2017年7月11日(火)

【エッセイ】悪いオトナをやっつけろ!

RadiChubuスペシャル / カルチャー

「これ全部食え」

「あざっす」

なんてやりとりをしていたのは、もう10年以上前。

プロデューサーの二度目の結婚パーティーを滞りなく終えた数日後の焼肉店。
幹事としてあれやこれやを手伝った打ち上げの席で一番の若手は僕、周りは10歳以上離れた番組の首脳陣。なのでガンガン食えと言うのです。食べました。丼飯の上に皆が食べ残した肉をのせ、焼肉丼。
ここは東京の銀座。学生街の定食店じゃないのだ。あと「二度目」って書く必要はなかっただろう。

メシに行くだけの話じゃないですか

この仕事を始めてから長いこと「若いやつは食え!」と言われて育ってきました。が、昨今ガッツリ飯を食う若い人は減りました。

こっちは、少量の食事で済ませているのを見ると不安になってしまうのです。ちゃんと食べたのか。遠慮してないか、本当はあれも食べたいんじゃないかと。ともすれば「食べない奴ぁ信用ならねぇ」くらいの勢いなのです。

私と仕事する若い人は、気兼ねなく「腹減ったっす」と言ってください。

でも、遠慮しますよね。先輩やエライ人がご馳走してくれるのって。

最近もインターネットで「社会人になって、居酒屋でフライドポテトを頼む奴は…」みたいな話が話題になりました。居酒屋で先輩の前でフライドポテトを頼んで怒られただの何だのと言う話ですが、ふざけるんじゃない。私が仕事・プライベート関係なく通う店はアンチョビフライドポテトが名物だ。何なら2度頼むぞ。酒進むぞ。

後輩が何を頼もうが…そりゃいきなり「鮭茶漬け、6つ」って言ったら「お前なぁ!」でしょうが、おつまみの頼み方でとやかく言うような先輩とは、飲みに行っちゃいけません。お酒を飲みに行って楽しい先輩と行きましょう。

「俺はいろんなものを食べたいんだ!」

一時期、ある番組のおエライさんと「さし飲み」ばかりする時代が続きました。その人とは家が近いことが要因。

で、エライさんは「遠慮するな。好きなの食え」と。でもこっちも遠慮しますわな。そうすると怒られるんですよ。「俺はいろんなものをちょっとずつ食いてぇんだ!だから頼めって言ってんだろう!」。だから私が呼ばれていたのです。

おエライさんのナイトルートは、料理店→キャバクラ→〆のラーメンの定番コース。エライさんはいつも激辛味噌ラーメンを食べて帰りました。タクシーに乗せて「お疲れ様でした!」と見送った私は、そこで本当に安堵するのです。

でも、この間、私は職場のロッカーにグルメ情報誌を数冊忍ばせていました。こっちから店を提案しちゃえば「お、いいじゃないか」と。だから行きたい店、食べたいものは食べさせてもらっていたかなとも思うのですが、何せお開きは午前2時。明日も9時から生放送のスタンバイです。

悪いオトナの財布を蝕む、悪い学生

もっとも「お前ら食え」を偉そうに言う人もいました。

もう定年退職されたらしいから、書いちゃうけど、学生時代に関わりのあったある会社。
ぶっちゃけ、今考えたら直接の雇用契約なんかないから、多分問題になったと思うんだけど、そこのプロデューサー気取りのおっさんが偉そうに、僕らの仕事場の若いスタッフを呼びつけて、雑用をさせるんですよ。

その仕事は僕らの職場に全く関係のない、そのおっさんの業務。さも社会勉強だ!みたいなことを言って。悪いオトナです。

で、夜中にそのおっさんの車でファミレスに連れて行かれるんですが、ここで一緒に仕事をさせられていた友人に対し、車を降りた直後に私は耳打ちをしました。

「倒れるほど食うぞ、いいな」。友人は黙って頷くのです。逆襲開始だぜ。

怒りの表情と「テメー!」の口

取り立てて礼の言葉もなく「お前ら、夜食くらい食って帰れ」とおっさん。
メニューを渡されたので、私は考えもせず「えーと、チーズハンバーグセット、パンで。それとチキンジャンバラヤとシーフードサラダ。食後にチョコレートケーキ、コーヒーセットで」。友人も「海老フライと生姜焼プレート単品とカツカレー、あとミネストローネと、僕もシーフードサラダ。飲み物はアイスティー」。

ここでおっさんは「お前らなんだ!」の「お」の口になります。なりますが、若者2人は見て見ぬふり。ついで私には明日のブレックファーストをと思い「あと、テイクアウトでソーセージピザ2つ」。

おっさん今度は「テメー!」の「テ」の口になりかけます。育ちのいい私はおっさんに笑顔で「テイクアウト、3つにします?」と訊ねますが、相手はブスッとした口調で「いらない」と。
深夜のファミレス、4人がけのテーブルにのりきらないほどの料理が並びますが、若いので決して残しません。

1時間後、満面の笑顔になった我々は駐車場で、それはそれは丁寧に「ごちそうさまでした!またぜひお手伝いさせてください。ご飯も連れてってください!ありがとうございます!」と言って、おっさんの車に乗り込みます。車内は無言。
もちろんその後、その人が勝手に私を呼びつけることはなくなりました。どーだ、まいったか。

「若いんだから食え」は、若い人の仕事に敬意があるからこそ、言える言葉なんだよね。


河野虎太郎
こういうことを仕掛けてくる若者がいたら、店を出た直後に「よし、次は牛丼屋行くか」と言うおっさんになりたい。

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