ドラ魂キング

アジアにも広がりをみせる「サル痘」には天然痘のワクチンが有効?

先月以来、ヨーロッパや北アメリカで患者が相次いでいる「サル痘」。
今週、韓国やシンガポールでも新たな患者が見つかるなど、アジアにも広がりをみせています。

6月23日放送の『ドラ魂キング』、各分野の専門家・エキスパートが世の中の出来事をコンパクトに解説する「エキスパ」のコーナーでは、CBC論説室の後藤克幸解説委員が、サル痘の症状や天然痘との違い、天然痘ワクチンの効果について解説しました。

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元々はアフリカ特有の病気

「サル痘」とはもともと、アフリカの熱帯雨林に住むリスやサルなどの動物の中で広がっていた、ウイルスが原因で起きる感染症のこと。

アフリカ特有の風土病とも位置づけられていて、リスやサルに噛まれた人が感染すると言われていました。

そのためサル痘の感染者は、アフリカからの渡航者やアフリカから輸入したペットに噛まれて感染した人など、アフリカ以外の地域での感染者は限定的でした。

つまりサル痘は新しい病気ではなく、もともと存在していた病気なのです。

天然痘との違いは?

サル痘の潜伏期間は1~2週間。その後、急激に発熱し、1~2日で全身に発疹や水ぶくれが現れます。

この症状は「天然痘」とよく似ています。これは、サル痘と天然痘のウイルスのグループの属性が似ているためです。

天然痘と聞くとかなり昔の病気というイメージがありますが、致死率が20~50%と非常に高い病気として歴史に刻まれています。

一方、サル痘の症状は軽く、患者のほとんどが2~4週間で自然に回復し、致死率も10%以下です。

1980年に「根絶宣言」

天然痘は、イギリスの医師・ジェンナーが1700年代に開発した「種痘」というワクチンが世界に普及してから、患者が激減しました。

1970年代を最後に天然痘の患者は発生しておらず、WHO(世界保健機関)は1980年に「天然痘の根絶」を宣言しています。

サル痘は、アフリカ奥地の動物の身体の中で伝染して生き続けているウイルス。

もともとアフリカの動物の中にいたものが、今なぜアフリカ以外の、しかも人間に広がってきているというのでしょうか。
 

韓国やシンガポールでも感染者が

これまで散発的だった人間への感染が、ヨーロッパなどの先進国で急に広がった理由はまだわかっておらず、WHOが調査を進めている段階です。

先月イギリスで初めて、海外渡航歴のないサル痘感染者が見つかり、以降、ヨーロッパ各地やアメリカ、オーストラリアなど世界35か国で2,000人を超える感染例が確認されています。

とはいえ、今回の先進国で広がったサル痘での死者はゼロ。日本でもまだ感染者は確認されていません。

しかし、韓国やシンガポールで感染者が見つかったとなると「日本でも出るんじゃないか」と心配の声があがるのは当然です。

天然痘のワクチンを備蓄している理由

「天然痘のワクチンがサル痘にも効果がある」という研究結果が出ています。

天然痘そのものは1980年に根絶宣言がなされたものの、その後もこのワクチンは各国が備蓄しています。

実は、アメリカとロシアの研究所では、まだ天然痘のウイルスを保管しているといわれています。これが災害や事故、テロによって外界へ出てくる危険もなくはないため、各国がある程度のワクチンを備蓄しているというわけです。

イギリスやヨーロッパでは、備蓄している天然痘のワクチンをサル痘の患者や濃厚接触者、治療にあたる医療従事者に投与していると伝えられています。

厚生労働省は、日本でサル痘感染者が発生した場合に、備蓄している天然痘のワクチンを使えるように検討を進めていますが、備蓄の量については危機管理上の問題で公表できないとのことです。
(minto)
 
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2022年06月23日17時09分~抜粋

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