2017年5月23日(火)

石井裕也監督の新作に邦画の新たな可能性を見た。いや、感じた小堀勝啓

小堀勝啓の新栄トークジャンボリー / カルチャー

5/21の『小堀勝啓の新栄トークジャンボリー』には、5/27(土)公開の映画『夜空はいつでも最高密度の青色だ』の石井裕也監督が出演しました。
石井裕也監督と言えば、2013年『船を編む』という辞書を作る話で数々の賞を受賞しています。

今回の作品、出演は若手俳優ではピカイチ、池松壮亮。映画初主演の石橋静河。他に松田龍平、田中哲司。
どこにでもいる、実にダメな若い人たちの話。始まると引き込まれる不思議な映画という小堀です。

詩集を原作とした異色作

今回の監督作品『夜空はいつでも最高密度の青色だ』は、なんと詩集を原作とした異色作です。
どうやって映画作品として仕上げることになったのか、小堀勝啓が石井監督に伺いました。

「最初はプロデューサーの提案だったんです。最初はストーリーもないので戸惑いました。ただ、詩って受け手、読み手によって印象が変わるじゃないですか。それは自分の感性とか、経験が人それぞれ違うので。今回は僕が刺激を受けたところ、心を揺さぶられたところを出発点に自由に物語を作ることができました」

ストーリーの縛りから離れたことによって「自由だったし、楽しかった」と語ります。

しょぼい人たちに兆しが見える

詩集は観念の問題だから、主人公もストーリーもいません。詩を元にストーリーを構築していくのに、石橋静河という女優さん、それから若いけど百戦錬磨の池松壮亮。
小堀いわく「どうしようもなくしょぼく暮らす若者」が登場します。これについて石井監督が語ります。

「ストーリーがないということで、気分みたいなことから出発してよかったんですよ。気分を映画にしてよかったんで、その気分を描けるような人物設定とストーリーにしました」

小堀は「その気分なのか!」と驚き。
映画の底流にある漠然とした不安感と閉塞感。撮り方によっては退屈するか、嫌になるかどちらかになりそうなところ、小堀は「人の生活を覗き見してるような興味でずっと観てしまいました」と語ります。

「前半はそういう苦境というか、にっちもさっちも行かない状況があって、でも池松君演じる男と、石橋さん演じる女が東京の街中で出会って、付かず離れずしながら関係性が深まっていくっていう話で。少し希望…いや希望ではなく、兆し。可能性みたいなものがだんだん見えていくっていう流れですよね」

丁寧に答える石井監督です。

都会で暮らすということは

「田中哲司さんは年配の肉体労働者で、怒られて、ドジだし腰は痛いし、どうしようもないんだけど、それでもこの人も捨てたもんじゃないなと思わせる素敵な映画でした。街を歩いていると、そんな人が、周りにいっぱいいるんです。ふと人が愛おしくなりましたよ」と小堀。

「そう言っていただけると本当に嬉しいですね。東京で居酒屋に行くじゃないですか。隣の席の人とか、うるさいから早く帰ってほしいと思うんですよ。でもそういう人には、そういう人の人生がある。想像するっていうことが大事ですよね。想像しなくなっちゃうと、風景の中に本当にウンザリするような人の群れしか残らなくなってしまう。そうすると途端に都会が、人生が虚しくなってくる。でも、それが都会の日常なんですよね」

いまどうしても言わなきゃいけない

石井監督の映画は何本も観てきた小堀ですが、本作については少し印象が違ったようです。

小堀「功なり名を遂げて、悪魔に魂を売って金を掴んだかな、という人が昔を懐かしんで作る若い映画っていうのじゃなくて、今まさにいろんなことを実験的にやってるからこその『これが今の俺だ』っていう。そんな感じを受けたんですが、そんなのあったんじゃないですか?」

石井「ありますね。一介の表現者として、いまこの時代、こういう世の中に対して、どうしても言わなきゃいけないことをちゃんと言えたっていう手応えはあって。それは漫画や小説が原作だとか、公開規模の大きい大作映画だったら、たぶんできなくて。それを今回、やらせていただけた。まあちょっと、本気を出しましたよね」

石井監督、自信作ですよね?

もう一度見返したくなる映画、という小堀。

「含みがたくさんあると思います。忍び込ませたものというか。表面的なものだけでなくて、その深いところまで見ていただけると違う楽しみ方ができる。それこそ詩のように観ることができる映画だと思いますね」

今回の映像について、小堀が「観てていろんな感情が押し寄せてくる。映画を感じるってこういうことなんだなと思いました」とベタ褒め。

「それは本当にありがたいお言葉です。今回は、独特のものというか、新しいものになったという手応えはあるんですよ。それを今のこのタイミングで出来たっていうことは嬉しいですよね」

最後に小堀の「自信作ですよね?」の問いに「自信作です。今までのものと、全然違うものとして」と、力強く言い切った石井裕也監督でした。

小堀もオススメ『夜空はいつでも最高密度の青色だ』は5/27(土)公開です。
(尾関)

アーカイブス

同じカテゴリー

|
facebook twitter hatebu line