2017年7月11日(火)

道化師に学ぶコミュニケーション術

石塚元章 ニュースマン!! / カルチャー

皆さんは「クラウン」という職業をご存知ですか?和訳でいうところの「道化師」です。

今回ご紹介するクラウンの大棟耕介さんは、鉄道会社に勤務する傍らクラウン講座に通い、1998年に退職。
本格的にパフォーマンスを開始し、2004年からは入院中のこどもたちを訪問する「ホスピタルクラウン」の活動を行っています。

クラウンとピエロはどう違う?

日本では道化師のことを「ピエロ」と呼ぶことが多いですが、大棟さんによれば、ピエロとクラウンは違うのだそうです。

「ピエロというのは固有名詞と思ってもらえるとわかりやすいです。クラウンの中のピエロ」

クラウンはその場を盛り上げたり、司会をしたり、時にはお客さんにちょっかいを出したり、ツッコミを入れたり、明るく楽しいおどけもの=道化師がクラウンです。

片やピエロは、ひたすらボケます。ツッコミなしのクラウンがピエロ。バカにされて笑いを取る、ちょっと可哀想な役です。だからピエロのメイクは目の下に涙が書かれているのです。

「世界共通で、赤い鼻をつけてサーカスにいるとか、遊園地でパフォーマンスをしているのは、クラウンというんですね」

クラウンは一人でもパフォーマンスが成り立ちますが、ピエロは、バカにするツッコミ役がいないと成立しないのです。

クラウンになった理由

最初はクラウンなるためではなく、自分の性格を変える自己啓発のために、クラウンの勉強を始めたという大棟さん。

「自分は楽しい人間じゃない。でも人を楽しませられるような人間ってすごく魅力だなと思っていて、やってるうちに、頑張っていたら、いつの間にか仕事になっちゃったって感じなんです」

当初の目的どおり、性格は変えられたのでしょうか?

「少しずつ変わりました。25年やってるので、急には変わらないってことを、まず学びました。最初は当然、真似、フリをしていますけど、真似とか人のフリをすることによって、徐々に徐々に、僕は内面から変わってくるんじゃないかなって思ってます」

全員集合はクラウンの古典芸

「いま名古屋に45人のクラウンがいるんですけど、プレジャーBというチームをつくって、クラウンだけのステージパフォーマンスをしてます」

そのパフォーマンスをイメージすると、ザ・ドリフターズの『8時だョ!全員集合』なんだとか。

「実は、あれはクラウンの古典芸なんです。我々は、そこにアクロバットを入れたり、マジックとかジャグリングを入れたり。だから終始、楽しいんです」

『全員集合』と言えば、上からタライが落ちてくるアレも?

「あれは、教科書に載るような、道化師の古典芸です」

サーカスで一番給料が高いのは

「僕は昔、サーカス大好きでしたから。テレビで週に1回サーカスをやってて、道化師を見てゲラゲラ笑ってましたからね」

大棟さんの話を聞いていた石塚元章解説委員が意外な一面を明かします。
道化師の役割について、大棟さんが補足します。

「サーカスのショーの間に、クラウンが入る。それによって、お客さんは笑うことができる。すると呼吸ができますよね。気持ちが楽になった中、仕切り直して、ハラハラ、ドキドキを見れる。だから、より主役が際立つ。サーカスのクラウンって、名脇役であり、同時にショーのコントローラーでもあるんです。なのでクラウン自体が、サーカスのオーナーをやっていたり、クラウンが一番給料が高かったりします」

ホスピタルクラウンの仕事

大棟さんが力を入れているホスピタルクラウンの活動は、非常に公益性が高いので、日本ホスピタルクラウン協会というNPOに分けています。
立ち上げて12年。北海道から沖縄まで、86病院の小児病棟で、月2回のパフォーマンスをしています。

病院でのパフォーマンスは、様々なパフォーマンスの一つという大棟さん。

「ものすごく劇的に彼らを楽しませるというよりも、ちょっとスパイスの様に。窓を開けたら、新鮮な空気が入ってきたみたいな。そんなパフォーマンスを継続しています」

こどもには引くコミュニケーションで

渡辺美香アナウンサーが尋ねます。
「長期入院って言うと、やっぱり白血病などの治療をしているこどもたちが多いと思うんですけど、そういう病棟に、どんな感じで入って行くんですか?」

それに対する大棟さんの答え。

「病室って個室なので、プライベート空間なんです。他人が入ることによって圧迫感がうまれると思うんですね。そこの部分を取り除きながら、毎回、こどもの表情を読みながら、丁寧に入っていくんですよ。大事なことは、彼らの招待。彼らが招き入れるように、仕向けて行く。クラウンと子ども、どっちが主役?と問われれば、我々にとっては、いつもこどもが主役です」

どうすれば、こどもが招き入れたくなるのでしょうか。

「今から僕は話をしませんよって言うと、『なんで?話してよ』ってなりますよね?『話を聞いてくれ』って言うと誰も聞かないんですけど、『教えない』って言うと、教えてくれってなりますよね」

これには石塚も渡辺も激しく同意しました。

「押すコミュニケーションじゃなくて、引くコミュニケーション。もっと言うと、こどもたちを下から持ち上げてあげるようなコミュニケーション」

大人にも笑顔を

「ものすごく喜んでしまうと、彼らは体力がないので、自分の気づかないうちに体力が落ちたり、疲れてしまう。なので、楽しませ過ぎないように気をつけています」

病院はこどもたちだけでなく、その両親、看護師さん、医師もいます。そういう大人に対してもパフォーマンスをするんだとか。

「お父さん、お母さんの笑顔ってこどもにとっては、とても大事です。また医療従事者の方が笑った方が、病院全体が暖かくなるし、その余韻とか余熱が長続きすると思うんですよね」

クラウンは笑いを届けるのではない

よく「病院に笑いを届ける」と表現されるそうですが、この表現には違和感がある、と大棟さん。

「病気のこどもたちは、笑いを持っていない。だから、僕の持っている笑いを渡すよ、って感覚になってしまいますよね。病気のこどもたちも、本当は笑顔を持っているんです。ただ、病気が蓋をしてるだけ。じゃあ、僕らが何をするか?僕らがその蓋を開けるのではありません」

こどもたち自身が、自分の力で蓋を開けるお手伝いをする。それは、本当に難しいことのようです。

情報収集して引き出しに入れる

「これは思いだけでは、絶対できません。楽しい人とクラウンは違います。僕たちは、裏付けされた技術を持っています。それを引き出しって言ってます」

こどもたちの持っている、様々な興味に対して、合わせられるだけの数の引き出しを持っている。今はこうだから、この引き出しを開けよう。と、その都度考えて接しているそうです。

その引き出しは、学んで身につけていったものなんでしょうか?

「日々の努力。情報収集です。野球なのかサッカーなのか、アニメはどういうのが好きなのか、そういうことを考えながら。また、思春期、反抗期に入ってくる子もいるので。そのこどもに対して、まともにぶつかっても、当然むこうを向かれるだけなので」

大棟さんに今後の抱負を伺いました。

「ホスピタルクラウンは本当に素晴らしい活動なので、皆さんに応援してもらいながら、クラウンの育成をして、日本だけじゃなくてアジア、それから世界中に広げていきたいなと思っています」

力強く語る大棟さんでした。
(尾関)

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