北野誠のズバリ「カイシャのシュウカツ」

事業承継あるある?メンツにこだわるとどんな影響が?

2024年05月12日(日)

ライフ・ヘルスケア

昨今少子高齢化により、中小企業や小規模事業者の後継者不足などが大きな経営課題のひとつとなっています。承継する人がいない場合は廃業するしかないと考える経営者もいます。

CBCラジオ『北野誠のズバリ』のコーナー「カイシャのシュウカツ」では、事業承継について、専門家をゲストに多方面から学びます。

5月8日の放送では、東京都内のとんかつ屋のM&A成約事例を北野誠と松岡亜矢子が、三井住友トラストグループ 株式会社経営承継支援・はじめ部長の藤原秀人さんに伺いました。

後継者のいないとんかつ店

今回藤原さんが紹介したのは、東京都内のとんかつ店のM&A成約事例。
どのような店舗だったのでしょうか?

藤原「都内で4店舗経営されていて、ビジネス街や有名な高層ビルに入居していた。売上も年間で1.2億円くらいあって利益も出ていた」

経営も順調なとんかつ店が、なぜM&Aを選択したのでしょうか?

藤原「後継者がいなかったことと、社長が80歳を超えていて『会社を引退したい』と相談に来られた」

北野「80歳、ちょうどいいくらいですね」

買い手はどのような会社だったのでしょう?

藤原「イベント会社さんが手を挙げました」

イベント会社がとんかつ店という異業種のM&Aに挙手する、という意外性に驚く北野。

藤原さんが調べたところ、グループ会社で居酒屋のチェーンを30店舗ほど経営していました。
居酒屋は基本、夜のみの営業だったので、ランチを手掛ける飲食事業に興味があったそうです。

オーナーの譲れないこだわり

しかし成約はなかなかスムーズにはいかなかったようです。
その理由が個性的で勢いのある社長のこだわりでした。

藤原さんが、その社長のこだわりの中から2つ紹介しました。

1つ目は、買い手候補先は、誰もが聞いたことのある大手企業のみを希望。

藤原「何百店舗もとんかつチェーンや飲食店を(候補に)持っていたのですが、さすがに4店舗だけなので、結構見送りになった」

そんな中、なんとか有名な老舗のイベント会社が興味を持ってくれたので、1つ目はクリア。

2つ目は、契約当事者を誰にするか。
買い手には親会社と子会社(グループ会社)がありますが、M&Aの最終契約書の締結の際に、買い手は子会社である居酒屋チェーン店を契約当事者としようとしたそうです。
それを知った売り手の社長が「俺は親会社に売るんだ、子会社じゃない」とのことで大激怒します。

藤原「その後話し合いをしたんですけど、本当に『売らない』という話になった」

本体の老舗イベント会社との締結が必要とのことで「かなりゴタゴタした」と振り返る藤原さん。
最終的にM&Aはできたのでしょうか?

藤原「平行線のままだったので、最後は買い手さんに相談したところ、1回親会社と締結するよと」

その後に、子会社との契約を再度締結する、という二度手間を要する結果となりました。

こだわった理由は?

藤原さんもその理由が気になっていたらしく、成約後、社長との会食した際に尋ねてみたそうです。

藤原「『契約書を皆に見せびらかしたい』と。俺は有名な(老舗イベント)会社に売ってやったんだぞって。本当にそこだけだって」

中小企業や個人オーナー会社のM&Aでは、経済合理性とは関係のない別の力が働くことがよくあるそうです。

北野「面子はM&Aの壁になるということだね」

「そんなこだわらんでもいいのに」と言いつつ、正直に話してくれた社長に関心を示す北野でした。
(野村)
 
北野誠のズバリ「カイシャのシュウカツ」
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2024年05月08日14時50分~抜粋
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