小堀勝啓の新栄トークジャンボリー

加藤登紀子が盟友とウクライナの人たちのために書いたふたつの歌

シンガーソングライターの加藤登紀子さんが、7月24日放送のCBCラジオ『小堀勝啓の新栄トークジャンボリー』に出演しました。

戦火の中、ウクライナで故郷を追われた人への支援を目指して制作されたチャリティーアルバム『果てなき大地の上に』を5月22日にリリースした加藤さん。
収録された新曲「声をあげて泣いていいですか」と表題曲「果てなき大地の上に」が作られた背景を赤裸々に語りました。

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満月が雲に隠れた瞬間

昨年開催された2020年東京オリンピックですが、加藤さんが現在住んでいるのは会場に近いマンション。
最近「あの人はどうしているだろう?」と空を眺めて過ごす時間が多いんだそうです。

ある時、満月が美しくて暫く佇んで見ていたら、パッと雲で曇った時の事。

加藤「そういうのって対話してるような気持にならない?それで満月がファーッと曇に隠れた瞬間、命がふっとかき消されるみたいに思えて、突然号泣したんですよね」

それが、センチメンタル・シティ・ロマンスのメンバー中野督夫さんの訃報を聞いたばかりの時。
中野さんは、加藤さんをはじめ様々なアーティストのレコーディングやライブに参加していました。

「声をあげて泣いていいですか」は中野さんへの追悼の気持ちで書いたそうです。

歌詞で言えるようになった

人生の終わりを大切に考えるようになったと語る加藤さん。
「声をあげて泣いていいですか」では、「生きているってことは、いつか終わりが来ることだ」と歌っています。

この曲と対になるような本が、一昨年に加藤さんが75歳になって出版した『登紀子自伝~人生四幕目への前奏曲~』(トキコ・プランニング刊)。

本書で加藤さんは、「四幕目は人生を終わるためのクライマックス」と書いています。

加藤「去年、今年と身近な人が亡くなることがあまりにも多くて。終わるんだっていう、心の用意をしておこうという気持ちが、以前よりあるかもね。
だから、こういうことが歌詞でバンって言えるようになったなって思いました」

そして、この歌に込めた思いをこう語りました。

加藤「今夜『この世にサヨナラ』って言ってる人がいるのなら、なんとかその瞬間を抱きしめてあげたいなっていう気持ちがこの歌にはあるんです」

歌を書かせた一枚の絵

「声をあげて泣いていいですか」の歌詞には、「愛する国に、二度と帰れない人に」とウクライナを思わせる箇所もあります。
この曲はオリンピックを見ながら書いたため、偶然そうなったんだそうです。

しかし今年に入り、ウクライナの戦争と重なってきました。
加藤さんに、改めてウクライナの人たちのために歌を書こうと思わせた一枚の絵がありました。

それが王希奇という中国の画家の『一九四六』という作品。
縦3メートル、横20メートルの大作。第二次世界大戦後、日本人がボロボロの難民として、旧満州から船に乗って日本へ帰る時の風景を描いています。

加藤「ピカソがゲルニカを描いたようなものですね。その絵を見た衝撃で書き始めた歌で、ウクライナの人たちの支援の思いで仕上げたのが『果てなき大地の上に』という曲です」
  
ピカソのゲルニカは白黒モノトーンでキュビズム的な手法で描かれた抽象画ですが、王希奇の「一九四六」は灰色を基調とした単調な色使いの写実画です。

自身の体験と重なる

加藤さんは、第二次世界大戦後、1年間は中国大陸で、難民に近い生活をしていました。
その後引き揚げで日本へ帰って来ましたが、終戦後に中国大陸や樺太から帰ってこられなかった人は大勢います。

加藤「何百万人が大陸に残されたっていうことですから。日本の歴史の中では珍しいことですよね。『果てなき大地の上に』っていう曲は、この時の思いを少し重ねています」

様々な理由で始まる戦争ですが、終わってみれば、何のための戦争だったか、誰も説明できないようになると言います。

加藤「国の外に出ていったウクライナの人たちは、戦争が終わったら戻ろうって思ってると思うんだけど、本当に戦争が終わってからの破壊された街で生きていくのは大変です。だから、何があっても戦いがあるっていうのは…」

ウクライナ戦争の後のことも心配する加藤さんです。
(尾関)
 
小堀勝啓の新栄トークジャンボリー
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2022年07月24日10時30分~抜粋

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