北野誠のズバリ「カイシャのシュウカツ」

親子2人だけのメーカーを上場企業が事業承継した理由

昨今少子高齢化により、中小企業や小規模事業者の後継者不足などが大きな経営課題のひとつとなっています。承継する人がいない場合は廃業するしかないと考える経営者もいます。

CBCラジオ『北野誠のズバリ』のコーナー「カイシャのシュウカツ」では、事業承継について、専門家をゲストに多方面から学びます。

1月31日の放送では、関西の親子2人で経営していた特殊工具製造メーカーのM&A成約事例を北野誠と松岡亜矢子が三井住友トラストグループ 株式会社経営承継支援・はじめ部長の藤原秀人さんに伺いました。

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最初は偽名で問い合わせ

今回藤原さんが紹介したのは、関西の特殊工具製造メーカーの譲渡事例。
特殊部品を取り扱うとのことですが、どのような会社なのでしょう?

藤原「もともと親族内で経営していたんですけど、仲たがいをしてしまいまして…」

北野「しますねぇ」

藤原「そこの最高技術責任者だった方が独立されました」

独立後は、国内でも数社しかない特殊な製品を、親子2人だけで作っていたそうです。
技術の責任者だったので、もともと勤めていた会社よりも高品質な製品を開発していました。
そもそも藤原さんは、この会社とどうやって出会ったのでしょうか?

藤原「社長が高齢になり、親子2人ということで、息子1人でやらせるのは将来不安だと思いHPから直接お問合せをいただいた」

とても慎重な社長で、最初は偽名での問い合わせだったそう。

藤原「『会社を売る』ということを、ネットで知らない会社に問い合わせるって、結構センシティブなので偽名で連絡される方は多い」

「それはわかる」と同意した北野は自宅の査定の際、偽名で依頼したことがあると明かします。

決め手は息子の語学力?

その後、複数のM&A仲介会社と面談した結果、藤原さんの所属する団体に依頼することになりました。
このメーカーが独立した当初は、どのような経営状況だったのでしょうか?

藤原「もといた会社との関係もあり、国内の売り上げを伸ばすことがしんどかった」

そこで、息子さんが英語教師を辞めてお父さんを助けることを決断、2人だけで経営することになりました。
この息子さんの英語教師という経歴が役に立ちます。

藤原「海外に行こうと。全くのゼロから(海外の)大手企業に連絡しまくって、20か国との取引が成立し、急に高利益の会社になった」

北野「それはすごい!」

しかし高利益率をあげていても、社長である父親は自分の引退後が不安でした。

藤原「今後は大手企業の傘下に入りたいと」

上場企業はすぐに興味を持ったのでしょうか?

多数の上場企業に声をかけましたが、受付で門前払いされ、提案すらできませんでした。
そこで藤原さんたちは、ある上場企業のHP、中期経営計画書、有価証券報告書等の情報をもとに社長へ提案書を送ったそうです。

その結果、その会社の経営企画担当者から「面白そうだ」と連絡をもらい、話が進んだそうです。

会社規模ではなく取引実績

北野「よく上場企業がM&Aしましたね」

藤原さん「規模というより(海外の)大手会社のルートですね、20か国って結構取りづらいらしくて」

買い手企業は、海外の大手商社とのルートや20か国以上の取引実績が非常に魅力的だったことと、経営計画書に「今後の成長戦略として、既存製品以外の分野に積極的にチャレンジしたい」と書かれていて、特殊製品の将来性にも興味を持ったそうです。

現在この会社はどのような状況なのでしょう?

藤原さん「M&A自体、特許の取り扱いなど苦労したのですが、無事成約して、息子さんは(買い手の)上場企業に入って、会社の体制も整ってきた」

買い手企業としてもルートが広がりました。売り手の社長は、自社製品を円滑にかつ大量に製造できる力を持つ企業と提携できて喜んでいるそうです。

北野「2人だけの会社を上場企業がM&Aする、なんてことも実際にあるんですね!」

父親を助けたいという息子さんの気持ちから、海外進出で新規ルートを開拓して高利益に変貌。さらに大手企業から2人だけの会社をM&A。
滅多にない今回の事例に心底驚く北野でした。
(野村)
 
北野誠のズバリ「カイシャのシュウカツ」
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2024年01月31日14時48分~抜粋

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