北野誠のズバリ「カイシャのシュウカツ」

自宅敷地内にある工場を売却したい!そんな時の3つの方法

昨今少子高齢化により、中小企業や小規模事業者の後継者不足が大きな経営課題のひとつとなっています。
CBCラジオ『北野誠のズバリ』のコーナー「カイシャのシュウカツ」では、事業承継について、専門家をゲストに多方面から学びます。

11月1日の放送では、リスナーから「自宅敷地内に工場がある場合の会社売却」について相談のお便りが届きました。北野誠と松岡亜矢子が三井住友トラストグループ 株式会社経営承継支援・はじめ部長の藤原秀人さんに伺いました。

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設備と知見を無駄にしたくない

鉄鋼業を営むAさんから「会社の売却」についての相談です。

「私の家は南区で鉄工所を60年余りやっています。コロナ融資で三千万の借金をして設備投資をしましたが、僕にはこどももいないこともあり、僕の代で終わらせようと思います。

将来のM&Aについてですが、うちの会社は、自宅の敷地内に工場があるので会社を売却するにしても、自宅の敷地に他人が出入りするのも違和感がありますし、今は昔のように、やればやるだけ儲かる時代でもないので、買う人がいるのかも不安ですし、事業承継といってもなかなか踏み切れないのが本音です」(Aさん)

北野「自宅の敷地に工場やお店があって、M&Aを躊躇するケースは?」

藤原さん「多いです」

自宅兼お店や工場という形で、2階や最上階、敷地内に自宅があるケースが多くAさんのようにM&A前の段階でためらう方もいるそうです。

北野「こういった場合でも、廃業するよりM&Aの方がいい点があるの?」

藤原さん「Aさんのように、3,000万円の借金をしてしまった場合、返済目途がついていないと、なかなか廃業しづらい」

また、投資をした設備の使い方など、従業員の知見がたまっているのも無駄になってしまいます。M&Aでは、譲受先が借金を引き継ぐだけでなく、従業員の知見も引き継げることに意義があると藤原さんはいいます。

引っ越しOKかNGか

北野「自宅兼工場の場合、M&Aはどういう方法が?」

藤原さん「引っ越しができるか、できないかの視点で見ていきます」

「引っ越しNGの場合」は、事業譲渡と呼ばれる手法を用います。逆に、「引っ越しOKの場合」は、株式譲渡と呼ばれる手法を用います。

まず引っ越しNGで用いる事業譲渡の場合は、土地や建物を売らずに、事業に必要なひと・ものを移していく手法です。
工場用地が見つかった後に、売り側の設備や従業員を含めて事業を移していきます。

注意点は、買い手が近くにいれば、従業員や工場も移せますが、県外など遠い場合は工場を探してもらうなど手間が掛かかると藤原さん。

北野「引っ越しOKで用いる株式譲渡は、具体的にどういうことがあります?」

藤原さん「売り手が買い手の子会社となります」

引っ越しOKの場合、株式が譲渡されるので、借金から建物全部を包括的に移転させる手法となり、自宅兼工場の土地を含め、買い側にすべての資産を売却します。
土地がなくなってしまうので、株式を売った資金を元手に、新居を購入する必要があります。
そのため家が買えるくらいの資金で会社の株式を売却できない場合はおすすめできないとのこと。

土地に思い入れがある場合

北野「引っ越しはOKでも、土地を売却したくない場合は?」

藤原さん「土地は手放したくない、という方は結構いらっしゃる」

土地を売却したくない場合は、売り手の不動産事業と製造事業を分けます。

製造事業だけを買い手に引き継いでもらい、自宅は引っ越して、買い手に工場用地を貸出し、賃料を得るという選択もあると藤原さん。
土地の売却のように、まとまったお金は入りませんが、継続して収入を得ることができます。

北野「この不況下の中、M&Aの需要は伸びている?」

調査機関のM&A統計によると、コロナ禍期間を除くと、毎年M&A成約件数が伸びており、2010年は約1500件であり、2022年4000件と2.6倍くらい増えています。

北野「過渡期迎えてぼちぼち辞めたいなという人も増えてきたのでは?」

増えてきていると答える藤原さん。
さらに2023年から始まったインボイス制度についても、北野を含め周りには「めんどい」と嘆く人が多いそう。そのような意味でも今後M&Aは活発していく可能性が高いと予測しました。
(野村)
 
北野誠のズバリ「カイシャのシュウカツ」
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2023年11月01日14時48分~抜粋

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