ドラ魂キング

落合博満、今だから話す「中日・岩瀬の窮地を救ったのは…」

元中日ドラゴンズ監督で野球評論家の落合博満さんが、12月14日放送のCBCラジオ『ドラ魂KING』に出演しました。

開口一番「今日は素晴らしいゲストを御二方お呼びしています。皆さん、どうぞ楽しんでください」と落合さん。この言葉で登場したのが、落合さんとは30年来の仲というデュオのチェリッシュ。
たまたまスタジオですれ違い、落合さんが招いてしまったというから、もはやメインパーソナリティ・落合博満の風格を発揮してしまいました。

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根尾選手のポジションは

若狭敬一アナがリスナーの質問に答える形で進行していきます。

「落合さんならドラフト1位の根尾選手をどう育てますか?」(Aさん)

落合「普通に練習させて何が一番いいのかを見る。監督から何から、すべて今言ってるのは恐らくリップサービスだと思う。ショートやりたいからやらせればいいって言うでしょ?やらせればいいんだけども、与えちゃいけないんだ」

現在ショートのポジションを守っているのは京田選手。

落合「あそこに京田がいなけりゃいいよ?とりあえず2年間やったわけでしょ。代わりに、京田をどっか回して、根尾をやらせるの?絶対周りから不協和音が来るよ。
だったら力で奪い取らなきゃ。それの一番いい例が宇野と立浪ですよ」

1988年にショートのポジションでデビューした立浪和義さん。
前年のベストナイン遊撃手を獲った宇野勝さんをセカンドにコンバートしての抜粋でした。この年、立浪さんは新人賞とゴールデングラブ賞を獲得しています。
 

オレ流ならセンター?

以前落合さんが毎日放送に出演した際、根尾選手について「俺だったらセンター守らせるけどな」と発言し、話題になりました。

落合「ショートがいなけりゃ根尾をショートでいいんですよ。でもいるんだから、大島の守備が落ちたんであれば、根尾をそっちで育てるほうがいいのかなと思う」
若狭「その場合、大島はどうします?」
落合「レフトを守らせればいいじゃん」
若狭「アルモンテという外国人がいますが」
落合「競争させればいいじゃん」

落合さんの答えは、極めて明快です。

落合「平田でもいいじゃない。平田は怪我なしで一年間やったのは初めてでしょう。また来年太っちゃったら怪我するよ」

根尾選手の脚力と肩は大島選手より上、と評価する落合さん。

落合「外野っていうのはセンター中心に守らなきゃいけないんで、人のボールでも捕りに行くくらいの脚力がないといけない。それが年々、大島は落ちてきている。

そこを補うにはどうするかって言えば、現状では根尾が一番いいんだろうと思います。
打つことに関してはやってみなきゃわからないけども、守りに関しては、入ってきた立浪よりは上。 あの肩は立浪にはなかった」

立浪さんを間近に見ていた落合さんならではの意見です。

一方で「将来的に考えてセンター。でもピッチャーも見てみたい」と、野球ファンの目線でも語る落合さん。


 

全部狙ってこそ三冠王

「三冠王の落合さんが、現役時代、打撃3部門で一番難しかったのはどれですか?」(Bさん)

落合「首位打者。首位打者は全員取れる可能性があるんです。ホームラン王と打点王だけは、限られたメンバーしか取る可能性がないんだよね」

といって「首位打者を中心に狙っていくと何も獲れない」そうで、三冠王を狙いに行く時は全部狙うんだそうです。
簡単に言えば、全打席ホームランを打てば三冠王が獲れるということだとか。

落合「皆さん、ヒットの延長がホームランって言うでしょ?ホームランを打てるバッターでそんなことを考えている選手は一人もいないと思う。みんなあれは嘘」
 

ホームランバッターたる者

元巨人の王貞治さんと元南海ホークスの門田博光さんという二人のホームランバッターを例に挙げて説明する落合さん。

王さんは打撃が右に多く飛ぶことから、守備を極端にライトに寄せる"王シフト"が敷かれました。首位打者狙いならガラ空きのレフトへを打てばヒットは増えますが、王さんは決してそれをせずあくまでホームランを量産しました。

一方の門田さんはアキレス腱が悪かったので、チームの邪魔にならないように第三打席まではホームランを打ちにいき、最終打席は代走が出せるのでヒットで済ませたそうです。

落合「ただ、いろんなところで話す時には、王さんも絶対『ホームラン狙いにいった』って言わないけども、そんなもん誰が信じるんですか」
 

打者と投手の関係

落合さんに対し、阪急ブレーブス黄金時代のエース、山田久志さんからの伝言が紹介されました。

山田「あるシーズン、私は落合に打たれるのが嫌で、落合にだけ、それまで全く投げたことのない小さく曲がるカーブ、今のスライダーもしくはカットボールという球種を投げていた。

するとその年のオールスターゲームのベンチで、『山田さん、あの小さいカーブ打ちにくいですね』と落合が言ってくれた。それで自信をつけ、私は小さく曲がるカーブを多く投げるようになり、野球人生が伸びた。感謝している」

落合「感謝してください。我々もそういう経験をいっぱいしてるんです」

元広島の江夏豊さんからは「お前はボールを追っかけるからピッチャーにしたら楽だ」と言われ、"ピッチャーはボールを最後まで待たれるのが一番嫌だ"ということに気づいたそうです。打者と投手はお互いに成長していくことがあるようです。
 

荒木と岩瀬に拍手

落合「30分で現役20年が終わっちゃったの?何だよ~(笑)」

そこで後半は監督としての話を聞きました。

「監督就任された8年間で、戦っていく上で絶対必要だった選手を、投手で一人、野手で一人教えて下さい」(Cさん)

落合「これは難しい。でも一人ずつあげろって言ったら、あの8年間、最後まで投げ抜いたの、岩瀬(仁紀)ね。川上(憲伸)はアメリカ行っちゃったし。山本昌は1年おきだとかなんとか。ちゃんとゲームプランで投げ抜いたのは岩瀬」

では野手は…

落合「8年間規定打席に足りたのは荒木(雅博)一人しかいない。そうなれば荒木になってしまう。
年度別で素晴らしい成績を上げた選手がいなければあの8年間なかったんだけども、トータルで見たら野手は荒木、ピッチャーは岩瀬になるんじゃないかな」

その二人とも、今シーズン限りで現役を引退しました。

「よくここまでやり抜きましたよ。大拍手ですよ」としみじみ語る落合さん。
 

監督時代、最悪の年

「監督をされていた2004年~2011年までの中で、どの年が一番手応えがあって、逆にどの年が一番まずいと思っていましたか?」(Dさん)

一番手応えがあったのは2006年で、二位の阪神には抜かれる心配をしていなかったそうです。
逆にまずいと思ったのは北京オリンピックがあった2008年。

「日本代表に選手を抜かれても、帰ってきてちゃんと野球ができればいいんだけど、精神的にズタズタになって帰ってきちゃった。これを立て直す方が大変だった」

特に岩瀬投手は大会を通じて10失点、3試合で負け投手になり、帰国後は球団への抗議の電話や心無いヤジが飛んだ、と過去に落合さんは語っていました。が、さらに…。

落合「これは大変でした。脅迫状も来たしねえ」
 

岩瀬を救ったチームメイト

若狭「え…?」

一瞬、緊迫するスタジオ内。

落合「言っちゃいけなかったか。禁句だったかな?」
若狭「どうぞお続けください」
落合「球団、愛知県警、全部動いたんですよ」

"ゲームに出たら殺す"という脅迫状もあり、球団内では大変だったそうです。
そんな状態なので、落合さんは岩瀬投手を休ませようと思ったそうですが一軍に帯同させていました。

落合「本当はこれ言っちゃいけないんだろうけども、今日はせっかく生で呼んでくれたし、来年、岩瀬は野球やらないから言うけども…」

こう前置きしつつ語り出したのは、衝撃的な言葉でした。

落合「岩瀬本人が一人になったら、自分で精神状態どうなるかわかんないんでチームメイトと一緒にいたいって。

だから岩瀬を立ち直らせたのは選手なんだ。首脳陣でも球団でも誰でもないの。

あの時のピッチャー陣が岩瀬を支えた。彼らがいなかったら、あそこまで立ち直ることはなかったかもわかんない。あれは凄かった」
 

生出演の感想は?

こんな衝撃的なエピソードも披露し、あっという間に1時間。
最後にラジオ生出演の感想を聞くと…

落合「生は時間通り終わるから最高だよ」
全員「そこ?(笑)」

落合「言い直しが効かないんでね、神経ピリピリしながら細心の注意を払って1時間やらせていただきました。みなさん、お身体に気をつけて良いお年をお迎えください」
 
冒頭、オレ流で勝手にゲストを入れてしまった落合博満さん、ファンへの気遣いも忘れない一流の野球人でした。
(尾関)
 
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2018年12月14日18時00分~抜粋

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