小堀勝啓の新栄トークジャンボリー

夫人が語る、森田芳光監督があの作品をリメイクした理由

故・森田芳光監督夫人でプロデューサーの三沢和子さんが、11月28日放送の『小堀勝啓の新栄トークジャンボリー』(CBCラジオ)に出演しました。
今年9月に書籍『森田芳光全映画』(リトル・モア )を出版した三沢さん。

新作が出来る度に、名古屋を訪れて小堀勝啓の番組に必ず出演していた森田監督。その理由は?

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本人曰く、暗い男?

小堀「森田芳光監督はエネルギッシュだけどナイーブな部分もありました。それと、すごく映画の出来を聞きたがるんですよ」

三沢「作ったばかりの作品はどういう評価か不安じゃないですか。で、小堀さんの感性を森田は信じてたんで、すごく知りたがったんですよ。怖かったと思いますけどね」

小堀は森田監督と同い年。しかも二人とも料亭の家で生まれたという共通点もあります。
しかも森田監督は、ラジオDJがやりたくて日本大学芸術学部の放送学科に入学しています。

「俺ねえ、結構ね、カセットで自分の番組録ったんだよね」と小堀は、森田監督の口真似をしながら昔のエピソードを披露しました。

森田監督は「自分でリクエストカード書いてね、自分で読んでね、じゃあこの曲かけましょうって、テープに録って、枕元でカセットでかけて聞くような、そういう男だったんだよ。暗いだろ?」と言っていたそうです。

小堀「いや、暗くないですよってね」

懐かしそうに笑う小堀。

三沢「もしかしたら逆のポジションになってたかもしれませんよ」

映画は好きだけど自分には撮れない。ワクワクしながら見るのが好きと、ここはキッパリ否定する小堀でした。
 

ジャズから始まる

三沢さんは映画プロデューサーであると同時にジャズピアニストでもあります。森田監督とは大学を卒業してから出会ったそうです。

三沢「最初に知り合って、部屋に行った時に、ジャズ喫茶のようにレコードがあって。そのすぐ近くのジャズ喫茶に通ってたんですけど、これからは森田くんちに行けばお金払わずにすむと思ってよく行くようになったんです」

二人を繋いだのはジャズ。この後、二人三脚で27本の映画を作っていきました。遺作となった『僕達急行 A列車で行こう』はジャズのスタンダードナンバーから。

ちなみに、森田監督が亡くなっていなければ、『僕達急行』は全国を回るシリーズ化が決まっていたそうです。
4~5作目あたりで名古屋鉄道も登場予定だったんだとか。
 

俳優、スタッフのことを考える

三沢さんの著書『森田芳光全映画』によると、森田監督は興行収入のこと以外に、次の作品に出る俳優とスタッフのために汚点にならないような作り方を、と細かく配慮して制作していたそうです。

三沢「本人は映画監督になる前に劇場でアルバイトをずっとしてたんです。
その時に、劇場にお客さんが入らないと、売店の人もみんな不幸せになるってことを経験しちゃってるんです。だから、それを想像するんですよね」
 

多彩なジャンル

12月20日、森田監督の命日には『森田芳光 全監督作品コンプリート Blu-ray BOX』が発売されます。
権利関係で収録できなかった『そろばんずく』を除く26作品を収録しています。

「買って損はありません」と太鼓判を押す小堀。
明るい鉄道オタク映画あり、重苦しいサスペンスあり、純文学あり。黒澤明監督のリメイクあり。改めて見ると森田監督の多彩さが分かります。

三沢「本当にいろんな映画を撮っているので、ファンが混乱しちゃってついて来れないんじゃないかと心配してましたよ」

森田監督が様々なジャンルの映画を撮ったのは、一作ごとに全てを出し切り、二番煎じにならないように全く違うものを撮っていったのではないか?と分析する三沢さんでした。
 

覚悟のリメイク

小堀「功成り名を遂げて地位もあるのに、わざわざ黒澤明監督の『椿三十郎』のリメイク。
どうして危険なことをするんだろうとびっくりしました」

世界のクロサワのリメイクに対し、映画関係者からは「けしからん」という声まであったんだとか。

しかし森田監督には強い決意がありました。
『椿三十郎』は2007年の作品。当時から若い方が古い映画をはじめ古い文化に親しまなくなったことが問題だと思っていたそうです。

そこで大スター織田裕二さんを主演にして古い映画をリメイクすれば、若い人がそのオリジナルにも目を向けるのではないか?ということが狙いだったそうです。
『椿三十郎』を選んだのは、黒澤作品の中でもコメディ要素があり、とっつきやすいから。

三沢「私達には常識でも、若い人にはそれを言わなきゃいけない。古い映画や文化に目を向けてもらうためには、自分は悪口言われて犠牲になっても構わないってはっきりと言ってたんです」

小堀「すごい覚悟ですよね」

三沢「ホントに悪口言われましたけどね(笑)」

特にラストシーンは賛否両論ありました。小堀は手放しで面白かったそうです。

小堀「古典落語みたいなノリで、音楽でもカバーした人が良かったら、そっちもオリジナルみたいになる。それと一緒だと森田監督に言ったら、すごく嬉しそうでした」

三沢「小堀さんは理解していただいたんですよ。名曲はカバーされることで残っていくわけだから。そういうつもりだったんですけど、ちょっと本人は可哀想でしたけどね」
 

森田芳光の大予言

『森田芳光全映画』の中には、ラジオ番組に出た時のインタビューで「歳をとったら?」という内容が収録されているそうです。
それは2010年、亡くなる一年前の話。改めて聞いてびっくりしたので本に再録になったそうです。

三沢「10年前に、歳とったらリモートで監督をするって言ってるんです。
いまコロナでみんなリモートです。なんで、そんなことを10年前に言ってたのか。まあ早すぎた映画もあるくらいですから、先の事も当たってるんですよね」

森田監督が生きていたら、このコロナ禍をどんな映画にしたのでしょう?興味は尽きません。

三沢「すごいメジャーな作品だからって、自分を抑えて優等生的に撮ろうとかはあんまりしないじゃないですか。結局、みんな森田映画になっちゃう」

小堀「そこがみんなが見たいとこなんですよね」

個性の強い松田優作さんが出ても、沢田研二さんが出ても、森田監督の映画は「森田映画」でした。
 

若い人に見て欲しい

今年は森田監督、一年遅れの生誕70歳。
没後ではちょうど10年。本、Blu-ray BOX発売の他に、リバイバル上映も始まるようです。

三沢「劇場でみんなで見るって、また違う楽しみですからね。見たことのない若い方にまず劇場で見ていただきたいですもんね」

小堀「そこから映画監督が出て来て、『家族ゲーム』をリメイクする?やめた方がいいよ。ってあるかもしれませんね」

三沢「それ面白いですね」

ふたりの森田映画談議は和気あいあいと語られました。 
(尾関)
 
小堀勝啓の新栄トークジャンボリー
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2021年11月28日10時33分~抜粋

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