2018年1月13日(土)

大矢博子の直木賞予想・澤田瞳子『火定』が本命?

多田しげおの気分爽快!! / カルチャー

文芸評論家で書評家の大矢博子さんが書籍を紹介する『多田しげおの気分爽快!!』の名物コーナー「私のPON棚」。
1月11日は恒例、半年に一度の直木賞予想です。

1月16日に第158回の直木賞の選考会が行われます。候補の5作品はすでに発表されています。一体どの作品が直木賞を取るかを大矢さんが予想する企画です。

勝敗は6勝5敗2引き分け

予想の前に、今までの”勝敗”を振り返ります。

大矢「最近調子いいんです。一時期ちょっと負け越していました。外れた回の方が当たった回より多くなっていましたが、ここ3回は連勝で、ようやく勝ち越しに転じました」

多田しげお「今回14回目で過去13回の成績は6勝5敗2引き分け。この引き分けはW受賞で、予想した本が受賞した本のうちの一冊だったということで、正解と言っていいでしょう。となると、8勝5敗」

大矢「今回外してもまだ勝ち越しなので、ちょっと気が楽です」

8勝5敗はなかなかいい成績ではないでしょうか。

では、大矢さんが、次の候補作5作品の内容を簡単に紹介し、評価をし、最終的に予想をします。
・彩瀬まる『くちなし』
・伊吹有喜『彼方の友へ』
・門井慶喜『銀河鉄道の父』
・澤田瞳子『火定』
・藤崎彩織『ふたご』

彩瀬まる『くちなし』

初ノミネート。幻想的な世界を舞台にした小説ばかり入った短編集で、文章の巧みさと独特の世界観が光る作品です。

表題作の「くちなし」は自分の身体の一部を取り外せるという世界です。この物語では女性が腕を取り外して自分の恋人に渡します。
ちょっと不思議な世界を舞台にしたものですが、とてもリアリティを持って書いている。現実の問題や心情を幻想世界の中に込めていくという作品です。

「大変上手な方でいつかは直木賞を取られると思いますが、初ノミネートということで今回は顔見せかな」とは大矢さんの評。

伊吹有喜『彼方の友へ』

2回目のノミネート。今回の作品は昭和を舞台にした少女雑誌編集部の物語です。編集部に入ったヒロインを通して、雑誌作りに情熱を注ぐ人々を書いたもので、ストーリーには戦争の影響も絡んできます。
一応全て架空の雑誌、出版社の名前をつけていますが、モデルは実在した雑誌『少女の友』の編集部だそうです。

歴史小説としても読み応えがあるし、仕事小説としても非常に刺激的ですが、大矢さんは「”朝ドラ”っぽい感じがする」と感じたとのこと。

「そういうのが好きな方は非常に好きだと思いますが、ちょっと好みが分かれるかもしれません。可能性としてはあるかなと思います」

門井慶喜『銀河鉄道の父』

3回目のノミネート。
これは宮沢賢治の父親を主人公にした話ですが、「(賢治の父を描いた小説は)初めてだと思います」(大矢)とのこと。

宮沢賢治はかなり自由人で、実家もお金持ちで、学校の成績が悪くて家を飛び出したり、いろいろな仕事がしたいとお父さんからお金をもらったりと、結構厄介な息子でもありました。そんな息子と父親の関わりがメインになっています。

これも時代物、歴史物として興味深い話で、可能性が高いそう。これが”対抗馬”と言う大矢さん。では”本命”は?

澤田瞳子『火定』(かじょう)

2回目のノミネート。以前このコーナーでも紹介した歴史小説です。

奈良時代、天平年間に実際におきた天然痘の大流行をモチーフにして、庶民の治療にあたる医者の目を通して、命とは何か、絶望の中で生きるとはどういうことかを綴った作品です。

今回、大矢さんはこの作品を直木賞と予想します。
ただ「最終的には審査員の好みもありますし、これか門井さんかどちらかだと思います」と付け加えます。

藤崎彩織『ふたご』

話題性という点では一番です。SEKAI NO OWARIという人気バンドのメンバーの方です。

ピアノに打ち込んでいる14歳の少女が、ある先輩に抱いた恋心を中心にして、バンドの中で居場所を見つけていくという成長物語であり、恋愛小説でもあるという作品ですが、大矢さんは「ビックリしました、上手です」と評します。

どうしても「有名人が書いた」という前情報で先入観を持って読んでしまうそうですが、この作品は素直に「上手だな」と感じたと言う大矢さん。

ただ初ノミネート、しかもデビュー作、しかも自伝的なストーリー。では他の引き出しはどうなの?と考えられがちだとか。それゆえ大矢さんは「受賞はまだ厳しいかな」と予想。

予想は『火定』!

よって、大矢博子さんの今回の直木賞予想は澤田瞳子『火定』です。

多田「このところ大矢さんの調子が良くて、見事予想が的中していますが、今回はどうでしょうか」

皆さんも候補作を読んで、ぜひ予想をしてみましょう。
(みず)

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