つボイノリオの聞けば聞くほど

Xに跋扈する「インプレゾンビ」。正体を暴いてみたら…

最近、X(旧Twitter)で、人気のある投稿へのレスポンスに、意味のない外国語や不自然な日本語、あるいは誰かとまったく同じコメントが連なっているのを見ることがあります。

これらの投稿は「インプレゾンビ」と呼ばれており、特に能登半島地震以降、重要な投稿が見にくくなったことが問題視されています。

2月5日放送のCBCラジオ『つボイノリオの聞けば聞くほど』では、つボイノリオと小高直子アナウンサーが「インプレゾンビ」について解説します。

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マスク氏の買収が転機か

まずSNSのX(旧Twitter)について。2006年にアメリカでサービスが開始された簡易投稿サービスTwitterは、短い文章や写真、動画などを投稿でき、誰でも気軽に自分の意見を発信したり、企業のPRにも使えます。
特に日本ではユーザーが多い人気のサービスとなりました。

2022年10月、運営するTwitter社は、電気自動車メーカー・テスラのCEO、イーロン・マスク氏に買収されました。マスク氏は2022年の世界長者番付1位の実業家です。

しかしマスク氏は買収後にTwitterにおけるルールをどんどん変えてしまい、ユーザーからの評判は良くありません。

大量解雇

そして経営面では、わずか半年間で8,000人近くいた従業員を6,000人以上大量解雇しました。

解雇された社員は、Twitterに投稿された記事が攻撃的ではないか、差別的ではないか、虚偽の発信をしていないかなど、利用規約に基づいたチェックに従事していたスタッフが多かったと言われています。

膨大な人件費を削減する目的と思われますが、解雇により、デマや攻撃的な投稿の温床になるのでは、という懸念も広がっていました。

X誕生

さらに大きな変更は、昨年7月にサービス名がTwitterから「X」に変わったことです。

一方で有料会員サービスに力を入れるようになりました。
Twitter時代は著名人や組織のアカウントには、本人であることを証明する青いチェックマークの入った認証バッチが与えられていました。
ところが、昨年以降は有料会員の特典としてもこの青いチェックが入るようになりました。

そのため認証済みのアカウントか、一般の有料アカウントなのかが不明瞭となり、投稿の信憑性が疑わしくなっていたのです。

収益化導入

その上昨年の夏からは、一定の条件を満たせば自分の投稿に表示される広告から収益の一部を受け取れる「クリエイター広告収益化プログラム」を開始。
これがいわゆる「インプレゾンビ」を増やす要因と見られます。

収益化の条件は、まず有料のプレミアム会員、または認証済みの組織であること。
そしてフォロワー数が500人以上であること。
さらに過去3カ月間の投稿に対するインプレッション、閲覧数が500万件以上という条件があります。

つまり、自分の投稿が多くの人に見られればお金が入るという仕組みになり、収益目的で閲覧数を増やす行動が盛んに行われるようになったのです。

インプレッションを増やすために自身で発信するのではなく、多くの人が見ている投稿へコメントをつけて、インプレッションを稼ごうとするアカウントが増加したわけです。

インプレゾンビ

こうしたアカウントが悪質なのは、インプレッションを増やすため、反応の多いコメント文をそのままコピーしたり、海外の言語で投稿したり、適当に動画を貼りつけたり、絵文字を連発すること。

現在の仕組みでは、有料アカウントのレスが元となる投稿の近くに集まるため、真っ当な反響にたどり着きにくい事態となっています。

ミュートやブロックで見えなくしても、また別の投稿に同様のアカウントがゾンビが湧くように現れるため、これら収益目的のアカウントが「インプレゾンビ」と呼ばれるようになったのです。

災害時の問題

このインプレゾンビ問題が浮き彫りになったのは、元日の能登半島地震でのこと。
発生後に「○○市で今、生き埋めになっています、助けてください、拡散希望」という投稿が多数登場しました。
しかも、文章をコピーされて複数のアカウントから投稿されたのです。

さらにこれらの投稿の多くがデマだということが判明します。
この投稿によって本当に必要な救助活動が阻害される事態となり、たとえ本当に被災者自身の投稿であっても、これらデマポストに埋もれてしまう懸念も広がったのです。

NHKが救助要請の偽投稿についてところ、その多くが海外から日本語で投稿されていて、閲覧された回数は1100万回以上にのぼったそうです。

また拡散した投稿の多くが、パキスタン人によることもわかったそうです。

パキスタンでは収益化システムが使えないとされていますが、ユーザーの間で裏技が広まっているそうで、「1万円稼いだ」とアピールしている人もいたそうです。ちなみにパキスタンの平均月収は2万円前後とのことです。

日本人が食い物に

マスク氏の施策を引き金に、Xは規約すらあっさり破られる無法地帯となりました。
日本でこのインプレゾンビが目立つようになったのはなぜでしょう?

実は日本は、ユーザーひとり当たりの利用時間が世界1位とのこと。
そのため日本人の投稿が目をつけられ、災害までも収益化に利用されています。

そもそも日本人ユーザーの間でも、デマなど健全といえない投稿が閲覧数を稼ぐ傾向にあり、そこを「インプレゾンビ」が食い物にしている、というのが現状です。

首相官邸をはじめ各自治体がXのアカウントを持っており、公共性の高い社会インフラでもあります。
今後どのような対策がとられるか、注視すべきです。
(みず)
 
つボイノリオの聞けば聞くほど
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2024年02月05日11時08分~抜粋

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