東海3県の書店員らが選ぶ今年の『日本ど真ん中書店大賞』が28日に発表され、愛知県岡崎市にある岡崎医療刑務所の管理栄養士、黒栁桂子さんの『めざせ! ムショラン三ツ星 刑務所栄養士、今日も受刑者とクサくないメシ作ります』(朝日新聞出版)が選ばれました。
10月8日放送『つボイノリオの聞けば聞くほど』(CBCラジオ)では小高直子アナウンサーが、刑務所の知られざる食生活などについて綴られているこの本を紹介しました。
自分たちで食事を作ることも
この本のサブタイトルは「刑務所栄養士、今日も受刑者とクサくないメシ作ります」。
刑務所の炊事工場、いわゆる給食室のことを業界用語では「炊場」と呼ぶそうですが、著者の黒栁さんはそこで実際に働いている栄養士です。
黒柳さんが勤める岡崎医療刑務所は主に精神疾患のある受刑者を受け入れている男子刑務所ですが、一方では初犯の受刑者も受け入れています。
黒栁さんの仕事は受刑者の食事メニューを考えることと、週に1、2回程度受刑者に調理指導をしています。
意外と知られていませんが、実は受刑者の食事を作るのは受刑者自身で、義務付けられている労務作業の一部に自炊作業があり、ローテーションで受刑者全員の食事を作っているそうです。
意外なNGフード
黒栁さんがメニューを考えるとのことですが、これがひと苦労。
予算は1人1日あたりおよそ520円で、調理工程1つ1つに刑務官のチェックが入りますので、号令の応酬というのも独特の雰囲気。
また、使用禁止のものがいくつかあり、例えば料理酒やみりんだったり、皮付きバナナもダメです。
つボイは「バナナの皮で刑務官を滑らせて、その隙に脱走するから」と推測しましたが、滑ることとは無関係。
何とバナナの皮でタバコを作ることができるからだそうで、お酒やタバコなどの嗜好品につながるものは禁止というわけです。
また、コンセントの火花で火を起こせるため、アルミホイルやアルミ包装の食材も禁止、焼き鳥の串も危険なので禁止と、予算だけではなくさまざまな制約が課せられている中で、メニューを考えているとのことです。
食から更生へとつながることも
刑務所での食事には「平等にしなければならない」という大原則があり、全員に平等に作って配るのもひと苦労です。
例えばトンカツのパン粉づけも難しく、つけ方によってはトンカツ1枚の大きさに差が出て不平等になりかねません。
そこで黒栁さんが考えたのがトンカツを細かく切ること。これにより1人あたりの重さが調整しやすくなりました。
この本では心温まるような話も書かれているのですが、黒栁さんは本を執筆するのにあたって、不謹慎といった批判が来るのではないかと思ったそうです。
ただ、このような話を伝えることで、刑務所で働いている方々の人と向き合う仕事について知ってほしい、また、受刑者が出所して更生しようとしても社会の理解が得られず再犯してしまうという負のループを断ち切りたいという思いがあったとのことです。
また、処罰という観点から「受刑者にはまずいごはんを食べさせておけばいい」と言われがちですが、食べたり作ったり、食というものが受刑者の更生にどれほど大事かということも伝わってくる本だと小高はまとめました。
(岡本)
つボイノリオの聞けば聞くほど
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2024年10月08日11時09分~抜粋