2017年9月5日(火)

【エッセイ】笑い声と先輩風。

RadiChubuスペシャル / カルチャー

「あの番組、聴いてました」

時折、そう言われると、照れるものです。
うーん、違うかな、まぁこそばゆいというか「すみませんねぇ」といつも思っております。なんでしょう。私が卑屈な人間だからでしょうか。

基本、恐る恐る「どーも、あのぉー、お邪魔しますぅ」みたいな感じで取材に行ったりしているので「いやぁ、俺の番組なんて、そんな聴かれてないでしょう!」という気持ちが常にあるのかもしれません。

スタッフ笑いの禁止

担当している番組の一つに、横で構成作家たる私が笑っている番組もあります。
このスタイルは70~80年代の深夜放送からでしょうか。

聞くところによれば、最近はこの「スタッフ笑い」を禁止、あるいは「最近は(構成作家が笑うスタイルを)やらないんですよ」と明言するラジオ局もあるそうです。

笑っている=声が放送に乗っている。私を知っている人からすれば、その番組を私が担当しているのはすぐわかります。「声バレ」ですね。同業者からそう言われるのは構わんのです。

が、久々にあった同級生から「お前、ラジオで馬鹿みたいに笑ってんなぁ。聴いたよ」なんて言われると「いえいえ、これからも是非番組をお聴きいただければ」と、番組制作者として丁寧に礼を述べ…そのあと胸ぐらを掴んで「うるせーバカヤロー来週も再来週も聴け。周囲100人に聴けって言え」と申し上げます。
暴力はいけません、特に往復ビンタ。

いや、同級生に「バカみたいに笑ってる」と言われようとも構わないのです。
古くからの友人に「移動中のラジオでお前の笑い声がする番組を聴いた。お前の笑い声がするわ、選曲もお前の匂いがプンプンするんだよ!」と非難されようと、私は痛くも痒くもありません。心に傷を負うだけです。

若者よ、なぜそれを先に言わぬ。

数ヶ月前なんですけどね。特番の構成、2時間半の生放送。
番組自体は事前からの告知もあって、放送前からメールも殺到、安心して番組の準備も進み、気分良く差し入れにケーキを買って行き、打ち合わせの時に「食べなよ、みんな!」なんて言って、気前のいいおじさんを見せるわけですよ。先輩風ビュービュー。
んで、若い20代前半のスタッフには「若いんだからケーキ2個食っちゃいなよ!」とかも言っちゃうわけですよ。

生放送は無事終わり、出演者を送り、スタジオにはいくつかのケーキがまだ残っていました。

おじさんは、若いスタッフに「これ、持って帰って明日の朝ご飯にしちゃいなよ!」と。吹きやまぬ先輩風、資料を片付けて、荷物をまとめてスタジオを出ます。喉が渇いたので、ロビーで冷えた飲み物を買って一息。なかなか良かったじゃないの生放送。

そこへ、さっきの若者が僕の元へ来ます。

そんなわざわざ挨拶に来なくてもいいよ明日もキミは朝早いんだろいやいやお疲れお疲れ今度メシでもどうよ的な感じで、もう彼の肩揉んじゃおうか、ついでに彼のこと「○○くん」じゃなくて「○○選手」って呼んじゃおうか。
あれ、若い人を呼ぶ時になんで「選手」って言う人がいるんでしょうね。

ところが、若者がやって来たのは挨拶のためではありませんでした。

「僕、コーノさんがやってた番組聴いてました」
「クイズの出題者やってましたよね」
「クイズのヒントでコーノさんが歌ったりして、全然ヒントになってないクイズ」

彼は10年近く前、私が担当していた番組のリスナーだったそうです。

私は急に小声になって「そ、そうか…ありがとうね」

急に伏し目がちになった私はそそくさとロビーを後にします。

だったらもっと張り切って仕事したぞ俺は。

いや、なんで放送前に言わなかったんだアイツは。

もしかして、試されてたか、俺?若手に。


河野虎太郎

俺も、今お世話になっている同業の先輩に「あの番組、聴いてました」と言うこと、かつては結構ありましたね。でも「ありがとう」と言われるより「なんであんなの聴いてたんだ!」と言われることが多いのです。

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