ドラ魂キング

アルツハイマー治療薬が承認へ…実は喜んでばかりはいられない!?

アルツハイマー病の治療薬が、アメリカの食品医薬品局(FDA)に条件付きで承認されたことが大きな話題となっています。

これは、米製薬大手のバイオジェンと、日本の製薬会社エーザイが共同開発した「アデュカヌマブ」という薬で、8日の東京株式市場ではエーザイ株がストップ高となる事態に。

しかし、「これで認知症がなくなる!」と考えるのは、まだ早すぎるようで、専門家からはまだまだ課題があると指摘されています。

6月9日放送『ドラ魂キング』では、CBC論説室の後藤克幸特別解説委員が「アデュカヌマブ」への期待と課題について、解説しました。

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画期的な新薬に課題も

アルツハイマー病とは、脳の中に有害なタンパク質が溜まり、神経細胞を壊してしまうことによって起こるといわれています。

これまでの認知症医療は、症状を遅らせるための対処療法しかなかったのですが、この新薬では、有害なタンパク質そのものを減らす効果があり、根本的な治療として期待されています。

では、どのような課題が指摘されているのでしょうか。

1つ目は、1人あたり年間600万円ほどという高額な医療費。

もし健康保険の適用対象になれば、本人負担はそこまでの金額にはなりませんが、健康保険側にとっては大きな財政負担となります。

ただ、後藤委員はそれよりも問題として指摘したのは、果たして本当に治療効果があるのかという点。

「すべての認知症患者に効果があるわけではない」ということは、頭に入れておいた方が良いそうで、すでに認知症が進行している段階の方には効果がないといわれています。

これは、先程有害なタンパク質を減らす効果があるというお話でしたが、すでに壊れてしまった神経細胞を治す効果はないためです。
 

どんな人に有効?

では、どんな方だと有効なのでしょうか。

後藤「有害なタンパク質は、20年から30年という長い時間をかけて脳の中にたまっていくといわれています。

新薬はタンパク質がたまり始めて、まだ周りの神経細胞を壊すまでには至っていない早い段階で投与すれば、脳の中の有害物質を除去して、将来、アルツハイマーの症状が出るのを阻止できる」

ということは、認知症の症状が出ていない段階で投与しないと意味がないということになります。

もし80歳で認知症を発症するとしたら、50歳や60歳の段階で投与しておかないといけませんが、脳に有害なタンパク質がたまり始めているかどうかは、残念ながらわかりません。
 

今の段階ではまだ活用できない?

せっかく新薬が開発されても、まだ完全には活用できなさそうですが、最後に後藤委員は新薬が有効になるために必要なことを語りました。

後藤「検査技術の開発ですね。有害なタンパク質がたまり始めている段階の現象をどうやって検査で発見するか。

例えば人間ドック、血液検査などで検査できれば、治療しましょうといえるんですが、新薬が力を発揮するためには、新しい検査法の開発が不可欠という課題があるということですね」

治療薬はできたので、あとは投与するタイミングがわかるようになると、本当に認知症が予防できるかもしれません。
(岡本)
 
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2021年06月09日16時44分~抜粋

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