つボイノリオの聞けば聞くほど

フグの肝臓を食べてきた食文化は、国のルールに寄り添えるか?

毎日たくさんのおたよりが届く『つボイノリオの聞けば聞くほど』。
毎週金曜日は「おたより復活デー」と題して、時間がなくて読めなかったおたよりを中心に紹介しています。

1/19の放送では、愛知県蒲郡市のスーパーで、フグの肝臓が売られていた問題について、たくさんのおたよりが紹介されました。

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肝入りフグで肝を冷やす?


蒲郡市の「スーパータツヤ」が、ヨリトフグの肝臓入りの切り身のパックを販売していた問題で、愛知県警は16日夜、食品衛生法違反の疑いで店を家宅捜索。
前日の15日、購入した客から保健所に「フグのパックに肝臓が入っているのではないか」と連絡があったことから、今回の事実が明るみになりました。

保健所の聞き取りに経営者は「何十年も売っていた」などと話し、過去にはサバフグの肝臓も販売していた可能性も認め、店はフグ処理施設の廃止届を提出し、販売はやめる意向を示していました。
県は営業停止などの処分はしないということです。

この件について、まずはAさんからのおたよりです。

「販売していた店は当然悪いですが、保健所は何をしていたのかなあと思います。かつてのレバ刺し・ユッケの時もそうだったんですが、定期的な抜き打ち検査を怠っていたのではないでしょうか。店と同じように保健所も糾弾されるべきでは?
ちなみに私は飲食店を6年経営していますが、開店時に高額な手数料だけ徴収してそれっきり、一度も保健所が検査に来たことはありません。広報誌すら来ません」

保健所に対する不満が大きいようです。

地元民の意見は


続いてはBさん。

「実はあのスーパー、実家のすぐ近くなんです。テレビに映っていた社長も『タツヤのおじさん、年をとったなあ』と懐かしく感じました。
ニュースで聞いた時『フグの肝を売っちゃったんだ、大丈夫なの?』と驚きましたが、その後"地元では昔から食べられていた"という報道を見て、思い出しました」

何を思い出したんでしょう?

Bさん「父が『○○フグには毒が無い』と言ってたなあ。何というフグかは忘れたけど。(※おそらく、ヨリトフグは蒲郡で"チョウチンフグ"と呼ばれているので、それだと思われます)
我が家では父以外は魚嫌いで、フグ鍋は食べたことがないんですが、80を過ぎた父が未だにそう言っているということは、少なくとも80年間は誰もあたってないのではないかと」

あくまでも個人の目安です。

お次は、愛知県田原市のCさん。

「私も小さい頃から家であのフグを食べてましたよ。いつも母がさばいていました。『コイツは毒が無いから大丈夫』だと言ってましたし、今も生きていますし。煮物はホロホロとした食感で美味かったです」

毒がないと思われていたのに…


そして漁師のDさん。

「ここ篠島でも種類は違いますが、シラス網に入ってくるサバフグなんかは、肝臓はもちろん美味しく食べられていますが、中毒になった話は聞いたことがありません。
今回、地元の人が買っていたらそんなに騒ぎにはならなかったと思うと、スーパーのオヤジさんはちょっとかわいそうだなと思いました」

蒲郡・田原・篠島と、三河湾一帯の地域では「ここのフグの肝臓に毒はない」という認識が、食文化として根付いているようです。
さらに言えば、伊豆半島などでも肝臓が食されていたそうです。
確かに、ヨリトフグは長年無毒であると言われてきており、図鑑や水族館などの資料にもそう書かれているものが多いのです。

ただ、2006年に沖縄での調査で、サンプル6匹のうち1匹の肝臓から毒が検出されました。
たったの一例ですが、その一例で何かが起こってしまったらと思うと、厚労省も一律禁止にせざるを得ないでしょう。

ちなみに、サバフグも含めて、フグは個体や地域や季節によって差が出るらしく、無毒種でも毒性を持つ可能性があるそうです。

フグ解禁の歴史


Eさんのおたよりです。

「私は小さい頃、家の庭にある梅の木に成った青梅を取って食べたことが何度もありますが、今では青梅は猛毒があり、絶対食べてはいけないと言われています。でも昔は普通に食べてたんですよ。
それと同じように、『この地方では昔からフグの肝を食べていた』と皆が証言しているんだから、この地方の方々にフグの処理を任せたらどうでしょう。
全てを法律で縛ることはないのでは?」

確かに、青梅には毒性がありますが、それは微量なもの。一度に100個以上食べなければ致死量になりません。(ただし、できたての幼い青梅や、種には多めに含まれているので注意)
毒性のある食べ物でも何とかできるんじゃないかという意見ですね。

ここでつボイが語ります。

「フグというのは、地方によるものなんですよ。フグの調理師免許って都道府県ごとにありますでしょ?国全体で統一してるんじゃなく。
例えばフグの卵巣の糠漬け。全国的には食用が禁止されてる卵巣を、石川県だけは郷土料理として許可しています」

さらには、「ずっと続いてたフグ禁止令を、伊藤博文が山口県で解除したんです」とも。

豊臣秀吉がフグ食禁止令を出して以来、大事な家臣を失わないよう江戸時代も各藩によって禁止され続けてきました。
それが明治時代、初代総理大臣・伊藤博文が下関の料亭に立ち寄った時のこと。あいにくの時化(しけ)で提供する魚がなく、おとがめ覚悟でフグ料理を出したところ、伊藤博文はその美味しさにいたく感激。きちんとしたルールを作れば禁止にしなくてもいいんじゃないかと、山口県に働きかけた結果、禁止令が解かれたのでした。
そこから他の都道府県も追随していったのです。

このように、フグは都道府県ごとに決められているという歴史があるので、ヨリトフグもちゃんと調べ直して、安全性を証明した上で、愛知県などの大きな力を動かすしかないのでは?ということです。

「これまで中毒にならなかったんだから大丈夫」だけではルールを変えられません。
食文化とルールを両立させる大変さをしみじみと感じる、つボイなのでした。
(岡戸孝宏)
つボイノリオの聞けば聞くほど
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2018年01月19日10時02分~抜粋

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