北野誠のズバリ「カイシャのシュウカツ」

50代で調剤薬局を事業承継。売り手が「第二の人生」に選んだ意外な職業

昨今少子高齢化により、中小企業や小規模事業者の後継者不足などが大きな経営課題のひとつとなっています。承継する人がいない場合は廃業するしかないと考える経営者もいます。

CBCラジオ『北野誠のズバリ』のコーナー「カイシャのシュウカツ」では、事業承継について、専門家をゲストに多方面から学びます。

2月14日の放送では、中国地方で調剤薬局を営んでいた会社のM&A事例を北野誠と松岡亜矢子が三井住友トラストグループ 株式会社経営承継支援・はじめ部長の藤原秀人さんに伺いました。

[この番組の画像一覧を見る]

調剤薬局のM&Aブームは終わらない

今回藤原さんが紹介したのは、中国地方で調剤薬局を営んでいた会社の事例。

北野「調剤薬局はたびたび出てきますが多いんですか?」

「多いです」と藤原さん。
2005年くらいから、M&Aの業界に携わっているという藤原さんですが、2010年頃から調剤薬局のM&A取引が盛んになったと振り返ります。

最近も、大手ドラッグストアの業界再編が進んでおり、売り上げ上位同士によるM&Aが行われ、報道でも取り上げられていたそうです。「調剤薬局業界のM&Aはブームは過ぎるだろう」と言われていたそうですが…。

藤原「M&Aの仲介会社が力を入れているのと、最近は薬局の薬剤師さんが直接、仲介を通さずM&Aをやっているというところで、これからもニーズはあります」

母数が多いのと、ビジネスとしてわかりやすく、ニーズが安定しているので、最近は個人で独立したい方が増え、M&Aマッチングプラットフォームをはじめチャットでも調剤薬局の相談は多いそうです。

50代、年商3億なのにM&Aする理由

売り手の調剤薬局はどんなお店だったのでしょう?

藤原「50代の経営者で、調剤薬局を2店舗経営。年商は3億円ということで、決して経営が悪化していたわけではありません」

経営が順調だったのに、なぜM&Aの選択をしたのでしょう?

藤原「薬局業界の今後をすごく不安視されていました」

薬局の調剤報酬の改定は2年に1度おこなわれています。
総合病院の面前にあるような特定の医療機関からの処方箋が大半を占める調剤薬局だと、高額な報酬を下げる改定があるなど、国からの是正が求められているとのこと。

さらに個人だと、なかなか薬剤師を採用できないということも大変だったそうです。

北野「いま薬剤師さんは不足しているんですよね?」

藤原「はい。人材確保のためのM&Aというのもあります。譲り受けたい会社からも『薬剤師は何人残ってくれるのか』という質問がありました」

水面下でM&Aする調剤薬局も

今回の買い手はどんな会社だったのでしょう?

藤原「5社ほど手を挙げられていました。その中から好条件の売上100億以上の大手調剤薬局グループに株式譲渡をされました」

北野「100億円以上の会社が小規模会社に興味を持つの?」

調剤薬局の基本的なビジネスモデルは店舗を増やすことですが、新規店舗出店のために営業さんが立地や空き店舗を探し、薬剤師を確保し、そこから売上を上げていくのは時間がかかる、と藤原さんは話します。

藤原「M&Aで既存店舗を譲り受けるとすぐに売り上げが見込めるし、M&Aの手法で言われる『時間を買う』ことが可能に」

北野「よく、ここのドラッグストアがなくなったなと思ったら、絶対次もドラックストアが入る。チェーン店でどんどん変わっていく」

中には、屋号を変えずに、水面下でM&Aをしていることもあるそうです。

前職の知見を活かし第二の人生

売り手の方はM&Aの後、何をしているのでしょう?

藤原「実は、個人経営で『ドッグカフェ』を始められたんです」

今までの薬剤師の知見を活かして、漢方系のプレートランチの提供をするなど工夫をしているそうです。

北野「おもしろいセカンドライフやっているな。僕なんか『50代で売るの?』なんて思っていたけど、先見の明だね」

50歳で年商3億の売り上げがあれば続けたいと考える人が多い中、M&Aをして第二の人生をスタートさせた売り手に尊敬の目を向ける北野。
M&Aも売り時のタイミングが重要だとわかる今回の事例でした。
(野村)
 
北野誠のズバリ「カイシャのシュウカツ」
この記事をで聴く

2024年02月14日14時49分~抜粋

関連記事

あなたにオススメ

番組最新情報