ドラ魂キング

奈良県興福寺の木造弥勒菩薩半跏像に「ジャック・スパロウ」を感じたアナウンサー

毎週木曜日の『ドラ魂キング』では、CBCの佐藤楠大アナウンサーが仏像に関するトピックを紹介します。

6月12日の放送で紹介したのは、奈良県奈良市の興福寺にある木造弥勒菩薩半跏像。

数ある弥勒菩薩像のうち興福寺に限り「映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』の主人公ジャック・スパロウらしさがある」と語る佐藤。その理由を説明します。

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弥勒菩薩とは?

興福寺の木造弥勒菩薩半跏像は国宝館で見られます。そもそも弥勒菩薩とは?

佐藤「一言で言うと、遠い未来に如来になることが約束された菩薩なんです」

仏には上から如来、菩薩、明王、天部という位があります。悟りを開くと如来になれます。つまり菩薩は修行中。

修行をすれば誰もが如来になれるわけではありません。その中で、弥勒菩薩はお釈迦様から「あなたは如来になれますよ」と約束された菩薩だそうです。

その弥勒菩薩、現れるのは釈迦が入滅してから56億7千万年後だとか。
なぜそんな先かと言うと、悟りには52段階あり、51段目にいるのが弥勒菩薩。最後の一段を上がるのに56億7千万年かかるとのこと。

弥勒菩薩が広まった時代

弥勒菩薩が日本で広まったのが平安時代です。その理由について、佐藤は当時の時代背景を説明します。

佐藤「当時は科学でいろんなことが解明されているわけではないので、人々は仏に頼ることになるんですよ」

奈良時代、752年にできた通称「奈良の大仏」と呼ばれる盧舎那仏は、国の安寧や疫病が治まることを願って作られました。

時は移って平安時代。天皇が退位した後も上皇や法皇として政治の実権を握る院政の頃です。

この時代は政治の変わり目である一方で疫病が大流行しました。
富士川游博士が書いた『日本疫病史』(1912年)によると、993年、998年、1001年、1020年と短いスパンで天然痘が流行したそうです。

未来に期待する

佐藤「ということで、我々の願いが届いてないんじゃないかと『末法思想』が流行ったんです」

「末法思想」とは、仏教の予言に基づく思想で、釈迦の入滅後、お釈迦様の教えが徐々に廃れ、ついには信仰している者が現生では救われなくなってしまうという思想。
この思想が、治安が乱れと疫病の蔓延で社会が混沌とした、平安時代の1050年前後に流行したそうです。

佐藤「そんな人たちを救ってくれるのが弥勒菩薩なんですよ」

56億7千万年後に、菩薩から如来へとパワーアップしてやってくるのが弥勒菩薩。

佐藤「未来に思いを託すという意味合いの菩薩なんじゃないかと個人的には思っています。末法思想が流行った当時の人々は、信じていれば来世では救われると祈ったんでしょう」

装飾が美しい

話題は弥勒菩薩像へ移ります。

佐藤「興福寺にある弥勒菩薩半跏像は、ものすごく装飾が美しいんです」

後一段上がれば如来になれる菩薩ですが、手が何本もある千手観音がなど、いろんな菩薩がいる中で、弥勒菩薩は足も腕も二本。
その上、座っている姿なので、如来の姿により近いそうです。

如来と菩薩の違いは装飾品。菩薩は貴族だった時のブッダの姿を模倣しているため、菩薩は華美な装飾品を身につけています。

特に興福寺の弥勒菩薩半跏像は、57.7センチという比較的コンパクトでありながら、かぶっている王冠や背中にある宝飾具一つ一つが細かく精巧に作られているそうです。
また弥勒菩薩自体は木造ですが、装飾品には金や銅があしらわれているとか。

ジャック・スパロウな理由

最後に「ジャック・スパロウに見える理由」を語る佐藤。

佐藤「冠からひらっとたれ落ちるような、長い糸のようなアクセサリーがジャック・スパロウっぽいと思ったんです」

ジャック・スパロウはバンダナを巻いて、目の横辺りにビーズ纏った編んだ髪の毛がジャラジャラと垂れ下がっています。

佐藤「しかもただ垂れ下がっているだけではなくて、それが服や腕の上でうまく翻っている様子に躍動感があるんです」

佐藤が勝手に「ジャック・スパロウ」と呼んでいる木造弥勒菩薩半跏像は、奈良県興福寺の国宝館で見ることができます。
真偽のほどは、ぜひご自身の目でお確かめください。
(尾関)
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2025年06月12日16時32分~抜粋

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