小堀勝啓の新栄トークジャンボリー

やっぱり日本語の発音は気になる。現役アナウンサーが最近読んだ本

5月14日放送のCBCラジオ『小堀勝啓の新栄トークジャンボリー』では、釘貫亨著『日本語の発音はどう変わってきたか 「てふてふ」から「ちょうちょう」へ、音声史の旅』(中央公論新社刊)を紹介しました。

小堀勝啓が「簡単に読める本ではない」と断じつつ、「じっくり構えて読むとすごく味わい深い」と評したこの本、いったい内容なのでしょうか?

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同じ漢字でもちょっと違う

コーナーは中島みゆきさんの「糸」をBGMに始まります。

日本語の読み方は、例えば「音」という字だと「オン」と読むのが「音読み」。「オト」と読むと訓読みです。

実は中島みゆきさんの書いた「糸」の歌詞、「音読み」がひとつもなく、全てが「訓読み」なのです。

同じ漢字でも訓読みは和語で日本の言葉、音読みは漢語、つまり中国から伝来したものです。さらに同じ漢字でも、昔と今とでは発音が違うそうです。

小堀「最近、研究者もエンタメに寄った研究本を出す方が多いので、読みやすいものが多いんですが、この本ははっきり言って簡単に読める本ではなかったです。でも、とっつきは悪いんですが、じっくり構えて読むとすごく味わい深い本でした」

学術書ともいうべき一冊と言う小堀。本書の内容をわかりやすく説明していきます。

昔は母音が8つ

小堀「我々はいま日本語を五十音で使っています。母音が『あ・い・う・え・お』。この5つで話しています」

そこに子音が付いて、かきくけこ、さしすせそ…となっていきますが、著者の釘貫さんによると、奈良時代には母音は8つあったそうです。

今の母音は5つ。余分の3つは何かと言うと、「あいうえお」に、第二の「い」「え」「お」に当たるべき「うぃ」「うぇ」「うぉ」の音があったんだそうです。

小堀「は行『はひふへほ』は、奈良時代には『ぱぴぷぺぽ』の発音だったと釘貫さんは述べていらっしゃいます。
『母の日』が奈良時代になると『パパの日』になって意味が違っちゃう(笑)」

比べてみると

なぜ録音機もない時代にそんなことがわかるのでしょうか?

釘貫さんの研究では、日本にある漢詩と、ひらがな交じりで書かれた文書を読み比べることで発音の変化がわかったとか。

学校で習った『七言絶句』などの漢詩に打たれた日本式の読み仮名と、『万葉集』をはじめとするひらがなも出てくる膨大な数の古文書を読み比べて、発音を推理していくという地道な研究です。

平安時代、鎌倉時代、室町時代と研究を進めて、戦国時代が近くなってくるとキリシタンの宣教師が入ってきました。

宣教師が日本人から聞いて記述したキリシタン資料を、これまでにあった日本の文書と重ね合わせていくと、室町時代、戦国時代の人たちが地名をどう発音していたのか、判明してきたそうです。

聞くと書くでは違う文字

時代は進んで、江戸時代になってくると、現在の日本語に近い発音になってきたと解説が続きます。
さらに明治時代になると…

小堀「中央政府の新教育制度になって、ほぼ共通語が確立されていきました。そのため、日本語の発音は現代に近いものになっていったということが読み解けます」

例えば「お父さん」と言う時の「オ」と、「○○を」の「オ」は耳で聞くと同じ「オ」ですが、字で書くと「お」と「を」で違います。

昔の名残

耳で聞くと「映画」の「エ」、「○○へ行く」という時の「エ(へ)」は同じ音。しかし字にすると「○○へ」は「へ」と書きます。
「こんにちは」は、「コンニチワ」と発音しますが、「ワ」の部分は「は」と書きます。

同じ音なのに字で書くと違う文字になる言葉は、違う発音だった時代の名残りだと言えるそうです。

小堀「資料が膨大な上に難しいです。僕も何度も読み返しつつ納得していますが、実に興味深い発見がありました。
古代の発音をマスターして、タイムマシンで古代人に会いに行けば、流暢に会話が出来て面白いだろうな。そんなロマンが膨らんだ一冊でした」

難しい内容を何とか説明した小堀勝啓。アナウンサーとして興味がそそられる本だったようです。
『日本語の発音はどう変わってきたか 「てふてふ」から「ちょうちょう」へ、音声史の旅』、ぜひご一読ください。 
(尾関)
 
小堀勝啓の新栄トークジャンボリー
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2023年05月14日11時03分~抜粋

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