小堀勝啓の新栄トークジャンボリー

映画音楽は「屈辱」だった?巨匠・エンニオ・モリコーネのドキュメンタリー映画

映画音楽の巨匠としてイタリアをはじめ、ヨーロッパ映画はもちろん、アメリカ映画の主題曲も数多く作曲して、アカデミー映画音楽作曲賞など数々の名誉を手にしたエンニオ・モリコーネ。

そのモリコーネの最期の5年に密着したドキュメンタリー映画『モリコーネ 映画が恋した音楽家』(ジュゼッペ・トルナトーレ監督)が現在全国で公開されています。

1月29日放送のCBCラジオ『小堀勝啓の新栄トークジャンボリー』では、モリコーネの知られざる名曲も紹介しました。

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現在公開中

「イイっすねー」と小堀。マカロニ・ウエスタン、セルジオ・レオーネ監督の映画『荒野の用心棒』の主題歌で始まりました。リスナーからの投稿です。

「マカロニ・ウエスタン好きの私としては、クリント・イーストウッドと同じようにリスペクトしている作曲家がエンニオ・モリコーネさんです。
『荒野の用心棒』のテーマが流れると、腰にガンベルトをして馬に乗っているような気になってワクワクします」(Aさん)

そしてドキュメンタリー映画『モリコーネ 映画が恋した音楽家』を観たリスナーからも感想が寄せられました。

「ちょうど先週、見てきたとこです。すごい映画作品や監督、アーティストのインタビューがワーッと出て、3時間近くの映画があっと言う間で圧倒されました」(Bさん)

モリコーネを追った映画

エンニオ・モリコーネの足跡を辿ったドキュメンタリー映画が『モリコーネ 映画が恋した音楽家』です。
監督のジョゼッペ・トルナトーレはあの『ニュー・シネマ・パラダイス』を撮った人で、モリコーネを熟知しています。

モリコーネ本人の出演はもちろん、インタビューに登場する顔触れも豪華です。

クリント・イーストウッドはじめとする俳優たちや、クインシー・ジョーンズ、ジョン・ウィリアムス、ブルース・スプリングスティーンといった音楽家、クエンティン・タランティーノといった映画監督など著名人70人ほどが登場します。
上映時間は2時間40分と大ボリュームです。

クラシックの作曲家を目指す

2020年に91歳で亡くなったモリコーネ。映画音楽で主だったものだけでも60曲以上手掛けています。

小堀「さぞかし華麗な映画音楽人生の映画かなと思ったんですが、観ると意外や意外です。モリコーネ本人は映画音楽に関わることは自分にとって屈辱だった。え?屈辱?」

「屈辱」の理由を解説していく小堀。
モリコーネは本格的なクラシック音楽家を目指していた人で、生活のために引き受けたのが映画音楽の仕事だったそうです。

モリコーネの音楽は2倍にも3倍にも映画を良くすると監督たちの間で評判になり、次から次へと依頼が舞い込んできたんだとか。

クラシックから離れた仕事を続け、名声を得た人生を「屈辱」と振り返るのですから驚きです。

楽器は使わない

小堀「彼の作曲方法は文字通り『書く』なんですよ。ペンと紙だけ」

ピアノもギターも使わず、浮かんだメロディーを鼻歌で確認することさえせず、そのままスコアに書いていったんだそうです。

例えば『荒野の用心棒』。ギターのアルペジオのイントロが流れて口笛が入ります。
途中から鞭や鐘の音が流れ、「オッバッバ」という男性コーラス。これが頭の中で流れていて、そのままスコアに書いていたのです。

このギターを担当した人のインタビューによると、ギターを録音したあと、軽く口笛吹いてみてくれない?と言われて吹いたら、ずっと口笛を吹かされて大変だったと振り返ったそうです。そんな裏話も映像に残されています。

なかなか獲れないアカデミー賞

マカロニ・ウエスタンで注目されたモリコーネには、アメリカ映画界からも仕事が殺到します。

『ミッション』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』『アンタッチャブル』…これら名作の音楽を担当して、世界の映画界でも有名になります。
アカデミー音楽賞には何回もノミネートされていますが、作曲賞はなかなか獲れませんでした。

1988年、第60回アカデミー賞では『アンタッチャブル』で受賞が予想されていましたが、作曲賞は『ラストエンペラー』の坂本龍一さんの手に。
映画では、タキシードを着て座っていたモリコーネが、発表の時にがっかりするシーンも収められています。

91歳で亡くなったモリコーネが、アカデミー賞を獲ったのは87歳の時。
作品はクエンティン・タランティーノ監督のウエスタン『ヘイトフル・エイト』です。

タランティーノ監督は「彼こそがモーツァルトでベートーベンで、すごい人なんだ」と語っています。

チャーミングな一面も

一方でモリコーネのプライベートに目を向けると、無類の愛妻家でもありました。
授賞式でも妻への感謝を述べていました。

また仕事ぶりは早寝早起きで完全な朝型。ただチョコレート好きで、ドクターストップがかかっているのに隠れて口にするチャーミングな一面も、映画では見られます。

小堀「『ニュー・シネマ・パラダイス』は映画に対する愛と尊敬を描いた映画。それに寄り添うモリコーネの音楽。
最初は、映画音楽なんて屈辱だと言っていた彼が、映画に捧げて行く過程もわかりました」

モリコーネのツイスト

名曲ぞろいのモリコーネの音楽ですが、小堀が初めて彼の作品を認識してファンになったのはイタリアの青春映画『太陽の下の18才』(1963年・カミロ・マストロチンクェ監督)とのこと。

作品で流れる「サンライト・ツイスト」を書いたのがエンニオ・モリコーネで、作家として初期の仕事です。
この曲を歌っているのはイタリアの歌手、ジャンニ・モランディでした。

小堀「主演がカトリーヌ・スパークという少女。この人がツイストを踊るキュートな姿。これもなかなか人気でした。中学時代、この曲、聴きまくってたなあ」

「サンライト・ツイスト」はツイストですが、イタリア語なので、英語とは違った独特の雰囲気があります。

小堀「この破れたようなサックスの、ジャラチャチャ、ジャラチャチャの始まりで、いきなりエデディデーデバーって歌うのがなんかカッコよくて。こういうキュートなポップスも書くというところがエンニオ・モリコーネのすごさです」 
(尾関)
 
小堀勝啓の新栄トークジャンボリー
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2023年01月29日11時03分~抜粋

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