小堀勝啓の新栄トークジャンボリー

天才作曲家、古関裕而。閉店の定番曲からモスラまで。生涯に駄曲なし

NHK連続テレビ小説『エール』で、窪田正孝さんが演じる作曲家のモデルとなったのが作曲家の古関裕而さん。

6月7日『小堀勝啓の新栄トークジャンボリー』では、クラシック音楽の伝道師ツーさんこと都築義高さんが、古関さんの書いた曲について解説しました。

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泣けるドラマでねぇ

まず流れたのは童謡歌手の川田正子が歌う「とんがり帽子」という曲。
1947年(昭和22年)から3年半に渡り790回放送された、NHKの連続放送劇『鐘の鳴る丘』の主題歌です。番組は戦争孤児救済のキャンペーン企画で、後に映画化されました。

都築「見ましたけどね、またこれが泣ける映画でね。ほぼ僕、同時代ですから」

都築さん世代には戦災孤児になった人もいたようです。

『鐘の鳴る丘』の大ヒットを受けて、作者であり劇作家の菊田一夫が次に狙ったのが大人向けのラジオドラマとして誕生したのが『君の名は』です。
同名の主題歌は織井茂子が歌い、これも大ヒットしました。
 

女湯が空になる

『君の名は』は、東京大空襲の夜、数寄屋橋の上で出会った二人のすれ違いから始まるメロドラマ。
ラジオドラマとして1952年(昭和27年)から2年間、NHKラジオで毎週木曜日の夜8時半から9時まで放送されていました。

都築「戦中戦後のどさくさ時代を生き抜いた人たちの心をとらえたんです。僕も聴いてましたわ」

小堀「これは僕も聴いたことがある。ウ~と空襲のサイレンの音があって、忘れ得ずして、忘却とはなんとかって名調子の台詞があった」

この時間帯は、女性がラジオを聴くために家に居て、銭湯の女湯が空になるという社会現象が起きたと言われています。銭湯の時代ならではの出来事です。
 

映画も大ヒット

『君の名は』は翌年に映画化もされました。主人公の氏家真知子役は岸恵子さん、相手の後宮春樹役が佐田啓二さんが演じました。佐田さんは中井貴一さんの父親です。

「岸恵子主演で映画も3部まで作って大ヒット。岸恵子扮する氏家真知子のマフラーの巻き方が真知子巻き」

北海道ロケで、岸恵子が防寒に持って行ったショールを頭から首の周りを回して付けていたところ、映画でもそのまま採用したんだとか。

古関さんは主題歌はもちろん、劇中の音楽も担当しています。
 

怪しげな歌も書く

戦時歌謡からスポーツ音楽。さらに映画音楽まで。「古関裕而は何でも書くわ」と感心する都築さん。

その中でも異色、かつ人々の記憶に残っているのはこの曲でしょう。
ザ・ピ-ナッツが歌っていた「モスラの歌」です。

1961年(昭和36年)の特撮映画『モスラ』(本多猪四郎監督)の挿入歌でした。
挿入歌にもかかわらず大ヒットし、その後のモスラが登場するゴジラシリーズでも使用されています。一度聴けば忘れられない、異国情緒たっぷりのメロディです。
 

愛知県も、豊橋市も

都築「さて何でも書くと言いましたが、その他にもたくさん書いてる。豊橋市の市歌ね。奥さんが豊橋市出身だから」

市歌のタイトルは、ズバリ「豊橋市歌」です。

都築「なんと愛知県民歌も書いてるんだ。『われらが愛知』という曲です。藤山一郎と安西愛子」
小堀「歌のおばさんだった人」
都築「西条八十が作詞です」
小堀「そして古関裕而作曲。藤山一郎、安西愛子が歌。ものすごいですね」

「われらが愛知」は、1950年(昭和25年)に行われた愛知国体のために作られた歌です。
歌詞は公募され、国鉄職員だった若葉清成さんが入選。それを西條八十さんが補作しました。
ちなみに「われらが愛知」が生まれたのは小堀が生まれた年です。
 

時には外人風に

今回紹介する最後の古関メロディは「別れのワルツ」。

1949年(昭和24)年に『哀愁』というアメリカ映画(マーヴィン・ルロイ監督、本国公開は1940年)が日本で公開されました。

その劇中にあの「蛍の光(オールド・ラング・サイン)」がワルツアレンジで効果的に使われていました。そこに目を付けたコロムビアレコードが古関さんに編曲を依頼します。

そこで古関さんは、楽曲とは別に凝った遊びを入れました。

当時レコード盤には、邦盤であれば丸の中に"Y"、洋盤であれば丸の中に"L"という印が入っていました。そこをわざわざ洋盤の仕様に変更し、演奏者の名前も古関裕而をもじって「ユージン・コスマン」という外国人風の名前にしたのです。
レコードを聴いた人は、海外で録音されたものだと信じ込んでしまったそうです。

小堀「洒落がきいてる人ですね」
都築「すっかり閉店の定番曲、永遠のベストセラーになった」
 

生涯に駄曲なし

都築「何でも作るんだけど、実にぴったりの曲を書いてくる。古関裕而はただもんじゃないよ」

なんでも書きますが、器用貧乏ではなく、どれも一級のものに仕上げる天才です。

都築「音楽感性が素晴らしい。どの曲をとっても非常に完成度が高い。しかも物事に対して、きちっと正対して書いている。理解して書いている。3,000曲あっても駄曲はない」

一説には生涯で5,000曲作曲したともいわれる古関裕而。誠実な人柄が音楽に現れています。
(尾関)
 
小堀勝啓の新栄トークジャンボリー
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2020年06月07日08時07分~抜粋

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