北野誠のズバリ「カイシャのシュウカツ」

デジタル技術を活用・養豚業を継承したIT企業の目的とは?

昨今少子高齢化により、中小企業や小規模事業者の後継者不足などが大きな経営課題のひとつとなっています。承継する人がいない場合は廃業するしかないと考える経営者もいます。

CBCラジオ『北野誠のズバリ』のコーナー「カイシャのシュウカツ」では、事業承継について、専門家をゲストに多方面から学びます。

2月7日の放送では、中四国地方で養豚業を営んでいる会社のM&A成約事例を北野誠と松岡亜矢子が三井住友トラストグループ 株式会社経営承継支援・はじめ部長の藤原秀人さんに伺いました。

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いまの日本の養豚業

今回藤原さんが紹介したのは、中四国地方で養豚業を営む会社の譲渡事例。

農林水産省のデータによると、養豚農家の数のピークは昭和37年(1962年)の100万戸でしたが、令和4年には3,590戸まで減っています。

北野「絶対飼料高いもん」

減少の理由としては、飼料高騰や人手不足・後継者不足などのようです。

今回の譲渡事例の会社は、年商2億円ほどの養豚会社です。主に養豚場と餌の販売の2事業を経営しています。
事業承継もされていて、後継者として息子さんもいるそうです。

北野「後継者として息子さんは継いでいた、でもM&A。どういうことなの?」

藤原「従業員さんの高齢化が進んで、取引先の廃業が相次ぎ、売上が減少していました。その中で事業の先行きが不安だと。将来の(父親など)健康面のリスクも考慮してM&Aをしようと」

買い手は異業種のIT企業

養豚業のM&Aについて「珍しいのでは?」と藤原さんに尋ねる北野。

藤原「(この仕事を)20年やっていて初めて。この市場自体はシステム化されている会社って一部あるんですけど、基本的にはなかなか設備投資されていないマーケットです」

従事する方の高齢化もあり、新たに借金をして設備投資しようという体力を持っている業者も少ないとのこと。

この養豚業者の買い手はどんな会社だったのでしょうか?

藤原「AI技術を用いたシステムを自社開発されている、九州のIT企業が名乗りを上げました」

意外な業種からのアプローチに驚く北野、その理由を尋ねます。

藤原「家畜や農業でのDX、つまりデジタル技術の活用が進んでいない領域でした。自社で養豚事業を抱えることにより、個別データの収集や養豚事業の課題を解決できます」

自社のAI技術を養豚業に活かすビジネスを展開し、海外にもそのシステムを販売していきたいという展望があったそうです。

北野「そのIT企業の社長はいいですけど、現場の方は養豚場にいくわけですよね?」

藤原「M&A後、今までオフィスでIT企業の社員として働いていた方が、養豚場に行くと、数カ月後には肌が真っ黒になっていたとか」

社員たちは現場で楽しく仕事に取り組んでいたそうです。

事業すべてを売らなくても成立するM&A

ちなみに養豚事業は譲渡されたものの、餌の販売事業はそのまま経営しているとのこと。

北野「事業すべてを売らなくても成立するM&Aってあるんやね」

「必ずしも全部の事業を譲渡する必要はない」と言う藤原さん。

藤原「ブランドの豚さんを育てるには『餌』が大事であり、餌の販売事業は、息子さんが別の会社を設立して行うことにしました」

その作った餌をIT企業に養豚場(飼育事業)として買ってもらうというシステムを作ったのです。

北野「なんで新しく会社を設立したの?」

藤原「すべてを手放してしまうと、社長さんはやることがなくなって寂しい思いをします。あと息子さんが今回残らないというケースだったので、働き口を確保するために設立しました」

M&Aの場面では、事業を細かく分けて譲渡することもあるようです。
IT企業がAI技術を用いてDXを試したいという理由で養豚業を承継という今回のケース。「これが事業計画にあったというのがすごい」と感心する北野でした。
(野村)
 
北野誠のズバリ「カイシャのシュウカツ」
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2024年02月07日14時50分~抜粋

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