小堀勝啓の新栄トークジャンボリー

不朽の名作『2001年宇宙の旅』、ここだけが残念

1968年(昭和43年)に公開された、スタンリー・キューブリック監督の映画『2001年宇宙の旅』。
科学的な知見に基づいたリアルな映像と斬新な演出で、初公開から55年経った今も「SF映画のバイブル」として語り継がれています。

6月18日放送のCBCラジオ『小堀勝啓の新栄トークジャンボリー』では、パーソナリティの小堀勝啓がこの不朽の名作を解説します。

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何が始まるの?

映画はリヒャルト・シュトラウス作曲「ツァラトゥストラはかく語りき」で幕を開けます。

小堀「原題は『2001 : A Space Odyssey』。宇宙叙事詩とも言います。人類創生から宇宙への旅。そしてその後に至るという壮大な映画です。

この音楽で映画が始まると、人類登場以前の世界、類人猿の時代です」

バクのような動物と果実を食べる類人猿たち。弱肉強食の世界。他のグループの攻撃にも心配しながらの生活です。

ある時、この類人猿たちが住んでいるところに、真っ黒ですべすべした石でできたような巨大な長方形の物体がそびえています。
字幕では「石黒板」とありますが、実のところ謎の物体です。

人類の進化

小堀「類人猿たちは怖がって遠巻きに見守っています。
そんな中から勇気のある類人猿が一人、恐る恐るこの石黒板に近づいていって、周りのみんなが何するんだ?と見てると、そこに触るんです。触った時にこの類人猿は何かを感じたような感じがあります」

動物の骨を漁る1人の類人猿。ふと手を止めて何かに見入っています。

ここでかかるのがこの「ツァラトゥストラはかく語りき」。

大きな大腿骨を持って振り下ろすと小さい骨が砕けていきます。

周りの骨に向かって次々と大腿骨を振り下ろしていく類人猿。砕かれる骨。その間に挿入される倒れるバクのような動物。
殴り倒されるわけではなく、単に倒れるだけなのですが、それ以上の意味が付いているシーンです。

骨から宇宙船へ

類人猿のグループ同士の抗争で一方的にやられていたオスが、苦し紛れに手を伸ばした先に落ちていた動物の大腿骨を掴みます。
自分を殴っているオスの頭を、この骨で力いっぱい叩きます。

思わぬ反撃に強い方のグループは怯んで形勢逆転。
弱かったオスは太い骨で相手を打倒して、歓喜の雄叫びを上げて、手にした大きな骨をワーッと空に放り投げます。

すると青空をバックにして、画面いっぱいのその骨がゆっくりと弧を描いて回転します。やがて、それがスローモーションになって宇宙船へとオーバーラップしていきます。

この時流れるのが、これもクラシックの名曲のひとつ「美しく青きドナウ」。
宇宙空間を優雅に回転する宇宙ステーションに重なっていきます。

小堀「類人猿が道具を手にして宇宙に飛び立つまでの進化の過程は、この程度の一瞬なんだよと思わせる見事な演出ですよね」

天才キューブリック

小堀「ここからは、原始時代の映像と違って、白くて無機質な宇宙船の中」

宇宙船の船内や宇宙ステーションの様子がリアルに描かれます。
月面では、類人猿たちが触っていた石黒板と同じものが見つかりました。

それを機に人類は木星に向かいます。その宇宙船は高度な知性を備えた"HAL 9000"というコンピューター、今でいうAIが管理しています。

小堀「木星で知的生物に会うのかなと見ているうちに、物語が思いもしない展開になっていって、最後はもうびっくりしますよ」

『2001年宇宙の旅』は今から半世紀以上昔の映画です。

小堀「ですが、いま観ても全く古さを感じさせない映像美、演出。さすが、天才と言われるスタンリー・キューブリックならではの一作になりました」

ここがすごい

小堀「この映画、いくつかすごい点があるんです。ほとんどセリフもナレーションもない。小堀がざっと説明したようなことが映像で描かれていて、それがダレない。テンポもいいです」

もう1つ小堀が挙げたのは、超未来的な映像に対して、使われている音楽が古典中の古典であること。
「ツァラトゥストラはかく語りき」も「美しく青きドナウ」もクラシックの名曲です。

小堀「先進的な映画にクラシックが流れる。これが逆に、半世紀以上経って観ても古さを感じない映画になっています」

ここだけは残念

小堀「ひとつだけ、キューブリックが失敗したなと思う点があります。それはコスチュームデザインです」

1968年当時のスタイルは、ビートルズのようなピタッとしたスーツ。女性だとミニスカートが流行したそうです。
公開間もない1970年の大阪万博でも、コンパニオンの女性の服装が当時の宇宙観を反映していたそうで、その辺にも似ている指摘する小堀。

小堀「そういうちょっとポップなイメージなんですが、ここがいま観るとすごく古いんですよ。昔作った映画だなってなっちゃう。そこが残念だったかなと思います」

この辺は意見の分かれるところです。
『2001年宇宙の旅』は、最近4Kウルトラハイビジョンのより鮮明な映像で蘇りました。

小堀「今はCGでなんでもできる時代じゃないですか。これ、どうやって撮ってるんだ?ってびっくりするような映像があります。
しかも、いま観ても古くない。ぜひ、この機会に観直して欲しいと思います」

『2001年宇宙の旅』を観る際は、小堀が指摘したコスチュームの時代性もぜひ確認してみて下さい。
(尾関)
 
小堀勝啓の新栄トークジャンボリー
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2023年06月18日11時04分~抜粋

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