9月22日の『つボイノリオの聞けば聞くほど』は休日特集で、テーマは「ベートーヴェン」でした。
いかにも芸術という固い話ではなく、むしろクラシック音楽をあまり聞いたことのない人のためのトリビアです。
教えてくれたのは。日本最大のクラッシック専門ショップ「アリアCD」のオーナー、松本大輔さん。
聞き手はつボイノリオと小高直子アナウンサーです。
クラシック史を変えた男
2020年はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの生誕250年です。生誕記念として様々なコンサートが企画されています。
そんなベートーヴェンの魅力を語る松本さん。
松本「ベートーヴェンの前と後でクラシック音楽の歴史はがらりと変わっています。ベートーヴェンひとりがクラシックの歴史を変えました。そんな男です」
小高「音楽室の顔(肖像画)を思い出しますね」
つボイ「クラッシックは入れる人と入れない人がいますね。好きな人もいるし、聴いたこともない人もいますがその差は何でしょう」
松本「僕もわかりません。僕のひとつの使命はクラッシックをほとんど聞いたことのなかった人に、クラッシックのことを伝えることだと思っています」
その言葉どおり、松本大輔さんは『面白いほどわかるクラシック入門』(青弓社)というビギナー向きの著書も書かれています。
ベートーヴェンはアイドル?
まず番組で紹介された曲は、ピアノソナタの『悲愴』。
ベートーヴェンは22歳でウィーンにやってきます。それから6、7年は作曲家としてはまるで鳴かず飛ばず。
一般に初めて書いたとされるのがこの『悲愴』です。28歳でのデビューですから遅咲きです。
松本さんによれば、意外にも当時のベートーヴェンはアイドルだったそうです。
音楽家の舞台は貴族たちのサロンです。ベートーヴェンはプレイヤーとして有名でした。
ボンから来たベートーヴェンの弾き方はウィーン貴族たちを虜にしました。とても洗練されオシャレで、即興演奏にも卓越していたので、たちまちトップアイドルスターになったのです。
耳が聴こえなくなる
ところがベートーヴェンが20代後半の頃、耳が聴こえなくなります。
それまでは割と社交的な人だったのが、だんだん人から遠ざかり、街から遠い場所に住み、孤独な生活を送るようになりました。
奇しくも、傑作と賞賛される作品はこの頃から生まれるようになりました。『悲愴』を書いたのも実はこの頃です。
人前で演奏しなくなったベートーヴェンは、専ら作曲だけを行う初の音楽家となりました。その契機となったのが、皮肉なことに耳の病気だったのです。
悪筆で「テレーゼ」が「エリーゼ」に
よく知られた曲にピアノ曲『エリーゼのために』があります。
この曲の楽譜は、友人のテレーゼ・マルファッティーの持ち物から発見されました。そのため、本体タイトルは『テレーゼのために』となると見られています。
ところが、ベートーヴェンが書いた『テレーゼ』という文字があまりに汚かったため、判読できないなどの理由で『エリーゼのために』となったそうです。
テレーゼはベートーヴェンが39歳の時にプロポーズした相手で、この時テレーゼは22歳年下でサロンの華、大金持ちの娘でした。
ベートーヴェンは両想いで結婚できると思いこんでいましたが、実際にそんなことはなく、両親からも「娘をやる気はない」とあっさり断られたそうです。
ずいぶんと思い込みの激しい人だったようです。
恋多き人
ベートーヴェンは恋多き人と言われます。
ひとりひとりに対して真剣でしたが、すぐにふられ、また他の人を好きになる。
本当はモテたベートーヴェンですが、高嶺の花を好きになることが多かったため失恋ばかり。結婚願望は強かったようですが、生涯結婚はできなかったようです。
つボイ「この曲を捧げても、テレーゼの心は動かなかったんですか?」
松本「『月光』もある娘に捧げたけどダメだった。だいたいベートーヴェンは女の子に捧げています(笑)」
ベートーヴェンはイケメン?
番組にはリスナーから「娘が言うには『ベートーヴェンはイケメンだった』とか」というメッセージが届きました。
松本「イケメンと言っても変わったイケメンで、色は浅黒く、背は低く、髪はもじゃもじゃで、ちょっとエスニックな顔をしていて、そこがウィーンの人たちからすると、エキゾチックな感じで魅力的だったようです」
小高「それに音楽の才能があると女子は魅かれますよ。…あれ?おかしいな、つボイさんは?」
つボイ「私が女の子にいってもフラれる。なぜかと聞くと『私は音楽家としか付き合わない』…オレはどうなっとんや!という話や」
ベートーヴェンとつボイの共通点は、モテるはずの「音楽家なのにフラれる」ことのようです。
ただつボイの場合、世間が「音楽家」として認めているのか、定かではありません。
地毛か、カツラか?
リスナーからは「肖像画のパーマ頭は地毛ですか?カツラですか?」との質問も。
松本「これは大事です。モーツァルト、バッハはカツラを被っています。ベートーヴェンは完全な地毛です。カツラを被るということは、貴族の前でかしこまっていることの象徴です。
ところがベートーヴェンは地毛。『俺はもう貴族の前でカツラを被ったりしないぜ』ということです」
カツラを見れば、貴族がいた頃の時代の人かそうでないかわかるそうです。
「必ず歓喜に至る」
ここでウンチクを語るつボイ。
「世の中の変化が音楽とか芸術に影響を与えます。あの頃、フランスではフランス革命が起こり、イギリスでは産業革命が起こる。ヨーロッパ社会が変わる時代です。
市民が台頭し、音楽の担い手になっていく時代です。ベートーヴェンはその時代が生んだ作曲家です。
…と、これは松本さんの本に書いてありました」
本で読んだ知識を、わざわざ著者の前で語るつボイはさておき、その後番組では有名な『運命』『英雄』『第九』などについて、興味深い話が続きました。
最後、松本さんはこんなベートーヴェンの言葉で締めました。
「人生は苦悩に満ちているが、必ず歓喜に至る」
人間味あふれるベートーヴェンに興味がわいた人も多かったでしょう。クラシックと構えないで、気軽に聞いてみたいですね。
(みず)
つボイノリオの聞けば聞くほど
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2020年09月21日09時17分~抜粋