北野誠のズバリ「カイシャのシュウカツ」

不動産付きの焼肉店を承継した異業種経営者の思惑とは?

昨今少子高齢化により、中小企業や小規模事業者の後継者不足などが大きな経営課題のひとつとなっています。承継する人がいない場合は廃業するしかないと考える経営者もいます。

CBCラジオ『北野誠のズバリ』のコーナー「カイシャのシュウカツ」では、事業承継について、専門家をゲストに多方面から学びます。

4月10日の放送では、関西にある焼肉屋の承継事例を北野誠と松岡亜矢子が、三井住友トラストグループ 株式会社経営承継支援・はじめ部長の藤原秀人さんに伺いました。

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秘伝のタレが売り

今回藤原さんが紹介するのは、関西にある焼肉店の継承事例です。
どのような会社だったのでしょう?

藤原「チェーン店ではない焼肉屋さん。オーナーさんが1代で築き上げた1店舗のみの経営」

所在地は関西エリアで、人口約30万人の比較的な大きな市の駅から徒歩5分ほどの好立地です。
オーナーはどのような方だったのでしょう?

藤原「約30年前に独立されてお店をオープン。とても熱心な方で、お肉の仕入れもご自身でされ、肉の部位単位で原価管理をしっかりしていて、数字にめちゃくちゃ強かった」

この社長いわく、焼肉店の成功の秘訣は「タレにあり!」と自信を持っていました。
その言葉どおり、独自の配合で秘伝のたれを生み出すなど、とても研究熱心だったそうです。

北野「僕らの知らんところで、リンゴをすっておろすとかね、ああいうのあるんですよ。ニンニクの割合とかね」

藤原「入れる順番もあるって言っていました」

高額な不動産込みの条件

成功している焼肉店なのに、なぜお店を手放すことにしたのでしょう?

藤原「70歳を過ぎて、仕事は好きなのですが体力的に疲れてきた。店舗も2階席もあり規模が大きかった」

そこで少し規模を縮小し、身の丈に合った飲食店経営をしたいと思うようになり、譲渡する決断をしたそうです。

北野「焼肉店1店舗だけで買い手さんなんて見つかるの?」

藤原「これが1年以上見つかりませんでした」

それには他にも理由がありました。M&Aでは個人が経営する1店舗の承継はわりとあるのですが、このお店は不動産込みの価格設定だったのです。

北野「オーナーさんの持っているお店がまんま不動産の価格になるわけか」

藤原「しかも駅近でもあったので数千万かかると」

藤原さん曰く、個人ではなかなか手が出ない価格ですが、かといって法人が買うかというと、1店舗だけなのでドミナント戦略(地域を絞って集中的に出店する手法)も難しいとのこと。

北野「5店舗くらい持っていたら、そのままチェーン店化できるんやけどな」

日銭商売のありがたさ

最終的には飲食事業に興味のある異業種の法人が手を挙げたそうです。買い手はどんな会社なのでしょう?

藤原「飲食店未経験だけど、年商15億円ほどの自動車部品輸出業をされている会社」

北野「なんと、異業種にもほどがある(笑)」

なぜ異業種で、しかも1店舗の焼肉店を継承しようとしたのでしょうか?

理由は、もともとこのお店がグルメ評価サイトでも点数がよかったこと。買い手が直接食べに行ってもおいしかったそうです。

さらに立地もよく、不動産も自社所有になるため自由に改装できるところもポイントだったと藤原さんは言います。

藤原「それともう一つ、輸出業は部品を仕入れて海外に輸出して販売して現金化するまでにめちゃくちゃ回転が遅い。
当時コロナ禍だったので、さらに現金が滞って精神的に不安だったと。その時に飲食で日銭が入ってくる方が精神状態にいいと」

「日銭商売だからね」と納得の北野。「そういう理由があるんだな」と藤原さんにも気づきがあったそうです。

双方のメリット

その後の継承はスムーズに進んだのでしょうか?

藤原「トップ面談のあとはとんとん拍子に話が進み、(交渉スタートから)3か月後に成約完了」

北野「自動車輸出の会社に飲食できる人はいたの?」

案の定、買い手の会社には飲食経験者がおらず、「誰がやるの?」と大問題になったそうです。

藤原「でも、料理好きの財務責任者の女性の方が、気づいたら秘伝のタレを継承していた(笑)」

継承後、売り手は売却資金で新しく飲食店を始めたそうです。
買い手も輸出業をしているので、将来的には「日本の焼肉屋を海外に広げていくんだ」と藤原さんに夢を語っていたそうです。

北野は「1店舗だけだからといってM&Aができないわけではないんだ」と再認識したようです。
(野村)
 
北野誠のズバリ「カイシャのシュウカツ」
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2024年04月10日14時50分~抜粋

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