北野誠のズバリ「カイシャのシュウカツ」

老舗和菓子店と人気スイーツ店、評価額が高いのはどっち?

昨今少子高齢化により、中小企業や小規模事業者の後継者不足などが大きな経営課題のひとつとなっています。
CBCラジオ『北野誠のズバリ』のコーナー「カイシャのシュウカツ」では、事業承継について、専門家をゲストに多方面から学びます。

12月27日の放送では、中部エリアの和菓子屋さんを譲り受けた「事業承継ファンド」のM&Aについて、北野誠と松岡亜矢子が三井住友トラストグループ 株式会社経営承継支援・はじめ部長の藤原秀人さんに伺いました。

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創業200年!老舗の和菓子屋さんの承継は難しい?

今回のM&A事例は、中部エリアの和菓子屋さんを譲渡した会社と、この和菓子屋さんを譲り受けた事業承継ファンドについてです。

譲渡した会社はどんな和菓子屋さんなのでしょうか?

藤原さん「200年以上の歴史を誇る老舗の和菓子屋さん。後継者がいないと、でも長い歴史を引き継ごうとM&Aを選択しました」

北野「老舗の和菓子屋さんのM&Aは、なかなかハードルが高いのでは?」

この問いに「実際難しかった」と答える藤原さん。

その理由は、和菓子店側が「歴史と伝統」までを評価してほしいと望んだこと。
経済的な合理性だけではなく「感情的」な部分まで含まれるからです。

老舗と伝統、社長の強い思い

藤原さんが言う「感情的」というのは、どういうことなのでしょうか?

まず「老舗」ということ。歴史的価値を評価して、譲渡金額に反映して欲しいという思いです。
続いて「職人の技術」にこだわること。和菓子は大量には作れない小ロットのため、すぐに利益が出るものではありません。

北野「でも、買い手はすぐに利益を望みますよね?」

藤原さん「例えば『創業100年の老舗和菓子屋で利益が1000万円出ている会社』と『創業2年の人気スイーツ店で毎年利益が3000万円出ている会社』のふたつだったら?」

北野「そんなの聞くまでもなく(笑)。僕だったら簡単にシュークリームのチェーン店やりますわ。駅前で」

北野が回答したように、事業の観点から見ると、人気スイーツ店の方が企業価値評価額は高くなるケースが多いそうです。

やはり和菓子屋の場合、味や技術、伝統も含めたM&Aは難しいのでしょうか?

M&Aを仲介する立場から、「理論的な価値」と「社長の感情的な価値」の双方を汲み取りつつ大事なことを語る藤原さん。

藤原さん「何よりも『お店を残す』という、本来の目的に立ち返るために努力をしていく」

譲り受けたのは地元のファンド

このような状況で名乗りを上げたのは、どんな会社だったのでしょう?

藤原さん「譲り受けたのは、事業承継ファンドなんです」

北野「個人と個人を仲介したのではなくて、ファンドに?」

事業承継ファンドとは、後継者不在に悩む中小企業にプロの経営者を送り込み、成長支援を行うファンドのことを指します。

藤原さん「今回の買い手は、地元の税理士の先生だとか金融機関が『地元の伝統ある事業を守るぞ』ということで、お金を集めて立ち上げたファンドです」

買い手となった事業承継ファンドは「地元の企業による、地元の企業や人のための」というモットーを掲げており、地元金融機関や会計事務所等が出資者となり、地元の伝統ある老舗企業を守る目的で活動しています。

お互い得意な力を出し合って

この事業承継ファンドは和菓子屋さんを譲り受け、プロの経営者を送り込むことになったそうです。

北野「プロの経営者言いますけど、創業200年の和菓子屋をやったことはないと思いますよ?」

藤原さん「伝統的なところは既存の経営者さんから教えを請いながら、財務面や管理面はプロが調整して一緒にやっていく」

M&Aの結果、従業員から「働きやすくなった」との声を聞いているそうです。

北野「成長戦略が描けるんだね」

藤原さん「店舗を拡大するとか、株価を上げていかなくてはいけないので、今後考えていくと聞いています」

地元の事業承継ファンドが和菓子屋の想いをかなえ、利益増加の支援をしたことに「こんなM&Aの形もあるんだ」と感心する北野でした。
(野村)
 
北野誠のズバリ「カイシャのシュウカツ」
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2023年12月27日14時45分~抜粋

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