2017年10月18日(水)

『辞書の日』に改めて「右」と「左」の定義を調べてみた。

多田しげおの気分爽快!! / カルチャー

10/16の『多田しげおの気分爽快!!』の月曜コラムでは「辞書」がテーマでした。
というのも、この日はアメリカでは「辞書の日」でした。

有名な『ウェブスター辞典』を編集したノア・ウェブスター氏が1758年の10月16日に生まれたことから、「辞書の日」に制定されました。
当番組のご意見番であり、CBC特別解説委員の石塚元章が辞書について紹介します。

辞書のはじまり

辞書の歴史は古いですが、その役割は時代とともに変わってきていることを押さえたいです。

かつて辞書は、自分の覚書としてスタートしたものです。後々のために覚えておきたい言葉に、他人に聞いたり調べたことを書いたり、文献からの抜き書きも多かったようです。

あるいは、やんごとなき方々が他の人に作らせた場合もあります。代表的なものだと平安時代の『和名類聚抄』などは、日本の辞書のはしりと言われています。
専門家によると、室町時代までは自分のための辞書で、他の人が使いたくても使えないものでした。

これが江戸時代以降に変わります。印刷、出版などの技術が出てきたり、寺子屋も普及し知識欲が出てきたりして、人々が使える辞書が登場しました。

近代的な辞書のふたつの特徴

近代的、現代的な辞書になる特徴が二つあります。

ひとつは検索できること。
適当に並んでいたり、わかりにくい並びじゃ困ります。いろは順とか、五十音順とかがありました。明治時代にはいろは順か五十音順かで争ったこともあるようです。
いずれにしても、検索ができるというのは、非常に画期的なことでした。

もうひとつ特徴があります。
“日本の近代の辞書の嚆矢”と言われているのが、明治期の『言海』という辞書です。編纂したのは洋学者の大槻文彦さんです。

『言海』では、犬、猫、机など、言われなくても誰でも知っているものも、全部盛り込まれるようになりました。日本で使われている主な言葉をどんどん網羅しようというものです。

例えば犬には「イヌ科の哺乳類でよく人に慣れ、嗅覚と聴覚にすぐれ…」というような解説があります。

「右」と「左」の解説

「もの」はまだ解説しやすいですが、「右」とか「左」などは難しいです。これをどう辞書が説明しているのか、というのが面白いんです。

右に関して多田は「お箸を持つ手の方」では?と聞くと、石塚は「大方はそうです。左利きの方もいらっしゃるので『大部分の人が食事をするときにお箸を持つ方』とか多いです」とのこと。

しかし現在、最も辞書で多いの「右」の説明は、広辞苑だと「南を向いた時、西にあたる方」となります。
では、「西」はどうやって説明するのか。多いのは「太陽が沈む方」など。

困るのは「北」です。
広辞苑だと「四方の一つ。日の出る方に向かって左の方向」となります。

多田は「当たり前のことを説明するのは難しいですねー」と漏らします。

国語の統一は独立の基礎

『言海』を編集した大槻さんは、前述したウェブスターの辞書を参考したそうです。

ウェブスター氏と大槻さんには辞書の作り手として共通する思想がありました。この国はこれでいいのか、まとまるのかというナショナリズムです。

大槻さんは「国語を統一するのは独立の基礎である」ということを言っています。

ウェブスター氏も、アメリカは国になってきたけど、どこかバラバラだ。アメリカをちゃんとした国にするためには、英語はこういうものだ、言葉はこういうものだ、と皆が同時に分かるものが必要だ、と考えました。

大槻さんが編纂する時も、明治維新で日本政府ができて、日本はどう進むのかという中で、言葉って大事だよね、という発想がとても強かったようです。

伝統をとるか、意思の疎通をとるか

ここで多田が「明治の初めなんて、薩摩の人と京都の人が話してもなかなか通じなかったと言われてます。多言語の国ということですよね」と言います。

これを受けて石塚は「方言は味があっていいよね、という考え方があって、それももちろんですが、当時は別に悪いことをしようとして方言をなくしていったわけじゃなくて、それって大事なことだよね、と一生懸命に統一の言葉を作った」と、語ります。

その逆の発想として石塚が紹介したのが、現在独立で揺れているスペインのカタルーニャ地方の事例。
そこにはスペイン語とは違う「カタルーニャ語」という独特の言語があります。

「伝統的なカタルーニャ語の辞書を作ろう」という人たちと、対して「文法を整理して近代的なカタルーニャ語を作るんだ」という議論もあったようです。
意見は異なりますが、どちらにも根底にはカタルーニャへの気持ちがあるのです。

辞書を作る人たちの情熱

石塚「辞書作りに頑張る方たちはいろいろな思い入れがあります。
30年ほど前、三省堂の見坊豪紀さんは、毎晩夜8時から12時まで、新聞を8紙読む。月刊誌、新刊本を読む。すると毎日、新しい言葉が最低3つは見つかる、と言っていました。
最近の辞書編纂の方は、毎日10以上見つかる、と言います」

多田「新語も誕生すれば、時の流れによって、言葉の意味も変わってくる。辞書作りは最低10年と言われています。作り始めてから出来上がるまでにもいっぱい新語が誕生して、さらにその新語が定着するかどうか見通しが難しい」

多田は「辞書を作るのは大変。編集者たちの情熱を感じます」と、感嘆の言葉で締めました。
(みず)

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