2017年7月20日(木)

上り坂と下り坂が逆に見える時があるのはなぜ?

丹野みどりの よりどりっ! / カルチャー

7/18の『丹野みどりの よりどりっ!』に、このようなおたよりが届きました。

「下り坂だと思ってアクセルを緩めて運転していたら、思ったよりスピードが出ておらず、確認しに戻ってみると実は上り坂だった」

もしかしたら皆さんも、下り坂が上り坂に見えたり、あるいは上り坂が下り坂に見えたりした経験があるのではないでしょうか。
そこで今回は、「坂道の勾配が逆転して見える時があるのはなぜ?」というキニナルを解決していきます。
このキニナルについて、武蔵野大学工学部数理工学科 准教授の友枝明保先生にお話を伺いました。

勾配が逆転して見える坂道の特徴

勾配が逆転して見える坂道の特徴の一つは、異なる傾斜の坂道が複数連なっている点です。
坂道の勾配が逆転して見える錯視は「坂道錯視」といい、学術的な言葉では「縦断勾配錯視」と呼ばれています。

例えば手前に急な下り坂、奥に緩い下り坂があると、二つの道路の傾斜の対比によって、あたかも奥の道路が上り坂であるかのように見えてしまいます。
その逆で、手前に緩い上り坂、奥に急な上り坂があると、手前の道路が下り坂であるかのように見えてしまいます。

この坂道錯視が生じる場所として有名なのは、香川県にある屋島ドライブウェイで、観光スポットにもなっているそうですよ。

勾配が逆転して見える理由

坂道の勾配が逆転して見える理由のひとつは、私たちが見ている景色の中に、傾斜を正しく認識するための基準がないことです。すなわち、水平線がどこかということがわからないのです。

傾斜を認識する基準がないことから、異なる勾配の坂道が連なっている時は、私たちは二つの道路の傾斜の対比を使って道路の傾きを認識しようとします。
その結果、坂道錯視が生じると考えられているそうです。

「確かに何が何でもこれが水平という基準があれば別だけど、例えば坂になっている斜めの道には、それに沿って斜めにガードレールがついてたりしますもんね」と丹野。

道路沿いのガードレールは基本的に道路の勾配に沿って設置されているので、水平線の基準にはなり得ないんですね。

目からの情報と脳内補完

実は、私たちは脳の中で情報を補うことによって、身の回りの3次元の空間を認識しています。

私たちの世界の3次元の情報は、まず光として目の中に飛び込んできます。
目の中に入ってきた光は、網膜というところに像となって映し出されます。
この網膜に映し出された像は「網膜像」と呼ばれ、テレビや写真のような2次元の画像となっています。つまり、奥行きに関する情報が失われているのですね。

しかし、実際は3次元の世界を認識しなければいけないため、今までの経験や知識を総動員し、脳の中で奥行きに関する情報をつけ足して、正しく復元することによって、3次元の世界を認識しています。

「それで立体とか奥行きが分かるわけですね」と関心する丹野。私たちは普段から、2次元の世界しか見ることができていないのですね。

そして、この復元が正しく出来なかった場合に、奥行きに関する「目の錯覚」が生じるのだそうです。

勾配が逆転して見える坂道でも、傾斜を正しく認識するための基準が無く、脳の中で道路の傾斜を誤って復元してしまうため、「坂道錯視」が起こります。

坂道錯視の影響

まず、上り坂が下り坂に見える場合は、運転の速度が下がってしまいます。
もしこれが高速道路で多くの車が通る場所だとすると、ひどい渋滞の原因になっている可能性があります。

また、下り坂が上り坂に見える場合は、上り坂だと錯覚してしまうことから、アクセルを踏んで加速する可能性がありますが、実際は下り坂なので、さらに速度が上がってしまいます。これは、速度オーバーによる交通事故等につながり大変危険です。

しかし、目の錯覚の一つの特徴は、「勘違い」や「思い込み」という言葉とは違って、頭の中で答えがわかっていても、必ずまた起こるという点にあります。つまり坂道錯視の場合も、答えがわかっていたとしても、勾配が逆転して見えることを直すことは困難なのだそうです。

そのため、速度が出すぎないように速度メーターを気にしながら運転するなど、安全な運転を心がけていただきたいと友枝先生は述べています。
さらに、なるべくそのような錯覚が生じないような、安全に運転できる道路を作ることも大事になってくると仰っていました。
(ふで)

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