ドラ魂キング

紛争の影…東京五輪にやって来た選手たちの覚悟

206の国や地域が参加している今回の東京2020オリンピック。その中にはかつての紛争の影を引きずっている国もあります。

7月28日『ドラ魂キング』では、あまり知られていない国や地域について、CBC論説室の北辻利寿特別解説委員が解説しました。

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ドミニカは2つある

この日は野球の侍ジャパンがドミニカ共和国と対戦し、劇的なサヨナラ勝利を収めました。
侍ジャパンと戦ったのはドミニカ共和国。
実はこれとは別にドミニカという国があります。開会式の入場行進を見て「おやっ」と思った人もいるかもしれません。

ドミニカ共和国は、人口1000万人で公用語がスペイン語。カリブ海に浮かぶキューバのすぐ隣の島にある国です。

一方、ドミニカ国は人口7万人で公用語は英語。こちらもカリブ海にある国ですが、大きさが奄美大島と同じぐらいの小さな島です。

北辻「こういう国が参加してくるのがオリンピックならではです」
 

女子柔道が強いコソボ

柔道女子で金メダルを2つ獲ったコソボという国があります。
柔道女子48キロ級、決勝で日本の渡名喜選手を破って金メダルを獲ったクラスニチ選手、57キロ級で芳田選手を破って金メダルを獲得したのがジャコバ選手。この2人はコソボの選手です。

コソボはヨーロッパのバルカン半島にある国。岐阜県ぐらいの大きさで、人口は180万人。

北辻「1990年代のユーゴスラビア紛争の舞台となった悲しい歴史があります。私も30年前、ウィーン特派員をやっていた時に、ユーゴスラビア紛争を取材しました」
 

コソボの事情

ユーゴスラビア紛争は民族紛争でした。
この紛争は、クロアチア、セルビア、スロベニアがユーゴスラビア連邦から次々と国が独立して行った際に起こりました。

元々コソボは、ユーゴスラビア連邦の中にあったセルビアにある一つの地域、コソボ自治州でした。セルビアの一部でしたが、実はセルビア人よりアルバニア人が多い地域。

北辻「だからセルビアから独立したいという願いがずっとあったんです。でもセルビアは独立してもらったら困る、というんで紛争になっていくんですよね」
 

独立はしたけれど

1999年にはNATO(北大西洋条約機構)が、コソボに展開するセルビア軍に空爆をしたこともありました。
紛争が続いて、今から13年前の2008年に、コソボはようやく「コソボ共和国」として独立を宣言しました。

日本をはじめ各国が国として認めましたが、セルビアなど、まだ多くの国がコソボを独立国として認めていないそうです。コソボを国として認めているのは100カ国ほどなんだとか。

「オリンピックに参加してきたコソボですけども、そこに参加してきた別の国は認めてないという複雑な事情があるんですね」と言う北辻委員。

4年前のリオで初めてコソボはオリンピックに参加しました。
スポーツの平和の祭典ではありますが、そこで国旗を掲げて入場するということは大きな意味を持つんですね。
 

覚悟のある選手たち

開会式で、ギリシャに続いて2番目に入場したのが難民選手団でした。
これは、紛争や迫害で故郷、国を追われたアスリートのグループです。今回は29人が参加しているそうです。

またROCというグループがあります。これはロシアオリンピック委員会。ドーピング問題で、ロシアが国として参加できないので、こういう名前で来ているわけです。

北辻「各国、地域にはいろんな事情があります。それでもオリンピックに参加しにきている強い覚悟がある選手には、ちゃんと拍手を送ってあげたいと思いますよね」
(尾関)
 
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2021年07月28日16時45分~抜粋

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