●教えてドクター |
名古屋大学医学部付属病院 神経内科 教授
勝野雅央 先生
神経の難病の中で最も患者数が多いのがパーキンソン病で、15万人から20万人程度と言われています。ジェームズ・パーキンソンが今から200年以上前に発見した病気です。この病気の特徴は脳の中のドーパミンという物質を作っている神経細胞が徐々に弱って死んでしまうために起こるということです。このドーパミンという物質は体をスムーズに動かしたり、脳を働かせたりすることに作用しています。そのためドーパミンが無くなることで体の動きがゆっくりになってしまったり、認知機能が衰えてしまったりします。パーキンソン病の症状は大きく分けると、運動症状と非運動症状とに分かれます。運動症状というのは体の動きの調子が悪くなるということですが、具体的には体の動きがゆっくりになるため、歩くのが遅くなったり、着替えに時間がかかったりします。そしてさらに筋肉がこわばったり、手足が勝手に震えてしまったり、バランスが悪くなり転びやすくなったりします。運動に症状が出てこない、非運動症状は運動に問題が出てくる前から症状が現れると言われています。非運動症状には、レム睡眠行動異常症と言って夜中に夢を見て大声で騒いでしまったり、嗅覚低下と言って物の匂いがわかりづらくなったり、便秘になってしまったりする症状があります。これらの症状は運動と直接関係ありませんので、パーキンソン病の症状の一部であるとは気づかれない方がほとんどだと思います。現在パーキンソン病については画像の検査で非常に高い精度で診断できるようになりました。先ほど申し上げたような、パーキンソン病の前触れ症状の段階であっても適切に診療を受けることによって早く病気が見つかることがあります。その段階でご本人が気づいていなくても軽い運動症状がすでに始まっている可能性もあります。ですので夜中に大きな声を出して騒ぐことをご家族の方に指摘されたり、鼻の調子が悪くて匂いが分かりづらいことに気づいたり、便秘がひどくなってきたりといったようなことがあれば、「もしかしたらパーキンソン病の前触れかもしれない」ということで一度病院の特に脳神経内科でご相談されると良いのではないかと思います。