12月12日『小堀勝啓の新栄トークジャンボリー』、小堀勝啓の心の琴線に触れたモノを紹介する「コレコレ」のコーナーでは本を紹介しました。
ビートルズフリークの小堀が、先日見つけたという本のタイトルはズバリ『ビートルズ』。いったいどんな内容なのでしょうか?
今までにないビートルズ本
アメリカ音楽の父、フォスターの名曲「ビューティフル・ドリーマー」に乗せて始まりました。「夢見る人」「夢路より」と言う日本語のタイトルがついています。
放送で流れたのは初期ビートルズが演奏したもの。彼らがイギリスのBBCラジオの番組向けに録音したものです。
今回小堀が紹介する書籍は、北中正和さんが書かれた『ビートルズ』(新潮新書)。
著者の北中さんは、雑誌『ニューミュージック・マガジン』(現ミュージック・マガジン)の編集も手掛けた音楽評論家です。
小堀「これまでビートルズに関する本は山のように出ておりますし、僕もいっぱい読みましたし、持ってます。しかし、全くそういう本とは違う視点の本です」
世界史から見るビートルズの故郷
小堀「音楽ファンはもちろんですが、ビートルズとか音楽に興味のない人、特に若い人に読んでもらいたいですね。
この本はビートルズを介して音楽を入り口に、世界史や人類学を地球儀的に捉えながら分析していった名著です」
本著の帯には「世界史の中でビートルズを読み直す」とあります。
例えば、ビートルズの出身地・リバプールは、先日、G7サミットが開かれたイギリス屈指の港湾都市です。
小堀「このリバプールの歴史も書いてあって、この街が開かれたのは1207年。日本で言うと鎌倉時代。世界で言うとチンギス・カンがモンゴル帝国を作った頃。すごい話です」
大航海時代に大発展
時は15世紀半ばから17世紀半ばの大航海時代。
スペイン、ポルトガル、フランス、オランダが海外に植民地を作る中、イギリスも参入。
港湾都市として大発展したのが、マージ―川沿いの小さな町だったリバプールでした。
イギリスは、先行していたスペイン、ポルトガルを追い落として、次々に植民地を手にして行きました。
この時、あの「大英帝国に日の沈む日はない」という言葉が生まれました。例えイギリスが夜になっても、世界中にあるイギリスの植民地のどこかは昼という意味です。
さらにリバプールを発展させたのがアフリカからの黒人奴隷をアメリカに売るという、悪名高い奴隷貿易でした。リバプールは、こうして世界の窓口として様々な文化が入り込む土地になりました。
第二次大戦後はリトルアメリカ
リバプールは、第二次世界大戦後、18,000人のアメリカ兵が駐留するリトルアメリカの様相を呈します。
アメリカ兵の多くが黒人。そのため兵隊クラブやパーティーでジャズやブルースなどの音楽が演奏されていました。
これがやがて基地の外へと広がり、イギリスの若者にも知られるようになります。
小堀「こうしていろんな音楽を取り込む土壌が、リバプールにはできてきたんですね」
つまりビートルズの登場は歴史の必然となるわけです。
手作り楽器でスキッフル
当時のアメリカでは、手作り楽器で演奏される「スキッフル」という音楽が流行します。
ニューオーリンズ・ジャズやジャグが元だという説もありますが、はっきりしないようです。
スキッフルがアメリカの黒人大衆から始まったことは確かなようで、安いギターはもとより、洗濯板を叩いてリズムを取ったり、モップの柄に紐を張って、その下にたらいを置いて共鳴板代わりにしたベースなどが使用されたんだとか。
他にもノコギリやジャグと呼ばれる水差し用の壺、はたまた煙草を梱包していた箱で作ったシガーボックスギターなど、日常にあったものを楽器にしていました。
シガーボックスギターは日本で言うと、空き缶を利用したカンカラ三線のようなもの。
現在でもアメリカのシンガーソングライター、サマンサ・フィッシュが使用しています。
さまざまな音楽が溢れていた
そのスキッフルはやがてイギリスにも入り、スキッフルバンドが多数できたそうです。
実はアマチュア時代のビートルズも、スキッフルバンドの影響を受けていました。
コーナーの冒頭で流れた「ビューティフル・ドリーマー」のカバーは、スキッフルの匂いが残った曲をロックアレンジにしたものなんだとか。
もともとイギリスには土着のスコットランド民謡やアイルランド民謡があり、そこへ終戦後にアメリカからのスキッフル、ジャズ、ブルースが入り、多様な音楽にあふれることになります。
そして、イギリスを含む世界中の若者たちが影響を受けたのが、エルビス・プレスリーのデビューでした。
小堀「ビートルズはそんな複雑な音楽土壌からいろんなものを吸収して、天才的な能力で自分たち流の音楽世界を繰り広げました。
やがて世界の音楽や文化をリードしていく存在になっていった、ということがよくわかります」
検索しながら読んでみよう
今回紹介した書籍『ビートルズ』には、芸能史の側面に関しても多く描写されています。
例えば、かつてアメリカで、白人が顔を黒く塗って黒人を演じたバラエティである「ミンストレルショー」。音楽やコントなどの内容で、アメリカ各地で様々な一座が出来たんだとか。
これもイギリスでの公演をきっかけに大流行。
イギリス人も始めるようになり、ミュージックホールという寄席とライブハウスがミックスされたような場所が生まれました。
ミンストレルショーはやがて舞台の要素が強い「ボードビルショー」に取って代わられました。
小堀「ポール・マッカートニーはそういう影響が大きくて『ホワイトアルバム』や『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』にも、そういった色のある曲が出てきたりします。
今は動画サイトを検索すると、いろんな音源や動画が見られますので、『ミンストレルショー』とか『スキッフル』とか検索しながら読んでみるのも一興かと思います」。
北中正和さんの書かれた『ビートルズ』、ビートルズファンのみならず、エンタメファン、歴史ファンも楽しめそうです。
(尾関)
小堀勝啓の新栄トークジャンボリー
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2021年12月12日11時02分~抜粋