●教えてドクター |
名古屋大学医学部付属病院 神経内科 教授
勝野雅央 先生
パーキンソン病は今から200年前に見つかった病気ですが、治療は1960年代位から本格的に行われるようになりました。ですので治療が行われるようになってからは50年以上経ったということになります。その間に様々な治療法が開発されて、現在患者さんに対して使用できるようになっています。その多くは飲み薬ですが飲み薬だけでは十分に治療ができない場合もあります。そういった場合には医療機器(デバイス)を使用した治療を行うこともあります。医療機器を使用する治療の一つは脳の中に電極(金属の細長い棒)を脳の中に入れて電気刺激を加えることにより脳の回路を調整するという方法を用いた治療です。これを深部脳刺激法と言います。もう一つの治療はLCIGという治療です。これはレボドパカルビドパ経腸療法と言って、胃の中に管を通し、管を使ってお薬を体に届ける治療法です。この治療法はまだ使用され始めて数年位しか経っていません。この治療のためにはまず胃ろうを作ります。通常この胃ろうは栄養を送るために使用しますが、治療においては、さらに胃ろうの中に細いチューブを入れまして、そのチューブの先端を胃からさらに進めて小腸のあたりまで持っていきます。その小腸に外からポンプでお薬を持続的に届けます。この治療法のメリットはお薬の効果と大きく関係します。パーキンソン病の治療の中心はドーパミンを増やすということになりますが、ドーパミンそのものをお薬として飲んでいただいても分解されてしまいます。ですのでドーパミンの材料となるLードーパ(レボドパ)を飲んでいただきます。通常飲み薬で大きな効果が出てきますが、病気の進行が進むにつれて、効果が早く切れてしまうようになります。つまりお薬を飲むと調子がいいのだけれど、お薬が体から消えてくると、体の動きが止まってしまうということになります。それを回避するのがこのLCIGという胃ろうを使った治療法です。胃ろうを使ってチューブを中に入れてお薬を徐々に届けることができれば、起きている間ずっと、同じスピードでお薬を体に届けることができます。そうしますと、先ほど申し上げたような、お薬の効いている時間と、お薬の効きめがなくなってしまった時間との変動がなくなります。なるべく体がちょうど良い状態である時間を長くするというのがこのお薬の目指すところです。少し病気が進んだ段階であっても専門家の診療をしっかり受けるということが重要だと思います。