野球中継中によく「キレのあるボール」というフレーズを聴くことがあります。
具体的にいったいどんな投球を指すのでしょう?
11月20日『ドラ魂KING』「彦野利勝の野球解説の解説」のコーナーでは、この素朴な疑問について野球解説者の彦野利勝さんが説明しました。
キレのあるボールって何?
まずは、リスナーが「考えるキレのあるボール」とは?
「キレのあるボール=伸びのあるボールと解釈しています」(Aさん)
「伸びのあるストレート。キレのあるストレート。両方の表現を耳にするんですが同じなのでは?」(Bさん)
彦野さんの答えは意外なものでした。
「おたよりを寄せてくれた方たちが思ってるような解釈で、僕はいいと思いますよ」
「キレがある」という言葉を使う時は、基本的に球が速いピッチャーに対してが多いんだそうです。
打ち損じが多い、そんな時は
では野球を見ていて、どんな時に「これはキレのあるボールだ」と判断すればいいのでしょうか?
彦野「例えば、(対戦バッターが)真っ直ぐ一本に絞って振りに行ったにも関わらず、ファールになっちゃったとか、詰まって内野フライになっちゃったとか。判断の仕方としたらそういうボールです」
テレビ中継を見ていて、バッターがこのような状態なら、投げているピッチャーの球は「キレがある」と思って良いそうです。
バッターが幻惑されるくらい手元で速く見える球、それがキレがあるボールの正体のようです。
断然、江川卓
今では投球からほどなくスピードガンで球速が出ますが、昭和時代、テレビのプロ野球中継では、それが二つ出ていました。初速と終速です。
ピッチャーから球が離れた瞬間辺りの146キロと、キャッチャーが捕った瞬間辺りの120何キロという感じです。
彦野「その差がないピッチャーがいわゆるキレのある球。だから手元で速く見える。あと回転数が多いんだと思います」
現役時代の彦野さんにとって、この二つの速度に差のないピッチャーと言えば誰でしょう?
彦野「断然、江川卓さんです。真っすぐをみんな打ちにいくんですけども、高めのボール球を振ってしまうケースが多くて、それで空振りをたくさん取ってたイメージがあります」
最近だと阪神の藤川球児投手だそうです。
重いボールって何?
一方「重いボール」との表現もありますが、これはどういうボールなんでしょう?
彦野「これは難しいんですけど、真っすぐであんまり回転数が多くないようなことをいうんですが、それだと変化球になっちゃいますもんね」
以前、変化球の話をした時に、ツ-シムやワンシームという、いわゆる縫い目を少しずらして、手元でちょっと変化させてるようなボールのことに触れました。重いボールと言うのは、それに近いようです。
彦野「真っすぐぐらいの球速で来るんで、バッターとしては真っすぐとして判断して打ちに行くんです。ただ、あまり回転してないか、ヘンな回転している球で、なかなか弾いても飛ばないんですよ」
炎のストッパーは重いボール
キレがあったのは江川さん。ではその「重いボール」で勝負していたピッチャーは誰でしょう?
彦野「僕が体感した中では、津田恒実さん。
あの人は球は速いですけど、手元でビューって来るイメージじゃなくて、ズドーンって上から投げ下ろして来る感じだったね」
津田恒実さんは「炎のストッパー」と呼ばれ広島カープで活躍した投手です。
彦野「回転する間もなく来ちゃうぐらい、回転を見てる暇もないくらい速かったです。津田さんが調子の良い時は打てませんよね。けど、調子が悪い時は、ちょっと早めにタイミングとって、この辺かなと思うと当たるんですよ」
ドラゴンズのキレてる投手
現在のドラゴンズでキレのある球を投げる投手は誰でしょう?
彦野「ドラゴンズのピッチャーでいうと佐藤優投手。抑えやってる時の1イニングの真っすぐの球っていうのはテレビで見ててもビューっていきますよね」
キレてるボールは低目に落ちないのでキャッチャーミットにパッと入ってくるんだとか。
逆にキレてないボールはちょっと落ち気味に来るため、キャッチャーが捕る時にミットが下がります。
「キャッチャーミットが動かないような球はキレてるボールだと判断してもらえばわかりやすいかなと思います」と話す彦野利勝さんでした。
(尾関)
CBC
この記事をで聴く
2018年11月20日18時32分~抜粋