北野誠のズバリ「カイシャのシュウカツ」

廃業準備中の社長がM&Aへ翻意。心を動かした言葉とは?

昨今少子高齢化により、中小企業や小規模事業者の後継者不足などが大きな経営課題のひとつとなっています。承継する人がいない場合は廃業するしかないと考える経営者もいます。

CBCラジオ『北野誠のズバリ』のコーナー「カイシャのシュウカツ」では、事業承継について、専門家をゲストに多方面から学びます。

1月10日の放送では、愛知県の自動車部品の製造加工会社のM&Aについて、北野誠と松岡亜矢子が三井住友トラストグループ 株式会社経営承継支援・はじめ部長の藤原秀人さんに伺いました。

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廃業する気満々だった社長

今回藤原さんが紹介したのは、会社を譲渡した愛知県の自動車部品製造加工会社のM&A事例です。

藤原さん「自動車関連の部品の製造加工をされていて、年商でいうと1億円くらいで、従業員10名くらいのプレス加工の会社」

藤原さんが話を伺った時には、廃業の準備をしていた状況でした。

北野「完全に社長は廃業する気満々だったんですか?」

藤原さん「はい」

廃業する気だったのに、なぜM&Aをすることになったのでしょう?

すでに取引先や従業員、顧問税理士にも廃業と話していたところ、地元の取引金融機関の担当者から「廃業前にM&Aを検討してみてはどうか?」との提案がありました。
そして、その取引金融の担当者から藤原さんが所属している会社に相談が来たそうです。

熱量が低い状態からのスタート

社長とM&A担当者で面談した時には、廃業に向けて従業員の退職準備や、取引先の協力会社探しの最中でした。

北野「社長も金融機関に言われたけれど、全然やる気がない?君ら来てくれているけど、もう辞めるし…って?」

藤原さん「実はめちゃくちゃ低い状態からのスタートでした」

社長自身M&Aを選択する意識がなく、熱量が極端に低い状態からのスタートだったそうです。
そんな状況でM&Aの話は進んだのでしょうか?

藤原さん「社長も『半年以内に相手先が見つからなければ廃業する』ということだったので、M&A担当者も時間との戦いでした」

北野「半年って意外とあるようで短い」

ところが、初回の面談から1ヶ月で、奇跡的に譲り受けたいという会社が見つかったのです。

継続価値の見直し

譲渡を希望したのはどんな相手だったのでしょうか?

藤原さん「こちらも愛知県で住宅設備の製造加工をしている、めちゃくちゃ元気な若手社長」

会社の売り上げは10億円弱ですが、その5%が自動車関連ビジネスに携わっており、このM&Aをきっかけに事業拡大を目指していたそうです。

北野「やっとこさ廃業一本槍だった社長が、ちょっとずつM&Aに真剣に?」

藤原さん「面談を重ねていくうちに、従業員の雇用を守るだとか、取引先との受注継続できるということで、やっぱり残した方がいいのかなって心変わりしてきました」

北野「プレス加工だから、機械自体ももったいないよね」

「廃棄するくらいだったら、継続価値で引き継ぐのはとてもいいこと」と話す藤原さん。

合併&買収でなく仲間&提携

この案件で会社を引き継ぐ調印式の時「引き継いだ側の若手社長の言葉が忘れられない」と藤原さん。

M&Aとは、MはMergers(合併)、AはAcquisitions(買収)との略語です。買収にはどうしてもネガティブなイメージを持たれますが、若手社長の解釈は違いました。

「私は買収したとは考えておりません。私は、Member & Alliance、つまり『仲間と提携』と考え、仲間が増えたと思っています。みなさんも対等な立場で一緒に協力していきましょう」

上から目線ではなく、仲間として対等にやっていこうと話したのです。売り手の社長も、この言葉をとても喜んでいたそうです。

その後、営業もうまくいったのでしょうか?

藤原さん「営業も買い手さんと一緒に増えていきましたし、譲り受けた会社も内製化(外部に委託していた業務を自社で行うこと)もできることによって、いいシナジーが生まれた」

中小企業のM&Aの成功の秘訣は、成約後いかに友好的な関係になるかが大切といわれています。今回はそれがまさに言葉に表れた案件でした。
(野村)
 
北野誠のズバリ「カイシャのシュウカツ」
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2024年01月10日14時49分~抜粋

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