2017年8月22日(火)

過去最大級の氷山分離!南極でいま起こっていること

石塚元章 ニュースマン!! / カルチャー

今年7月12日、イギリスの研究プロジェクトチームMIDASが、南極最大の棚氷”ラーセンC”から過去最大級の氷山が分離したと発表しました。

いま南極では何が起きているのでしょう?
名古屋市科学館学芸員、南極観測隊夏隊にも参加経験のある小塩哲朗さんにお話を伺いました。

聞き手はCBC論説室の石塚元章解説委員と、渡辺美香アナウンサーです。

愛知県が分離するイメージ

過去最大級の氷山、いっらいどれほどの大きさなのでしょう。

「氷山の長さは距離にして160キロぐらいの長さがあります」

氷山と言うより、土地が流れていく感じです。その面積も凄いです。

「5,800平方キロメートル。愛知県が5,140ぐらいだったかと思うんですけども、愛知県より広い氷が出ちゃった」

そもそも「棚氷」って何?

氷山はよく見聞きしますが、今回氷山が分離した「棚氷」とは何でしょう?

「棚氷って、海に、棚みたいに張り出してる氷のことを言うんです」

棚氷はどうやってできるんでしょうか?

「海の上にあるんだけれども、海の水が凍ってできたもんじゃないんです。南極の大陸上に、雪が積もります。1年2年じゃなくて、ずっと積もっていくと、雪自体の重みで、氷に変わっちゃうんですね。で、大陸の斜面と言いますか、海岸に向かって少しずつ、氷河がみたいに流れていくんです。せり出していった氷のことを棚氷と言います」

“ラーセンC”と呼ばれる理由

ラーセン棚氷とは、南極に、いくつかある棚氷のうちの一つ。
ラーセンとは、1893年に氷に沿って南緯68度10分まで到達した、ノルウェーの捕鯨船船長カール・アントン・ラーセンに由来します。

「ラーセン棚氷は、南極半島という場所にあります。4つに分けられて、それぞれ”ラーセンA”から”ラーセンD”まで名前がついています。今回は、一番大きなラーセンC棚氷の一部が割れて落ちたということですね」

もしラーセンC棚氷が全部割れてしまったらどうなるんですか?

「もしも、”ラーセンC”の棚氷が全部落ちて溶けてしまったら、世界中の海の海面が10cm上がると言われてます」

今回、海に落ちた愛知県ぐらいと言われる部分は、”ラーセンC”全体から見るとどの程度の割合なのでしょう?

「全体から見ると、5分の1とか6分の1ぐらいだと思います」

落ちた氷山はどうなっている?

今回の氷山は分離してからどうなっているのでしょうか。

「まだ漂うところまでいってなくて、パカッと割れ目が入って分離しただけ。すぐ近くにあります。衛星写真で見ると、線は明瞭に入ってるんですけれど、漂ってどっかいっちゃったわけじゃないです」

この愛知県並みの氷山、これからどうなるのかは、専門家でもわからないそうです。

なんで、棚氷から落ちたの?

小塩さんに氷山が分離した理由を伺いました。

「理由のひとつとして、地球温暖化が原因ではないかなという風にも考えられてるんですが、確証はないみたいです」

渡辺アナが「”温暖化が影響かもしれないが、詳しいことはわからない”で片付くことが多いですよね、最近」と漏らします。「温暖化あるある」みたいです。

「そうなんですね。毎年の日本の気温でも”今年は暑かった”とか”今年は冷夏だった”とかがあるので、そういう毎年の変動に『地球温暖化』が隠れちゃうんですよ。温度変化のギザギザを、10年とか20年とか書いていくと、右肩上がりになってるから上がってますね、と言えるんですけど」

平年より高めでも、前年が猛暑なら、比べた時に前年比では低めになります。
そうすると、棚氷からの分離も温暖化に原因があるのかないのか、と検証されるのでしょうか。

「その辺りを、専門家がこれから頑張るんだと思います」

エアロゾルの研究

第58次観測隊で南極へ行き研究されていた小塩さん。
気象観測がメインだったそうですが、具体的にどんな研究をされたのでしょう。

「エアロゾルというもにに、着目をしています。エアロゾルとは、空気中にある、空気以外のもののことです。黄砂みたいなものとか、よくいわれるPM2.5とか、ああいったものをエアロゾルといいます」

エアロゾルは目に見える数ミリメートルの砂塵や花粉から、数ナノメートルという微小なものまで様々なものがあります。
南極の空気の中に、どんなものが混じっているかを調べてるんですか?

「その前の段階です。何がどこに、どれぐらいの量があるんだろう、という調査です。その後は、それがどこから来てどこへ流れていくかを知ろうというのが大きな研究テーマです。もっと大きく言うと、気候変動と関係しています」

エアロゾルがオゾン層を破壊?

「大気汚染とかではなくて、エアロゾルは、普通に存在しています。だけど、それがどこに、どのくらいの量あるかっていうのが、実はよくわかっていません。例えば太陽の光を吸収するとか、そこで化学反応が起こるとか、そういった作用は、昔は大したことないと思われていたんです」

ところが、最近の研究でエアロゾルは馬鹿にできない、ということがわかってきたそうです。

「きちんと調べると、ひょっとしたら、地球温暖化のメカニズムも、もうちょっと考え直した方が良いかもしれない、そういう重要な要素の一つですね」

エアロゾルは、オゾン層の破壊にも関係があるんでしょうか?

「オゾン層の破壊は成層圏で起こってますが、それも”極成層圏雲”っていう雲の一種が関係します。極成層圏雲は、我々が普段見ているような雲とは違うもので、やっぱりエアロゾルの一種なんですね。その上で化学反応が起こり、結果として、オゾンが破壊されています」

南極は終着点

それを南極で調べることに意味があるんですね?

「南極が特別な場所なので。そこに行って調べることに意義があります」

人が住んでいなくて、余計なものがいないエリアということですか?

「ただ人が住んでない、というだけじゃなくて、地球全体の空気の流れ方を見ると、南極は一種の終着点みたいな場所でもあるんですよ」

南極ってペンギンとか『南極物語』の樺太犬(タロとジロ)ぐらいしか思いつきませんでしたが、上空に目を向けると、空気の流れの終着点だったんですね。
小塩さんたちの今後の研究によって、地球温暖化のメカニズムが解明されることを期待しましょう。
(尾関)

アーカイブス

同じカテゴリー

|
facebook twitter hatebu line