2017年9月18日(月)

敬老の日に読もう。おじいちゃん・おばあちゃんが大活躍の小説3冊

多田しげおの気分爽快!! / カルチャー

9/18は敬老の日。そこで「大矢博子の敬老の日はコレを読め!」と題し、文芸評論家・書評家の大矢博子さんがおすすめの本を紹介しました。

読むのはお年寄りで限定ではなく、みなさんに読んで欲しい本だとか。
共通しているのは元気なお年寄りが登場する楽しい小説ということ。
3作品はいずれもその面白さから、映画化、テレビドラマ化されていますので、敬老の日が過ぎてもおすすめです。

天藤真『大誘拐』

1987年の作品ですが、ユーモアミステリーの最高峰と言われています。

刑務所から出てきた前科者3人が、お金欲しさに誘拐事件を計画します。対象は紀州の大富豪のおばあちゃんで、4万haの山林を持つ柳川家当主・とし子82歳。

余裕で成功すると思われたところ、とし子おばあちゃんはとんでもない豪傑でした。女手でひとつで7人の子を育てながら、山林王として様々な事業をきりもりする辣腕経営者だったのです。

おばあちゃんは犯人に捕えられ、身代金5,000万を要求されますが、それを聞いたおばあちゃん、「わたいはそんなに安うはないわ」と言い放ちます。
「100億でどうだ!」
もう誘拐はおばあちゃん主導になってしまいます。

連絡はテレビとラジオの生放送でやると、おばあちゃん。受け渡しも生中継、日本中が注目する中で行われるという、とんでもない誘拐コメディです。
年寄りだからと言ってバカにしていた誘拐犯たちが、彼女を尊敬していく過程が読みどころです。

とにかく痛快で爽快。日本推理作家協会賞受賞。創元推理文庫より出版されています。

映画化は1991年で『大誘拐 RAINBOW KIDS』(東宝)のタイトルで公開されました。
『殺人狂時代』『日本のいちばん長い日』で知られる名匠・岡本喜八さんが脚本と監督を手掛け、柳川とし子役をベテランの北林谷栄さんが演じ、誘拐犯の風間トオルをはじめ、緒形拳、樹木希林、橋本功などの豪華キャストが名演技を見せてくれます。

有川浩『三匹のおっさん』

既読の多田は「痛快!ただ、主人公は同年代なので、ちょっと物悲しいところがありますね」と感想を。
2014年から北大路欣也、泉谷しげる、志賀廣太郎のトリオを主人公に、テレビ東京系でテレビドラマ化もされました。

タイトルは時代劇『三匹が斬る!』のパロディで、主人公は60歳の男性3人。
ひとりは会社員のかたわら剣道の道場をやっていたキヨん。
居酒屋をやっていて柔道の有段者のシゲ。
町工場を経営のノリは、機械いじりが天才的で3人の中では参謀役。彼らが町内の悪を斬るという話です。

キヨが60歳になった時、息子夫婦から「赤いちゃんちゃんこ」を贈られます。おじいちゃん扱いされたキヨは、それが面白くありません。
「還暦くらいでジジィの箱に蹴り込まれてたまるか」と、幼なじみの3人で町内の還暦自警団を結成し、町内の痴漢事件や詐欺事件などを、抜群のチームワークであざやかに解決します。

3人それぞれに祖父母と孫、親と子、近所づきあいが濃密に描かれていて、家族や近所の繋がりの大切さを考えさせてくれます(新潮文庫より出版)。

清水義範『やっとかめ探偵団危うし』

司馬遼太郎の文体を用いた『蕎麦ときしめん』など、日本を代表するパスティーシュ作家であり、また名古屋を前面に出した小説でも知られる作家者・清水義範。
その名古屋ものの代表作『やっとかめ探偵団』シリーズの第2弾です(光文社文庫より出版)。

タイトルにある「やっとかめ」とは「久しぶり」という意味の名古屋弁です。「やっとかめ探偵団」という老人グループが事件を解決するシリーズです。
名古屋市で小さな駄菓子屋をやっている波川まつ尾というおばあちゃんが主人公。74歳、近所のおばあちゃんたちのリーダー格です。店に出入りする人からも慕われていています。

ある日、老人会のメンバーで健康ランドに出かけます。
すると館内にひとりでぼんやりしている老人客が何人かいる。この人たちは何をしているのだろうと疑問に思うまつ尾。
一方、老人の利用客の死体が発見されることから物語が始まります。

どうして健康ランドにずっといる老人が何人もいるのかなど、シビアな社会問題も登場します。
が、基本的にはものすごいユーモアミステリーで、全編が名古屋弁。
名古屋の人が読むと「そうそう」と頷いてしまう日常描写もたくさん出てきます。

ちなみにこのシリーズは1996年から2000年にかけて、CBCテレビがドラマ化しています(下の画像は撮影風景)。

波川まつ尾をネイティブな名古屋弁女優の山田昌(画像中央)が演じ、人気シリーズとなりました。

おじいちゃん小説とおばあちゃん小説

年配の方が登場する小説は、おじいちゃん小説とおばあちゃん小説ではっきりタイプが分かれます。

おじいちゃん小説は、生涯現役、若いものには負けない、自分が現役だった時のように今もできるぞ、がテーマです。
一方おばあちゃん小説は、年を重ねた今が楽しく、現役時代の輝きをもう一度、とはなりません。

おばあちゃんが活躍する『やっとかめ探偵団』シリーズは年齢が70代、80代で、老いを正面から笑い飛ばします。
それも含めて今がいちばん楽しい。それに対して「若い時と変わらんぞ」と思ってしまうのが男性。

「年齢に関係なく3作読んで、こういうおじいちゃん、おばあちゃんになりたいなと考えてもらえれば嬉しいです」と、まとめる大矢さんでした。
(みず)

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