北野誠のズバリ「カイシャのシュウカツ」

金額よりも想い、薬局をサラリーマンに格安で託した承継者の理由

昨今少子高齢化により、中小企業や小規模事業者の後継者不足が大きな経営課題のひとつとなっています。

CBCラジオ『北野誠のズバリ』のコーナー「カイシャのシュウカツ」では、事業承継について、専門家をゲストに多方面から学びます。

10月18日の放送では「具体的なM&Aの事例」について。北野誠と松岡亜矢子が三井住友トラストグループ株式会社経営承継支援・はじめ部長の藤原秀人さんに伺いました。

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2店舗同時に引き継ぎたい

今回は具体的なM&Aの成約事例として、北海道にある調剤薬局の事例が紹介されました。

北野「売れ上げはどのくらいあったんですか?」

藤原さん「(北海道内)2店舗の譲渡なのですが、2億円弱」

第三者承継M&Aの手法はいくつかあるのですが、大きく分けると「株式譲渡」と「事業譲渡」の2つがあります。
この調剤薬局では株式譲渡を行い、借金も丸ごとで引き継ぐことになり、2店舗同時に個人の方に譲渡しました。 

北野「どんな方経営していたんですか?」

藤原さん「オーナーは女性の方。高齢になって跡継ぎを探していたケース」

譲渡条件が決められた理由

2店舗同時に譲渡するのは、珍しいことなのでしょうか?
「大手企業だとよくあるケースですが、個人の方を対象としてはあまり事例がない」と藤原さん。さらに…。

藤原さん「今回、譲り受けた人は個人、サラリーマンで独立しようという方。1店舗でも大変だと思うんですが、2店舗…」

譲り受けた人も、最初はとても悩んだそうですが、開業への思いと、周囲の後押しがあり決断したそうです。

北野「調剤薬局を譲渡するにあたって、条件などはあったんですか?」

藤原さん「大手ではなく、独立開業される個人に引き継いでほしいと」

北野「大手だったら、楽々引き取るところもあっただろうに…」

藤原さんもこの条件が揃う方がなかなか見つからなく、苦労をしたそうです。
なぜ、そのような条件を出したのでしょうか?

藤原さん「この町に若者が来て、移住してもらいたいと」

北野「過疎化が進んでいるから…」

オーナーの地元を愛する強い思いからの条件だったのです。

「あなたの払える金額で」

譲渡を受けた人に苦労はあったのでしょうか?
今回譲り受けた人からの話によると、譲渡そのものはトントン拍子で話が進んでいったようですが、以前に働いていた会社を辞める時期と、資金調達を始めるタイミングの調製が難しかったとのこと。

譲渡資金は、2店舗同時ということもあり、評価額1億円ほどと金額が大きくなりました。

北野「1億円は現金キャッシュで、いきなりドンですか?」

藤原さん「サラリーマンをしていた方はそれは無理だと『分割にしてくれ』と言ったところ、そのおばあさま(オーナー)はすごくいい人で『あなたが払える金額一括でいいよ』と値段下げてくれた」

結果的に半額近くまで金額を下げてもらい、一括で支払いできる範囲で金額調整をしてくれたそうです。
さらに、専門家である藤原さんのアドバイスにより、買い手側は実質1/4以下の現金で支払うことになり、金融機関からの借り入れもなかったとのことです。

働いていた従業者の雇用はどうなる?

2店舗で勤めていた人たちはどうなったのでしょうか?

藤原さんによれば、一部の方は辞めたそうですが、基本はそのまま継続して働いているとのこと。
中小企業のM&Aは、乗っ取りではなく、友好的に進んでいくことが多いと言います。

北野「従業員としてはトップが変わるわけだから、不安は不安だよね」

藤原さんは譲り受けた人に会いに行ったそうで、周りの人たちと常にコミュニケーションをとる、とてもまじめな方だったといいます。

藤原さん「半年後くらいには和気あいあいとしていて、良かったなと思った」

調剤薬局を守りたいというより、地域を守りたいという意識が強かったオーナーの承継に「こんなM&Aもあるんだ」と驚く北野でした。
(野村)
 
北野誠のズバリ「カイシャのシュウカツ」
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2023年10月18日14時48分~抜粋

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