つボイノリオの聞けば聞くほど

アンデス文明が「世界四大文明」に入らない理由

現在、名古屋市博物館(名古屋市瑞穂区)では特別展『古代アンデス文明展』を12月2日まで開催中です。

10月8日の『つボイノリオの聞けば聞くほど』では、自ら「インカ帝国の成立」という楽曲を歌っているつボイノリオが、古代アンデス文明について南山大学人文学部教授の渡部森哉先生にいろいろと聞きました。

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アンデス最後の文明

「名前というよりはあの曲で。あの方かという」と渡部先生、つボイのことは知っていたそうです。
つボイは「ミュージシャンとしての一人歩きですよね」と返しますが、渡部先生がミュージシャンとして捉えていたどうかは不明です。

今回の展示について「第一印象で行くと古代アンデス文明=インカ帝国。ほぼそんな感じで捉えてると、ちょっとそうじゃないんだっていうことがわかりますね」と小高直子アナ。

渡部「古代アンデス文明というと、正確には紀元前3000年ぐらいから始まる非常に長い文明なんですね。その最後の100年ぐらいに出てきたのがインカ帝国で、それ以前にもですね、帝国と呼ばれたり国と呼ばれてる文化がたくさんありました」

南米大陸の太平洋側、海岸沿いにずーっと縦に長い南北4000km。これがインカ帝国の範囲だそうです。

なぜ四大文明に入らない?

アンデス文明について「(世界)四大文明には入ってないですよね」と言う小高。
学校で習った四大文明とは黄河文明、エジプト文明、インダス文明、メソポタミア文明でした。

しかし「そもそも四大文明という言い方は、日本とか中国でしか言わない言い方なんです」と渡部先生。

渡部先生が初めてペルーに行って現地の人に話しても全く通じなかったそうです。なぜ通じないのか調べてみると、四大文明というのは1952年頃から日本の教科書に出てきたワードだったそうです。

渡部「そもそも世界では『何大文明』とか言わないんです。でも日本だと四大文明とか日本百名山とか七不思議とか何か数字をつけて題をつけるは大好きなんですよね」
つボイ「私のふるさと一宮は三大七夕まつりで有名です」

教育で馴染みのないアンデス文明

大学では西洋史学科を学んでいた小高アナ、「アメリカ大陸の歴史に興味を持つ経路がないっていう感じがする」と漏らします。

高校生の授業では日本史か世界史かを選択します。
世界史を選択すると、今度はその中で東洋史か西洋史かで別れました。西洋史だとヨーロッパについては学びますが、アメリカ大陸のインカ文明などは学びません。

渡部「そもそも歴史学っていうのは文字資料を基に過去について研究する学問なので、文字がない時代とか文字がない地域は対象外なんですね。学としては歴史学じゃないんです。

ですから文字資料がないところは、現代では文化人類学という学問分野が担ったり、過去であれば考古学という学問で担うわけです。歴史学の中でアンデスがないというのは、そもそも文字資料がないからなんですね」

しかし小高アナは空中都市やナスカの地上絵の例を出し「凄い文明を築いたなあというのは見えてくるわけですよね?」と腑に落ちない様子。

渡部「それは全て考古学的な研究の成果としてわかって来ることなんですね」

学校で学ぶ歴史学と考古学は別、ということでした。

文明が起こる環境

つボイ「南米ではインカに至るまで、紀元前何千年前からずっと文明が起こっては消えてきたわけですが、太平洋側ばっかりですよね?大西洋側では一つも起こってないんですか?」

渡部「それは結果ですけども、大西洋岸よりも太平洋岸で起こったいくつかの要因はあると思うんです」

南極の方から南米の西岸に沿って北上してくる冷たいペルー海流(フンボルト海流)のためにペルーの海岸地帯が砂漠になりました。

渡部「砂漠っていう環境と人間の行動との関係がひとつ重要だったんじゃないか。大西洋側、ブラジルの沿岸沿いに海岸がありますけども、ああいう砂漠はないんですよね」

ここでつボイが「エジプトも砂漠ですね」と漏らします。確かに砂漠という環境で生まれた文明は存在します。

渡部「ある程度厳しい環境だからこそ文明が起きた。豊かな環境で満足してる人間が、新しい社会を生み出すかっていうと、そうはならなかったんですね」

環境の変化が文明を作る?

人類はユーラシア大陸からベーリング海峡を通ってアメリカ大陸、南米大陸へ渡ったと言われています。

つボイ「同じような人種なのに北アメリカでは文明が起こらなかったというのは、その砂漠とか海流に関係があるんでしょうか?」

渡部「ちなみに紀元前3800年ぐらいに海流が変化して、現在のような環境になったんですね。ずっと環境が変わらないところじゃなくて、変わったところでそういう文明が起きてきたということがわかってます」

インカへの道

小高「インカは最後の方の一大帝国って言ってましたけれども、その前にいろいろな国みたいなものはあったんですね?」
渡部「国という形もありましたし、我々は神殿と呼ぶんですけども、宗教的な施設をまとっていた時代もあります」

インカに至るまではどんな文明がいくつぐらいあったのでしょうか?

渡部「考古学的にわかりやすい指標がある場合に文化っていうカテゴリーで分類するんですね。だからナスカもひとつの文化ですし、インカもひとつの文化で、その中にマチュピチュもあります」

それ以外にもモチェ、チャビン、チヌーなど考古学での枠組みとして数えると10以上の特徴ある文化があるそうです。

つボイ「4000~5000年の間に10以上の文化が起こっては消えていった。でも完全に消えたわけじゃなくて継承する部分もあるんですよね」
渡部「もちろんです。文化としては継承されますけども、社会として仕組みが変わってくという意味ですね」
(尾関)
つボイノリオの聞けば聞くほど
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2018年10月08日09時16分~抜粋

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