2017年11月29日(水)

鹿児島のある会社員が、竹で紙を作りはじめた理由。

多田しげおの気分爽快!! / カルチャー

11月27日『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』では「竹紙」を取り上げました。

普通の紙は木の繊維で作るのに、わざわざ竹の繊維で紙を作る、これが「竹紙」です。
中越パルプ工業の営業企画部長、西村修さんにお話を伺いました。

木によって紙質が違う

紙は木の繊維であるパルプから作ります。木には針葉樹と広葉樹があります。実は、針葉樹と広葉樹では紙の質が違ってきます。まずは、この違いについて西村さんです。

「針葉樹の繊維は長いんです。その長い繊維を重ね合わせると、強い紙ができます。例えば米袋みたいなものとか包装用紙とか、紙バッグとか、そういったものに向いています。
広葉樹はそれに比べて繊維が短いんです。短い繊維できめ細かい紙ができて、印刷用紙、本とか写真集とかノートとか、そういった紙に使われます」

繊維が長いもの、繊維が短いもので、紙のタイプが違ってくるんです。

竹の繊維で作ったら?

「竹は針葉樹と広葉樹の中間な感じで、細くて長い繊維です。あえて言うならば、強くてしなやかな紙。割とパリッとした風合いです。そういった中間的な特徴があるんで、印刷用紙にもできるし、産業用紙にもできる、そんな紙です」

と言いながら苦笑する西村さん。
実はこの竹紙、両方の特徴を持ってるんですが、逆に言うと中途半端な紙でもあるんです…と語ります。

ということは、わざわざ竹の繊維で紙を作らなくてもいいというのが実情なんですね。

増える放置竹林

それでもなぜ竹で紙を作るかと言うと、放置され、増え過ぎた竹林の有効利用のためです。

「放置竹林という手入れがされていない竹林がいっぱいあるんです。放置竹林を放っておくと、根がどんどん横に伸びていって、隣の健全な森林の中にまで、どんどん侵入していってしまいます」

そうすると、元々あった環境が荒れてしまいます。しかし誰かが管理をするわけでもないので予防策もなく、ただ困っているのが現状です。

「高速道路を走っていると、山って緑でキレイだなあって思ってるけど、ちょっと黄緑色でモサモサしている部分があります。それが竹です。ちょっと気にして見ると気づくと思います。放置竹林ってものすごく多いんです」と西村さん。

今では「竹害」という言葉も生まれているほど。
全国の竹林面積は1985年頃、放置竹林が多くなってきてから、どんどん右肩上がりで上昇しています。しかし、竹材の国内生産量は20年前と比べて半分ほどに減っています。

そこで放置竹林の有効利用に乗り出したのが中越パルプ工業でした。しかも発端はたった一人の社員からでした。

それは鹿児島から始まった

「発端は鹿児島にある工場の担当者です。鹿児島は日本の竹林面積の1割ほどあると言われていて、竹林の多い地域です。そこで竹林整備をしていると、竹がいっぱい出てきてしまうんです」

腐るのに5年もかかる竹を放っておくわけにもいかず、地域からその担当者に、この竹を何とか紙にできないかという相談があったそうです。

ここで「竹は紙の原料にはならないのでできません」と断っていれば、それまででした。

しかし、この担当者は会社から頼まれたわけでもないのに、地域の問題として取り組みを始めてしまったんです。彼は部下も巻き添えにして試行錯誤を始めます。

その果てに、なんとか竹が使えるようになってきて、鹿児島の工場でも「それはやればいいんじゃないの」と、竹を安定的に集荷するようになっていきます。

その後、社長からも「良いことをしてるんだから、もっと竹を集めればいいじゃないか。できた竹紙を売ればいいんだし」と言われ、現在2万トンの竹を集めて紙にしています。

社会のモデルケースに

「世の中に、いろんな社会的な問題がたくさんあると思うんですが、多くの人は国や県に何とかしてくれよって言いますよね。でもそうじゃなくて、鹿児島の担当者は、自分の職域の中で、できることを探してやり始めたわけです」

この竹紙の取り組みは、個人と社会の関わり方の理想的な一つのモデルと言っても良いかもしれません。

「私なら何ができるんだろう?僕なら何ができるんだろう?と考えて動いてくれる人がいれば、世の中、たぶん良くなってきますよね」

このように力強く語る西村さんでした。
(尾関)

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