2017年10月2日(月)

北米先住民と一緒に生活した、真の「狩猟女子」

多田しげおの気分爽快!! / カルチャー

9/29『多田しげおの気分爽快!!』の特集のテーマは「狩猟から命を学ぶ」でした。
最近「狩猟女子」という言葉をよく聞きますし、これに関する書籍も出版されています。でも、ホントに狩猟に興味がある人がいるの?と思っている方も多いのでは?

今回は狩猟を文化として研究されている、岐阜大学地域科学部 狩猟採集文化研究所の山口未花子さんにお話を伺います。聞き手は多田しげお、そしてこの日が最後の出演となる大橋麻美子です。

カスカ族の生活

山口未花子先生は京都出身。
北海道大学在学中から、今でも狩猟生活を送っている「カスカ族」という先住民族の居住地に通われ、彼らと生活をともにすることで、狩猟の現地調査、狩猟を通じて人間と動物との関係を、研究されています。

山口先生は40歳、とても華奢な女性なのに、すごいバイタリティーの持ち主です。

―まずカスカ族が暮らしている場所はどの辺りですか?

カナダ、というよりアラスカの横です。寒い時はマイナス59度になったことがありました。
カスカ族は全体で1,200人くらいと言われています。言語は、昔はカスカ語でしたが、60歳代より下は英語しか話せなくなっています。私にすればありがたかったです。

―容姿はアジア人っぽいんですか?

はい、モンゴロイドです。こどもの頃はお尻に蒙古斑ができます。見たことがあるような顔の方もいますが、日本人よりサイズが大きめ。身体はしっかりしています。

―カスカ族の生活はどういう風ですか。

昔はテントを張って点々と移動しながら生活していましたが、現在は、基本的に村で住んでいて、狩猟のときにキャンプ道具を持って森の中に行くというスタイルです。狩猟はパートナーと行ったり、一人で行ったり、家族で行ったりもします。

―どういう家で生活されていましたか?

最初は紹介していただいた家でしたが、一人暮らしで、その当時で82歳のおばあさんのところにお世話になりました。
そこだと面倒を見てもらうだけでなく、私が助けることもできる。狩猟にいく時は別の人で、いつもお世話になっているおじいさんと一緒に狩猟に行きました。

カスカ族の狩猟法

―狩猟は泊りがけなんですか?

もちろん。集落の周りで銃を使って狩猟するのは良くないし、そもそも獲物も少ないので。
船で8時間くらい川を遡ったところに、おじいさんのハンティングエリアがあります。狩猟小屋もあって、そこを拠点に、はじめは4泊5日くらいでした。

―狙う対象は?

わな猟は何でも獲ります。が、一番大事なのはヘラジカ、シカ科の最大のものです。肩の高さが私の頭の上にくるくらい背が高く、体重は牛と同じか、少し軽いくらいです。

―それを銃で撃つんですか?

ヘラジカはわな猟では無理です。私は免許がないので、銃で撃つことはしませんが、それ以外はおじいさんの横で全部見せてもらいました。

解体の後の儀礼が大事

―仕留めたあとは解体するんですよね?

だいたい川原に出てきたヘラジカを撃つことが多く、その場で洗ったりできるので、とてもきれいに解体できます。
まず頭を切り落として、皮を剥いで内臓を出して、持てるくらいの大きな塊に分けて、船に積んで持って帰ります。解体はとても丁寧にします。

そして大事なことは、終わった後に必ず儀礼をします。鹿の気管を切り取って木の枝にぶら下げるという行為です。

ヘラジカは死んでいるように見えますが、カスカ族の人にとってはまだ死んでおらず、魂が気管に残っています。
気管を木にぶら下げると風が通って、また命を吹き返すことができ、肉、血、毛皮を身に着けて、元のヘラジカに戻ると考えられているのです。

狩猟は、殺しているというよりも、再生するためのひとつの工程という考え方です。

私たちはかつて狩猟採集民だった!

―動物が好きなのに、なぜ狩猟という動物を殺すことの研究をしているのですか?

カスカ族の人たちの狩猟を見ていると、儀礼もあるので、殺しているという感覚があまりないというのがひとつあります。

もうひとつ、面白いと思ったことがあります。彼らは、動物より人間が強かったり、賢いから狩猟できると考えていないんです。

動物の方が人間より少し賢くて、いろいろわかっている。この人間がお腹が減っているなとか、毛皮を欲しがっているなということを理解していて、助けてくれるために来て、自分の肉とか毛皮を贈り物としてくれている、と考えています。

その考え方がすごく新鮮で、欧米の方のスポーツハンティングとは全然違う考え方だと思いました。

たぶん、本来人間が動物に抱く感情はそっちの尊敬、感謝の感覚ではないかと思います。殺すということを通して、動物とのつながりを作るというところがあると思います。

―人と動物との関わりの原点みたいなものですね。

狩猟採集民はだんだんいなくなっているので、研究してもあまり意味がないのでは、と言われますが、実は人間の歴史の99.8%以上は狩猟採集民として暮らしてきました。
ということは私たちの心、身体は狩猟採集民としてできているとも言えます。

だから、狩猟採集民人たちが動物とどう関わっているかを見るのは、私たちの原点を明らかにする意味があると思っています。

学生に学んで欲しいこと

―山口先生は、岐阜大学に狩猟採集文化研究所を作り、実習を通して学生たちにいろいろなことを教えています。彼らに何を学んで欲しいですか?

いま断片的な情報があふれていますが、それがどういうところからきて、どういう風になっていくのか、つながりみたいなものを理解して欲しいです。

―先生がカスカ族で学んできた動物に対する畏敬の念とか、今の人たちの原点は動物とどういう関わりで生きてきたのかを、ちょっとでもわかって欲しいですね。
(みず)

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