7月21日放送のCBCラジオ『つボイノリオの聞けば聞くほど』では「放送禁止ソング特集」と題して、さまざまな理由から電波に乗せるにふさわしくないと判断された曲たちを、その背景とともに紹介しました。
今年で販売50周年を迎えたつボイノリオの代表曲「金太の大冒険」も放送禁止歌。小高直子アナウンサー、パール兄弟のサエキけんぞうとともに、めくるめく放送禁止歌の世界を掘り下げます。
放送されて大騒ぎ
番組内では頻繁に流れる「金太の大冒険」ですが、他局で流れた時にはネットもざわつく騒動になるほどセンシティブな曲として有名です。
小高「中でも大騒ぎになったのは、2023年1月21日土曜日。NHKラジオ第一の全国放送で、なんと1分30秒に渡って『金太の大冒険』が流れたと」
サエキ「私のリクエストでかけさせていただきました」
NHKの番組内の「サエキけんぞうの素晴らしき20世紀ポップ」というコーナーにおいて、サエキたっての希望で流したのだとか。
つボイ「NHKから何か言われなかったんですか?」
サエキ「NHK内部での倫理があるわけですが、ちゃんと通りましたよ」
早朝の時間帯であったこともひとつの要因だったようですが、NHKの全国放送で「金太の大冒険」がオンエアされたということで、SNSではトレンド入りも果たすなど一部で話題騒然となりました。
こどもに大ウケ
「サエキけんぞうの素晴らしき20世紀ポップ」でのその日のテーマは「こどもと笑いの大冒険」ということで、こどもの好きな曲として紹介したのだとか。それにはサエキのとある経験が関わっていたようです。
サエキ「エレックレコードが倒産した当時、私は中古レコード屋でバイトをしていたんです」
エレックレコードとはつボイが「金太の大冒険」をリリースしたレコード会社。1976年に倒産しています。
そんな折、サエキのバイト先へ「エレックレコード」と書かれた巨大な段ボールが届いたとか。つまり倒産して抱えてしまった在庫が、中古ショップへ流れてきたという訳です。
サエキ「その中に『金太の大冒険』もあって、あまりにも大量だったので全部10円でお店に出したんです。そしたら毎日lpどもがやってきて、金太の大冒険を買っていくんです」
大量にあったはずの在庫は、あっという間になくなってしまったそう。リリース元が倒産したのにこどもたちの間で流行したのはこんな事情もあったようです。
そしてなんとこのエピソードは書籍にもなっているとか。葛城明彦氏による著書「不適切な昭和」において、放送歴史上の事件であると記述されています。
サエキ「道徳において差し障りがあると判断されて、放送禁止になっているのに。やっぱり歴史的なことだったんですよ」
1か月持たず放送禁止に
小高「ちなみに『金太の大冒険』が放送禁止歌になったのは、発売からどれくらい経ってからですか?」
つボイ「20日!」
世に出てから驚くべきスピードで放送禁止となっています。
ちなみに一般財団法人日本レコード協会には、販売された曲が適切であるかどうかを審議するレコード制作基準倫理委員会、通称「レコ倫」という組織があるとか。
つボイ「でもエレックレコードはレコ倫に入っていなかったんです」
小高「つまり、エレックレコードから販売されるまでは規制がかからなかったと」
レコ倫に入っている会社であれば、おそらく販売にも至らなかったとつボイ。
無事販売されたはいいものの、今度は日本民間放送連盟の要注意歌謡曲指定制度に引っ掛かり、各局でオンエアが自粛されてしまった、という経緯のようです。
ちなみに、この制度で指定された楽曲を放送しても別に罪に問われるわけではありません。あくまでも自主規制であって、法的な拘束力はありません。
なお、要注意歌謡曲指定制度は1983年に廃止されています。
つボイ「それまではラジオでずっと歌っていたんです。何の問題もなく電波に乗っていたのに、レコードとなって販売されてしまったら途端に放送禁止になってしまった」
そんな放送禁止歌を何曲も世に生み出したつボイノリオは、これからも「自主規制」という表現の自由への縛りに抗い続けるのかもしれません。
(吉村)
つボイノリオの聞けば聞くほど
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2025年07月21日09時26分~抜粋