネラル(金属質)の酸化物。これを水に溶かすとアルカリ性の強いものになります。よって、木、つまり植物からできた食品の大半はアルカリ性。だから梅干しもレモンもアルカリ性食品です。

人間は食べ物を体内で酸化し分解します。これは燃焼と同じような仕組み。つまり、体内に“灰”が残るということ。この灰(ミネラル)が酸性かアルカリ性かで人間の体にどう影響を及ぼすか?それが酸性・アルカリ性食品という考え方なのです。

ただ、極端に強い酸性・アルカリ性のものは、最初から食品になっていません。
「食べられるものは、酸性だろうがアルカリ性だろうがたかが知れている」と齋藤先生は話します。

一時は「酸性食品は体に悪い」などと言われていましたが、結局は気にせず万遍なく食べた方がいいという、科学の面からも常識的な結論になったのでした。
(岡戸孝宏)

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