北野誠のズバリ「カイシャのシュウカツ」

同業他社を高値でも購入?深刻なドライバー不足とM&Aの意外な関係

昨今少子高齢化により、中小企業や小規模事業者の後継者不足などが大きな経営課題のひとつとなっています。
CBCラジオ『北野誠のズバリ』のコーナー「カイシャのシュウカツ」では、事業承継について、専門家をゲストに多方面から学びます。

12月20日の放送では、愛知県にある後継者がいない運送会社のM&Aについて、北野誠と松岡亜矢子が三井住友トラストグループ 株式会社経営承継支援・はじめ部長の藤原秀人さんに伺いました。

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年商5億でも後継者がいない

今回紹介する事例は、愛知県でのM&Aです。

北野「譲渡するのはどんな会社なんですか?」

この会社は愛知県で雑貨などを運送している運送会社。年商約5億円の規模で、創業60年という老舗です。
しかし承継を考えた時に、後継者が社長の親族内で見つからずに困っていたそうです。

北野「どのような流れで買い手さんを見つけたんですか?」

この運送会社が取引していた銀行から同業者に「同じような雑貨を運んでいる会社があるよ」と声をかけてもらったところ、買い手が現れました。

北野「買い手も同じような愛知県の運送業者?」

藤原さん「まったく同じ運送会社で、ただ規模としては年商10億くらいなので、2、3倍くらい大きいです」

運送業の深刻な課題は

M&Aの中で、運送会社は人気なのでしょうか?

藤原さん「中小企業のM&Aの中では相談の多い業界。企業が一緒になることでシナジー(相乗効果)がある事例です」

そんな運送業界ですが、現在ドライバー不足が懸念されています。
藤原さんも「2024年問題ともいわれているほどの課題」と語ります。

北野「運送会社同士でM&Aしたら、ドライバー不足を補えるという側面はある?」

「ドライバーを確保することができる」とメリットを語る藤原さん。

国土交通省の調べでは、トラックドライバーを全産業と比較すると、年間労働時間は約2割長いにも関わらず、年間所得額は1割ほど低くなっています。
その結果、有効求人倍率は約2倍と求人過多で、深刻な社会問題となっています。

売り手と買い手の希望価格の差

北野「(買い手は)すぐ合致はしたんですか?」

藤原さん「それが、財務状況もよかったので、すぐに見つかるかと思っていたのですが、逆に財務がよすぎて、社長の希望金額が高くて…」

「意外と苦労した」という藤原さん。

北野「『ウチは赤字も出していないし、これくらいで買い取ってもらいたい』と。そういう時はどうするんですか?」

こういう場合は、希望金額を理論値に近づくように交渉するか、希望金額に納得できる買い手企業を見つけるかになると藤原さん。

藤原さん「今回の社長は強気で『数年売らない』とかなっていたんですけど、結果的に希望金額で交渉してくれる方が現れました」

藤原さんによれば、売り手と買い手の希望金額や条件に差があると、売り手側が「すぐに売る必要はない」と言い出す場合があるようです。

ドライバー確保と売り上げの安定

藤原さん「こういう時は、『すぐに売ろう』となるのではなくて、社長のニーズに合った相手先を探すということは常にやっています」

今回の運送会社のM&Aは、県内の運送業者との間で9ヶ月後に完了しました。この譲渡は結果的にお互いによかったのか尋ねる北野。

藤原さん「譲渡した会社には大手企業との取引があったので、買い手も安定的な売り上げが立つということと、ドライバーの確保、営業エリアの拡大」

先方から「いいことづくめだった」と聞いているという藤原さんに、北野も「よかったですね」と安堵しました。
(野村)
 
北野誠のズバリ「カイシャのシュウカツ」
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2023年12月20日14時45分~抜粋

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