ドラ魂キング

NO MORE リアル映画泥棒!「ファスト動画」が増える背景

YouTubeを始めとして、今や世の中には多くの動画があふれていますが、一時期、問題となっていたのが「ファスト映画」というジャンル。

劇場公開されている映画などを10分程度の動画にまとめ、ストーリーのすべてをかいつまんで説明する音声を入れた動画のことですが、映画制作側には無許可で配信されているものです。

そんな中、ファスト映画を投稿し不正な広告収入を得ていた男性に対し、5月19日に判決が言い渡されます。

5月17日放送『ドラ魂キング』では、CBC論説室特別解説委員の石塚元章がこの裁判について解説しました。

[この番組の画像一覧を見る]

映画業界にとって大損失

この被告の男性に対し検察側は懲役2年、罰金200万円を求刑しています。

「ファスト映画」が広まってしまうと、映画に行かなくてもよくなったり、公開後に販売されるDVDなどが売れなくなったりするため、多大な損失を映画業界に与えることが憂慮されています。

最初は「引用の範囲内だ」と開き直っていた被告も、現在は反省して執行猶予を求めているとのこと。

この判決も気になりますが、石塚が気になっているのは、そもそもなぜファスト映画が生まれたのかということ。

観る人がいるから問題となったわけですが、ある程度から上の世代の人間からすると、「映画をダイジェストのように観て楽しいの?」と思いがち。

その疑問に対する鍵が、今の若者が重視しているというキーワード「タイパ」です。

タイパの高さを求める若者

タイパとは「タイムパフォーマンス」の略で、時間あたりの効果のこと。
できるだけ短い時間で高い楽しみを得るのを良しとする考えで、「タムパ」とも呼ばれます。
よく費用対効果のことを「コスパ」といいますが、それの時間版です。

最近は録画したドラマを早送りして観たりする人が増えています。
また、YouTubeよりも短い時間で観られるTikTokが若者の間で流行っているのも、その風潮のよう。

先日は音楽でもギターソロを飛ばして聴く若い人がいることがSNSで話題となりました。
今どきはカラオケで「前奏40秒」などと表示される曲は、あっさり演奏停止ボタンを押されるかもしれません。

石塚「つまり情報やコンテンツがあふれちゃってて、なぜあふれるようになったかというと、やはりネット社会でみんなスマホを手に持ってるし、どんどん発信できるし、プロもアマチュアもどんどん情報を出す。

映画もドラマも音楽もなるべくたくさん観て、ちゃんと観たぞとかその映画知ってるよっていうふうになっておきたいっていう、一種の強迫観念というか」

本なら行間を読む、音楽ならイントロや間奏を楽しむ、演劇なら最初から最後まできちんと観て伏線の回収を楽しむということは、減ってきているようです。

時間をかけずに楽しむ傾向

また、ドラマなどの物語はじっくり観たいけど、情報や知識は手っ取り早く入手したいという考えもあり、最近は「5分でわかる〇〇」のような本もよくあります。

それに対し、石塚は「5分で覚えたやつは、5分で忘れるんですけどね」とチクリ。

コロナ禍でおウチ時間が増えたことでNetflixの加入者数が増えていたのですが、最近は減少傾向にあるのだとか。

支払いを抑えたいという金銭的な節約傾向はあるのですが、時間的にも節約したいという考えもあるようです。

「ファスト動画」増加の背景には、こうしたコンテンツへの向き合い方の変化があるようです。
今後、時間をかけて1つの作品を観るという楽しみが減っていくのかもしれません。
(岡本)
 
ドラ魂キング
この記事をで聴く

2022年05月17日17時06分~抜粋

関連記事

あなたにオススメ

番組最新情報