つボイノリオの聞けば聞くほど

襟裳の春は本当に何もなかった、過酷な環境からの復活劇

『つボイノリオの聞けば聞くほど』は、金曜恒例のおたより復活デー。

読みきれなかったおたよりをあらためてつボイと小高直子アナウンサーが紹介しています。

3月19日の放送では、最近問題となっている中国の黄砂の話をきっかけに、日本でも他人事ではない別の環境破壊に関する話へと展開しました。

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過去10年で最も深刻な黄砂

中国では現在、過去10年で最も黄砂の被害に見舞われています。

原因は森林伐採などによる砂漠化といわれていますが、日本にもPM2.5と呼ばれる細かい粒子の有害物質を含んだ砂が流れてきて、健康被害につながる可能性もあります。

その点では黄砂そのものがすでに他人事ではないのですが、あるリスナーさんから届いた、北海道襟裳(えりも)にある営林署(現在は森林管理署)の元署長さんによる、20年ほど前の講演を思い出したというおたよりを紹介しました。

「襟裳といえば『襟裳岬』が頭に浮かんで、ほのぼのとした風景を思い浮かべて、いつかは旅してみたいと思っていました。

ところが、現実はひどいものでした。

昔は確かに襟裳岬は山も海も青々と豊かでしたが、明治以降、多くの人々の入植で本州とは格段に厳しい冬を迎え、多くの木々を切り出してどんどん燃やして暖をとりました。

そのため、岬はすぐにはげ山となりました」(Aさん)
 

襟裳には嫁を出すな

木々がごっそりなくなったことで、襟裳は別の被害を受けるようになります。

おたよりの続きです。

「一度緑を失うと、ここから1年多くの時期は雪や氷に覆われて、春になれば雪解け水で土がごっそりとはぎ取られます。

さらに海に突き出した岬なので、東から南から西から容赦なく暴風にさらされる。

木どころか草1本すら根付かない。

風の中を歩くだけで、口も鼻も目も耳も砂ですぐにいっぱいとなる。

『襟裳には嫁を出すな』といわれたぐらい。

営林署として何度も木の苗や草を植え、うまく行ったと思っても、翌春には元の木阿弥。

海も荒れた土砂で青色を失って泥となって、魚も海藻もなくなったので、こどもたちは海が青いことを知らない」
 

豊かな自然の襟裳が戻ってきた

そんな過酷な環境だった襟裳ですが、あるアイデアをきっかけに回復するようになります。

「ある日、岸に流れ着いた海藻が岩に張り付いているのを見て、アイデアが浮かびました。

海藻を一面に敷き詰めてみたら、うまくいったんです。

風に負けず張り付いていた、そこに草を植えてみたら根付いた。
そして雪解け水でも流れなかった。

何年もかけて草でいっぱいにして、徐々に低木樹を育てて何十年後には大きな木にして森へと回復していくことができた。
森が育つと海に魚や海藻が戻り豊かになる、人も集まる。

誰も嫁に出すなとは言わなくなりました。

これまでは森進一の『襟裳岬」は大嫌いで誰も歌わなかったが、今ではみんなで歌えるようになったそうです。

自然を失うのは一瞬、回復するには膨大な時間と労力、お金がかかる。
お金をかけても戻らないことがあります。
早くそれにみんなが気づいてほしいです」

この話は過去にテレビ番組『プロジェクトX 挑戦者たち』(NHK総合)でも取りあげられ、砂漠緑化プロジェクトの活動が紹介されていました。

おたよりの内容を受けて、つボイは「日本は割と早く根付いて、木とか生えてきますよ。それでも襟裳岬は苦労したということですので、苦しむのはわれわれ。自然をなるべく大事にしながら生きていくのがいかに大事かということですね」とまとめました。
(岡本)
 
つボイノリオの聞けば聞くほど
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2021年03月19日10時57分~抜粋

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